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(idea2022年月1号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
当センタースタッフがピックアップした「難解・難読地名」をテスト形式で100人に出題し、当該地域における「読めない地名ランキング」を勝手に作ってしまう人気企画「難解・難読地名挑戦!」。第7弾となる今回の対象地域は「東山」。今回も「最も読めない地名」に見事選ばれた場所に実際に行ってきました!
※記載内容はあくまでも当センター独自調査の結果です。
難解・難読地名
ランキング
※ゼンリン住宅地図に掲載されている地名の読み仮名を正解とします(「ザワ/サワ」「ダ/タ」なども区別しています)。
地名(よみがな) |
正解者数 (131人中) |
|
1位 | 三室平(みつむろひら) | 9名 |
2位 | 大面(だいめん) | 16人 |
3位 | 紙生里(かみあがり) | 19人 |
4位 | 瓜入道平(うにゅうどうひら) | 24人 |
5位 | 一市町(ひといちまち) | 27人 |
6位 | 小豆用(あずきよう) | 64人 |
7位 | 袴腰(はかまごし) | 68人 |
8位 | 田ノ萱(たのかや) | 71人 |
9位 | 束稲(たばしね) | 91人 |
比良根(ひらね) |
91人 |
今回の調査には市内外の131人の方にご協力をいただきました(調査は令和3年6月~7月にかけて、東山町以外の市内各種団体・企業の方、講座や会議等でお会いした方などを対象に実施)。その調査結果をランキングにまとめたのが左の表です。
今回1位に輝いたのは「三室平」。「みむろだいら」や「みむろひら」という解答が多く、「三室(みつむろ)」が読めないのに加え、「平(ひら)」を「だいら」と読んでしまう傾向が。実は、三室平住民は自分たちの地名を「みつむろだいら」と呼称しているという驚きの事実があり、東山に縁が深い人ほど不正解になるという切ない結果に…!4位の卯入道平も同様で、ゼンリン住宅地図記載の読み方と地元呼称が一致しない地名が少なからずあるということが今回の調査ではっきりしました。
最も読めないのではないかと予想していた紙生里は、東山和紙の知名度の影響からか3位と健闘。そのほか、正解者が5割を超えた地名が4つもあるなど、過去の調査と比較すると全体的に正解者が多かったのが印象的でした。
※上記表の画像版です。クリックで拡大します。
「三室平」の由来
「三室」という地名の由来は諸説あり、下記で詳しく見ていくとして、ここでは「平」について触れてみます。
東山町内には「三室平」以外にも「卯入道平」「野平」など「平」がつく地名が。いずれもゼンリン住宅地図では「だいら」ではなく「ひら」と読みます(住民は「だいら」と呼称)。
「平」という字は「たいらな、平坦な」という意味ですが、地名では「崖・傾斜地」という意味になることが多いのだとか(アイヌ語の「ピラ(崖)」からの音韻変化という説)。当地域においてはその説のほかに「焼き畑農業で開墾し、作物を作った山の裾野・ふもと」を指すという話も。いずれにせよ字のイメージとは逆の傾斜地をさすようです。
実際、三室集落においては、砂鉄川沿いの平坦な部分が「三室」、山の裾野側が「三室平」という小字になっており、卯入道も同様です。つまり「三室平」は「三室の中の傾斜地」を意味しているのです。
最も読めない地名第1位の
みつむろひら
三室平に行ってみた
東山町松川の小字名である「三室平」は、隣接する「三室」とともに行政区は松川4区で、「三室自治会」に属します。
※小字のおおよその範囲としては、下図の赤で囲んだ部分が三室平、黄色で囲んだ部分が三室ですが、地元の方は2つ区別なくどちらも「三室」と呼ぶようです。
三室自治会には67世帯約200人が暮らし、うち55世帯約170人が三室平に住居を構えています。
▲赤で囲んだ部分が三室平、黄色で囲んだ部分が三室
県道282号線を隔てて山側が三室平、砂鉄川側が三室ですが、三室の大部分は水田。砂鉄川の中流域の砂壌土を活かした里芋栽培も盛んです。
三室平の背後には三室山などの山が連なり、山中には東山町松川の伝統行事「磐井清水若水送り」のルートにもなる「奈良坂峠」が(『idea』2021年12月号「地域紹介(松川7区自治会)」参照)。
なお、標高308mの三室山山頂までは車で行くことができ(倒木等で通行できない場合あり)、松川地域はもちろん、室根山を望むことができます。
三室平の人に聞いてみた
由来など、何か言い伝えられていることがないか、聞いてみました!
佐藤育郎さん(74歳)
江戸初期から続く三室平の農家に生まれる。行政職員を退職後、東部土地改良区の理事長を務める傍ら、郷土の歴史文化や食文化の継承にも携わる。「三室地域おこし実行委員会」の一人で、記念誌『三室の輝き』の発行にも携わった。
【佐藤さん】 京都や奈良の「三室(みむろ)」が知られているため、「みむろ」と読まれることも多い。当方ではいつから「みつむろ」と呼ばれているのかは定かではないが、知っている限りでは由来に通じる2つの説がある。
説1:京都になぞらえた!?
平安時代―奥州藤原氏の全盛期、平泉周辺には京都になぞらえた地名(祇園(平泉)、大原(大東)、東山など)が複数名づけられました。平泉を京都としたときに、奈良にあたるのが松川地域。松川から奈良坂峠を通って平泉に向かうとすると、現在の三室集落のあたりが京都府宇治市にある紅葉の名勝地「三室(みむろ)」の位置にあたります。このことから、秀衡公の時代から「三室」と呼ばれるようになったのではないか……という説が。なお、「貴布祢(きふね)神社」という京都との関連を匂わせる神社(水神。総本社が京都の貴船神社)が奈良坂筋にあり、歴史ロマンを感じさせます……!
説2:3つの「室」があった!?
狐(キツネ)の棲家を「室(むろ)」と呼ぶことがあるそうですが、現在の三室山の中腹には横並びで200~300mおきに3か所そうした石穴があり、「3つの室」が「三室(みつむろ)」になったのではないか……という推測説。3か所の石穴は現存しており、その場所は「立石」「峯の雷神様」「小山」とされていますが、それぞれがどこにあるのか見つけ出すことは難しいとのこと。 ※当センタースタッフも発見には至らず……。
<参考文献> ※順不同
東山町史編纂委員会(1978)『東山町史』
岩手県文化財愛護協会(1991)『岩手県市町村地域史シリーズ43 東山町の歴史』
阿部和夫(1982)『東磐井の地名と風土』
三室地域おこし実行委員会(2014)『三室地域おこし記念誌 三室の輝き』
加藤昌彦(2016)「「平」らな崖・傾斜地名について」『人権を考える』19巻,pp.68-94.
↓実際の誌面ではこのように掲載されております