(idea 2018年4月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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対談者 街なか産直 新鮮館おおまち 梁川 真一 さん
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺 浩樹
「街なか産直 新鮮館おおまち(以下「新鮮館」)」を運営する中で出てきた「商品が増えて、店頭に置くだけでは売りきれない」という課題をきっかけに、地域農業や個々の農家さんの活動を支えようと考え出した「転食活動」という取り組みを中心に、店長の梁川真一さんにお話を伺いました。
【小野寺】梁川さんは生産者ではないけど、生産者との間に入って動いているところが面白いよね。今までに農業の経験はありますか?
街なか産直 新鮮館おおまち 梁川 真一 さん
【梁川】いいえ、前は製造業の仕事をしていました。
【小野寺】生産の現場にはいたけど、農業とは全然関係ない仕事だったんですね。
【梁川】はい。でも、モノを作る人、中間で日程を決める人、加工する人、モノをさばく人、物流する人がいるという部分では農業も製造も同じなのかなって思います。
【小野寺】僕は農業というと、よく頬に泥をつけて麦わら帽子をかぶって、両手に野菜を持ちながら「できたぞ!」って言ってる絵が思い浮かぶけど…。
【梁川】それ、あんまり恰好良くないですよね。最近は若い農家さんも増えてきているし、もう少し「かっこよさ」とか「可愛さ」を考えていってもいいんじゃないかな。
【小野寺】最近はホームセンターで売っているヤッケ(作業服)がおしゃれになってきているしね(笑)。それに、今まで農家の活動って情報発信することがなかったけど、SNSの広まりによって、個人農家さんの情報発信力は上がってきているように思えて、時代の流れもあるかもしれないけど、そういう変化は見られるようになってきたかな。
【小野寺】生産現場のサポートといえば、農協さんや土地改良区とかが思いつくけど、最近は新鮮館自体が攻めの姿勢を見せたりしながら、生産者と生産者をつなげるような動きをしてみたり、孤立無援を防ぐような仕事の仕方をしているのかなって感じています。
【梁川】生産者の交流の場をつくったりもしているんですよ。色々な情報を共有することは大事だし、そこでお互いが気づかなかったところに気づくチャンスにもなるし、農家さんだけじゃなく業者さんも入ることで違うアイディアが生まれるかもしれないし。
【小野寺】農協の青年部とかに入ってなければ交流の場とかはないわけで、そういう部分を新鮮館としてとりもっていく、結構重要な仕事じゃないかな。最近、「転食活動」というものを始めたようだけどこれはどういった活動?
【梁川】「転食活動」は、溢れて「転」がっている「食」材を工夫で売れる商品に「転」換するという意味を込め、僕が言葉をもじって作った創作用語なんです。
僕は新鮮館に来て4年くらい経ちますが、その間に新鮮館に野菜を出す人も、商品のバリエーションも増えてきているので、商品のさばき先を見つけていかないと商品が溢れてしまうんですよね。そこで、飲食店さんに野菜を買ってもらおうと、各店から「キズ物や形が悪いものでも良い」「見た目がきれいなものが良い」といった条件やリクエストを受け、野菜の買い取り先を探す活動を「転食活動」と名付けてみたんです。
【小野寺】店内に置ききれない商品の買い取り先をコーディネートしてあげている。要はシェフと生産者の橋渡し活動なんだよね。
【梁川】はい。農家さんが直接お店に出向き、営業して歩くのは結構大変そうで。
【小野寺】そうだよね。
【梁川】僕らは一般のお客さんとも付き合うし、飲食店でランチしながらお話を聞いたりする機会もあるので、そういう農家さんができない部分を僕らがやり、農家さんは野菜をつくることに専念してもらおうと。
そういう間に入るお仕事をして、農家さんに「野菜を持ってきてくれれば何とかするから」って言えるようになりたいですね。「○日までに商品が必要だから、○日までに出荷して」とか「この野菜、急ぎで必要なんだけど誰か準備できる?」とか、そういう情報を農家さんに流して、商品を切らさず供給できる仕組みをつくりたいなと。
【小野寺】今までそういう橋渡しをする人がいなかったわけではないけれども、新鮮館がそれを始めようとしたきっかけは、お店を運営している中で出てきた課題からだよね。商品が増え溢れる中、どうしたら生産者の方がハッピーになるかを考えた時に、街なかにある産直だから、そこを利用してくれている飲食店さんとうまく卸の契約をしていくとか、新鮮館を通してやってもらうといったアイディアに繋がったと!
【小野寺】最近ヒットした野菜はある?
【梁川】カットしたカボチャと「ひきな」ですね。飲食店さんは、商品単価が上がったとしても、手を加えていない野菜よりカットされた野菜の方を求めるんですよ。そういうお客さんからのリクエストを農家さんに流します。そして一人がやり始めると、他の皆も真似し始めるんですよ。煮物っぽい切り方をする人もいれば、天ぷらっぽくカットする人もいますし。良い意味で、皆工夫するようになってきています。
【小野寺】同じカボチャでも、「煮物用」「天ぷら用」にカットした状態で売るという、納品の仕方に工夫が加わってきているんだね。そんな風に、これからの転食活動の目指すところは生産現場の「表現力」を磨いていくことと、生産者とシェフを「つなぐ」ところ?
【梁川】そうですね。そこで大事なのは生産者さんが「どうやって売りたいか」や「どうしたいのか」だと思うので、そのためにはやはり一人ひとり話を聞いたり、生産者とシェフがお互いに求められているものをフィードバックしたり、その先でどんな形でやるのかはまだこれからですが。
【小野寺】新鮮館では生産者の新年会を開いているけど、あれすごく大事な場だと思う。
【梁川】これだけの人がよく集まるなと思うくらい来ますからね。
【小野寺】楽しみにしているようだもんね。ステージ発表のために衣装とか準備してきてるし。野菜をつくるだけじゃなく、余興の場も必要だよね。
【梁川】そうなんですよね。コミュニケーションの場でもありますから。
【小野寺】農業は、個人事業主だからけっこう孤独なんだよね。うちも田んぼやってるけど、一人トラクターに乗って黙々と同じ動きをして「やっと50mまできた!」なんて考えたり。
【梁川】そうそう!商品を出してもらうには農家さんのモチベーションをあげるしかないから、孤独を解消するためにも、畑を回って歩く訪問活動も大事だと思うんです。時間がかかるし大変だけど、でも農家さんからは信頼されなきゃならないですし。
【小野寺】高齢で孤独を感じている農家さんは特に、「頑張ってる?」ってちょっと様子を見に行く「寄り添い型」の支援の仕方になっていくんじゃないかな。
市内各地を回る「農家さん訪問」は地道で時間もかかりますが、
現場を見ながら顔を合わせて話せる大切な時間です。