(idea 2019年8月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

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生活困窮への支援のあり方を考える

~困った時に「困った」と言える地域に~

樹木医 一関市 赤荻 佐藤好 岩手県立緑化センター 奥州市文化財保護審議会委員

一関市社会福祉協議会 地域福祉課長 菅原敏さん(上の写真)

 平成元年に一関市社会福祉協議会に入社。平成26年に地域福祉課長に就任し、生活困窮をはじめ地域福祉全般の取り組みに携わっています。

 

いちのせき生活困窮者自立相談支援センター 相談支援員 佐藤夕子さん

 平成28年に相談支援員に就任。暮らしの悩み事や自立した生活をしたいという方、一人ひとりに寄り添った支援をしています。

対談者 一関市社会福祉協議会 地域福祉課長 菅原敏さん   

    いちのせき生活困窮者自立相談支援センター 相談支援員 佐藤夕子さん 

聞き手 いちのせき市民活動センター 主任 畠山信禎

 最近、耳にすることが増えた「生活困窮」について、自治体から一関市社会福祉協議会が業務委託を受けて開設している「生活困窮者自立相談支援センター」で支援を行っているお2人にお話を伺いました。

 

 

畠山 まず、初歩的な質問ですが、「生活保護」と「生活困窮」の違いは何でしょうか?

 

菅原 元々は「生活保護制度」(以下「生保」)があり、「生活困窮者自立支援制度」(以下「生活困窮」)はその後につくられた制度です。

 生保はどちらかといえば経済的に困窮している方に最低限度の生活を保障する制度です。

 生活困窮は、経済的な支援というよりは、就職して給料を貰えるように支援したり、制度を利用して生活費を確保しながら自立を目指すもので、相談支援の出口と言われるのが「就労」ですが、それだけでは解決できないので様々な取り組みを使い、その人の「自立」や「生活」を支援します。最近は、社会的孤立に関する相談も多いので、役割としては「経済的な自立」と「社会的孤立をなくす」の2つでしょうか。

 

佐藤 中には、収入はあるけど生活がうまく回っていない方もいるわけです。そういう方とは、話をしながら収支状況を確認し、課題を整理してお金の使い方を見直したり、利用できる制度やサービスを紹介したり、関係機関に繋いだり。場合によっては生保に繋ぐこともあります。

 相談は基本窓口で行いますが、窓口まで来られない方にはこちらから相談者を訪問する「アウトリーチ」も行っていますよ。

 

畠山 生活困窮者の窓口は、市内ではここ1か所だけですか?

 

菅原 地域包括支援センターなど、同じ役割を持っている事業所はほかにもありますが、色濃く出てきたのがこの生活困窮者自立支援センターなのかな。その目的でつくられた機関なので。

ここには専任の相談支援員が3人、主任相談支援員が1人、センター長が1人の計5人が配置されていますが、主任相談支援員とセンター長の2人はほかの業務と兼務しているので、実質は管轄地域の一関市・平泉町を3人の専任相談支援員が担当している状態です。

 

畠山 たった3人だけで担当しているんですね。毎月、何人くらいの方から相談を受けているんですか?

 

佐藤 平均で15人くらいですね。

 

畠山 相談にいらっしゃる方は、どんな年代の方が多いんですか?

 

佐藤 今年度でいうと、40~50代の方が全体の半分以上を占めています。仕事がないとか、働いていても収入が少なくて生活費が足りないとか。次いで多いのが65歳以上の方ですね。家族が自分の年金を頼りに生活していてお金が足りないというケースが多いです。

 

畠山 家族の生活費を年金だけで賄い、お金が足りなくなっているんですね。

 

佐藤 そういった家族関係の相談は多いですよ。離れて暮らす兄妹・親類からお金の援助を求められていたり、家庭内の関係が上手くいっていないとか。

 また、親戚縁者の冠婚葬祭を気にするあまり自分の家計を顧みずにお金を出す方などは、食費や光熱水費の優先順位を低くしてしまうんですよね。65歳以上の方は、特にそういう意識が強いので。改善するには今までの意識を変える必要があると感じますが、それは簡単なことではありませんよ。

 

菅原 困窮の出口はだいたい就労なんですが、65歳以上の方に「働きましょう」でもないですよね。75歳以上で元気に働く方もいますが、実際は働けない方の方が多いですよ。

 

佐藤 そうなると生保を紹介することになりますが、生保を受けるためには車を持てなくなる場合があります。福祉事務所が判断しますが、車の保有は原則認められていないんですよ。

 

菅原 場所によっては車がないことは死活問題ですから。皆さん車を手放したくないので、単純には生保を受けたくない実態もあります。地域で起きている交通の問題は、こういうことにも関わってくるんですね。実際のところ、県南は岩手県の他のエリアと比べて生保の受給率も低く、一関市でも受給者が増えていないという状況だと聞いています。

 

畠山 支援をしていて課題だと感じていることはありますか?

 

菅原 「制度の狭間の支援」でしょうか。生保も生活困窮も法律に基づいた支援なのですが、生活に困っているけれど制度やサービスの対象にならない方もいます。そこは「社会資源の開発」といって、私達が受け皿になる事業を新たにつくったり、どうにかして制度に繋ぐというやり方になりますが、なかなか難しいですね。

 また、最近感じているのは「繋がりを広げていかないと支援にならない」ということです。関係機関に繋いだら私達は手を放すという「バトン型」の支援ではなく、手を放さず、一部が繋がって広がっていく「のりしろで繋がる支援」というか。関係機関との繋がりはもちろん、地域住民の方ともです。相談者さんが生活を送るには地域との繋がりが不可欠なので、地域住民の方々にも「地域にはこんな方がいる」ということをわかっていてほしいですし、その方と関わりをもてるようになればと。

 

畠山 相談者ご本人に「周りに困窮者だと知られたくない」という気持ちもあるかと思いますが、いつかは地域の方にも協力してもらわなければならないということはあるかもしれませんね。

 

菅原 困った時に「困った」と言えて、周りでその人の自立を助けてあげられる環境がつくれればと。地域の力ってすごいですから。地域協働体でも色々な地域の課題を取り上げて良くしようと取り組んでいますが、私達と連携したり、一緒に何かやらせていただく形があるのではないかと思っています。

| いちのせき生活困窮者自立相談支援センター

 住所 一関市城内1-36(一関市総合福祉センター内)

 電話 0191-23-6020

 

 

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