(idea 2016年6月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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【小野寺】まずは、くまの子クラブを始めた背景などをお聞かせください。
【熊谷】民設で学童を始めて8年目になります。一関では大きな学校にしか学童がなく、すべて公設公営で、民設民営の学童がなかったんですよね。それが、平成22年からは40人の少人数体制になるということで、市では新しい学童を置くために場所や人を探していたようです。
【小野寺】南小にはひまわりクラブがありますよね。
【熊谷】ええ。当時、南小でも探していたらしいんです。私はその時一関幼稚園で働いてたんですが、60歳を過ぎ退職を考えていました。すると、ひまわりクラブの枠に入れない子のお母さんから「退職するなら何とか面倒を見てくれないでしょうか」と相談を受け、引き受けることにしたんです。
【小野寺】何人くらいの子を引き受けたんですか?
【熊谷】3人です。それくらいなら私の家でもお世話できるかな…と思いまして。でも、事故があったりするとマズイと思い、一応、市役所に行き了解をもらいました。そしたらその後、9~10月頃に市から連絡が来て、「どこか空いてる貸家を探して、そこで30人見てくれませんか」って言われて、「30人なんて私一人じゃ見れないよ」と言ったら「いや、スタッフを集めて。来年の4月1日に開所します」って。
【小野寺】ここは探して見つけた物件なんですか?
【熊谷】そうです。かなり古い建物だったので、市が 700万円の改築費を出してくれました。それで備品も揃えました。
スタッフは3人、月3万円の給与から始めました。
【小野寺】すごいですね。今は30人くらいの子どもさんが、こちらの学童に通っているんですか?
【熊谷】今は60人くらいですよ。
【小野寺】60人!?倍になってますね。
【熊谷】弟と一緒にお姉ちゃんも入ってきたりとかで6年生まで預かることになり、全体で60人くらいになりました。
うちでは、お母さんの都合で夜8時まで子どもを預かってまして。
【小野寺】そこが、すごいなと思ったところなんです。
【熊谷】ちょこっとした夕ご飯も用意しているので、6年間うちの夕ご飯を食べて育った子もいるんですよ。あとは、月何回かお母さんが遅番の時だけ預かるという時もあって、今でも8時までというのは必要ですね。ところが地域の方の中には、
「朝7時に学校に来て、夜8時まで外に出しているなんて虐待だ」なんて言う方もいるんですよ。いやいや、虐待って言うけど、5~6時に家に帰って、ずっと一人でいさせたらそれこそ虐待じゃんって思うんですよね。
【小野寺】逆に、その時に事故があったりとか、何かあった時が怖いですよね。
【熊谷】というように、私とは考えが違う方もいるので、くまの子クラブの運営委員会は区長さんなどを入れず、「父母の会」として立ち上げることにしました。私は運営委員長をやっていますが、あとは父母の会の会長さんたちに運営委員をやってもらっています。
【小野寺】そうすると、お父さんお母さんのニーズに合わせて運営できるんですね。
【小野寺】くまの子クラブさんが夜8時までお子さんを預かりご飯も出してるというお話はとても衝撃でした。
【熊谷】結局ね、一関市が合併してすごく広くなったじゃないですか。お母さん達が〇〇小だとか、○○病院の看護士とかだと、家に帰る時間が遅くなるわけですよね。
【小野寺】8時にお子さんを引き取り、家に帰ってからご飯をつくるのは大変だし、夜遅い時間に夕ご飯を食べさせるのもかわいそうですよね。地域では子どもの数が減り、学校も統合しているので、元の小学校単位での学童がなくて困っている地域が多いわけですよ。すると、「地域で子ども達を世話する拠点をつくっていこう」となるんですが、発想が、どちらかというと行政頼りになってしまうことを感じています。
【熊谷】市に「やってもらおう」じゃダメ!自分達で動き出さないと。
【小野寺】そう思ったら、空き家でも何でも借りて、自分達で何人でもいいから受け入れるということが大事ですよね。
【熊谷】そうそう、そこからですよ。
【小野寺】公設公営と民設民営の大きな違いは発想と視点、フットワークの軽さで、より利用者目線の運営ができることですよね。さらに卒業生にとっては、戻ってくる場所にもなりますよね。
【小野寺】熊谷さんの目から見て、率直に地域の課題はどう感じていますか?
