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3月~4月にかけて、茅葺屋根の葺き替え作業に密着させていただいた私たち。微力ながら、下回り作業も手伝わせてもらい、作業の大変さを痛感しただけではなく、「職人さんってすごい!」と感動し、茅葺屋根職人の魅力も感じてきました。
少しでもこの感動をシェアすべく、スペースの関係で誌面では紹介できなかった作業風景などをご紹介します!
降雪シーズンが終わり、いよいよ作業開始…!というタイミングで、またしても降雪。
初日は雪を払いながらの作業でした。
雪はまだしも、雨が降ると作業には危険が伴うため、中断せざるを得ません。
秋田から助っ人で来てくれた職人さんたちは滞在日数が限られていたため、雨での中断は本当に痛手でした。
我々含め、地上で作業する人員の最大のミッションは「指示通りの茅束を準備する」こと。
屋根表にいる職人さんから「〇尺〇寸を〇束お願いします」という声に素早く反応し、できるだけ待たせずに茅束をお届けします。
通常、長さを測っておいた茅や木の棒などを添えながら切ることで、尺寸の長さを調整しますが、今回の現場では、家主の小山さんが作った特製装置が登場!
尺寸が記載され、かつ、茅の尖端を押し当てることができる(=茅束を瞬時に揃えることができる)木製の装置で、押切に見事に合体!
この装置を使うことで、茅束を作る作業がかなりスムーズになりました。
茅の根元部分はけっこうな硬さがあり、それなりに力が必要です。
差し茅は「軒」と「角」部分の作業から始めます。特に「角」は屋根の雰囲気を左右する重要な部分であるため、棟梁が担当。
今回の棟梁・才治さんは「今回が最後の仕事=引退」と宣言しており、これまで以上に丁寧に作業をされているご様子。
古い茅を除去し、新しい茅を差したら、竹串で仮止め。その後「梁取」で固定します。
「ガギ」で叩くほか、才治さんは片手で持てる道具も使って角の角度を細かく調整していました。
そうしてできあがった美しい「角」に合わせて、「軒」全体の高さも調整していきます。
軒の厚みが整わないと、次の段以降の茅もズレていってしまうので、軒の差し茅にはしっかり時間をかけます。
ある程度できてきた頃に、棟梁さんがチェックをし、「もっと厚く」「ここは厚すぎる」など、指示を出していきます。
なお、足場の床部分と軒との間の高さは30㎝程しかないため、軒の底辺部分をまっすぐに整えていく作業は素人目から見てもかなり大変そう!
足場の床に寝転ぶような状態になって確認したり、低い体勢で「ガギ」を叩きこんだり、細かな微調整を繰り返していきます。
長木を「梁取」により屋根に直接固定し、足場にしていく…という工程は誌面でもご紹介しました。
この工程、実は「破風」部分にまで到達したんです。
破風にまで到達すると、大変なのが茅束の運搬。
その都度屋根を上り下りするわけにはいかず、滑車の位置を替え、破風まで引き上げられるようにするも、滑車を引くのもまた重労働(笑)
大変な作業ではありますが、屋根の上は見晴らしがよく、日の光を浴び、暖かい!
作業をすれば春先だというのに暑いレベル。
職人さんたちが足場にちょこんと腰掛け、日光浴をしながら休憩している姿は、なんとも絵になる光景でした(画像はないので、ご想像ください)。
除去した古い茅の中には、左の写真のように燻されて真っ黒になったものも!
こうした除去された茅は「畑の肥し」として第2の人生を送ります。
今回も家のすぐ近くの畑にどんどん運搬し、敷き詰めていきます(最終的には土に混ぜ込む)。
それにしても、軽トラックを駆使しても重労働だというのに、かつてはこれをリヤカーなどで行っていたのか?と想像すると、先人の苦労には頭が上がりません。
茅葺屋根の暮らしには、こうした「資源の循環」が溢れています。
「梁取」をするために屋根裏に入った時に見つけた謎の物体。
木製の十字架のようにも見えますが、これは箸を十字に結んだものなのだとか。
お正月に使った箸を十字に結び、屋根裏に投げるという風習があったらしく、先代(=現在の家主の父)まではやっていたそう。
隠れキリシタンとの関係があるかも……という可能性も浮上しましたが、実際には不明で、「お正月の風習」の域を出ませんでした。
今回の作業を助っ人として手伝っていた秋田の若い職人さん(30代)は、素手で作業を行っており、手は真っ黒!
あえて手袋はつけずに作業をすることで、手をどんどん強くしていってるのだとか。
実際、繊細な作業も多いので、手が強くなり、素手での作業が苦でなくなれば、確かにそれに越したことはないのかも…と同年代ながらに感心してしまいました(笑)
お世話になった職人さんたち(手前中央が小山家ご夫婦)の集合写真
密着取材にご協力いただいたみなさま
ありがとうございました!