【熊谷】「子育てに優しく」って言いますけども、優しくないですね。遊んでると「うるさい」って怒るし、「花壇に入るな」って言われるし。子育て支援とか、地域に子どもが少ないとか言うけど、周りの大人が子どもを少なくしてない?って思うんです。大人は自分の世界を守っちゃってるから。せっかく60人いる子ども達が遊んでいるんだから、一緒に遊んでくれたっていいし。
【小野寺】そうですよね。世代間交流がっていう割には子どもと関わらないんですもんね(笑)
【熊谷】最近の年寄りは、子どもと遊んでくれないですもん。それに、親はすごく大変なんだよって言うのが見えてない。ここの近所に住むお婆さんなんかは、夜8時までくまの子の灯りがついてて子どもの声が聞こえているのは安心するって言ってくれますよ。だから、花壇が荒らされたとか、子供の騒ぐ声がうるさいっていう人もいますが、それはそれだねって。
【小野寺】市では立ち上げ以降何か…?
【熊谷】市から運営補助費は受け取っていますが、あとは任せられていますから。
【小野寺】市のお金以外も入れてもいいんですか?
【熊谷】そうそう。学童の利用料金は市内は一律7,000円に決まっていて、そのほかにおやつ代として2,000円をいただいてます。始業式や終業式とか、何かある時にはおやつ代を使ってお弁当を出してるんですよ。お母さんがお弁当をつくれない時もあるので、料金が高くても出してほしいと言われて。
そのほかにも月に何回かはお弁当を出しています。子ども達がおやつをつくったりもしますよ。味噌汁に使うお味噌は、子ども達が材料をこねたりして全部手作りします。それがわかると、お母さん達がお米やお野菜を差し入れてくれたりするわけですよ。
【小野寺】買って食べる料理だけじゃなくて、実際に自分達が食べるものを自分達で作るというのはよい経験になりますね。
味噌作りなんて今はまずすることないし、スーパーでしか見たことがないですよね。
【熊谷】私達が作り方を教えて、皆でつくるんです。すると「この味噌汁おいしい!おかわり!」って言うんですよ。
【小野寺】いやー、すごいですね。
【熊谷】やっぱり一緒にやっていかないと。自分の子どもなんだから自分で手をかけないとね。
【小野寺】基本的なスタンスはそこなんですよね。学童があろうが、親は自分の子どもを自分でちゃんと面倒見る責任があると。預けたらいいんだじゃなくて、預けたところにもっとよくしてもらおうと思う気持ちをちゃんとぶつけていかなければよい運営にはならない。
【熊谷】本当に試行錯誤ですよ。毎年親の考えが違うし、若くなってきているし。それぞれ子どもも違うし親も違うしで。最初は3人のスタッフでわからないままスタートしたんですから。
【小野寺】でも、わからなくてもちゃんとニーズがあって、応えられているっていうのはすごいですよ。
【熊谷】くまの子クラブは、放課後、家に誰もいなくて行き場所がない、どうしようっていう子の相談の受け口になれればなと思います。6年間ここでご飯食べて育って、中学に進学してからも来てくれる子もいますから。
【小野寺】いや、本当にそういう動きって必要だと思いますよ、これからも。今回の記事を通してくまの子クラブさんの活動をもっと知ってもらいたいですし、気持ちがあるなら地域でやってみようって思ってもらえたらなと思います。
★こちらに載せられなかったお話は、「こぼれ話」としてブログでご紹介しています。
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