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(idea 平成27年9月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
◆店主兼菓子職人:柴田 健二 さん
【旭町本店】
◆連絡先:一関市千厩町千厩字町浦9-20
◆電 話:0191-52-2062
【エスピア店】
◆連絡先:一関市千厩町千厩字東小田90
◆電 話:0191-53-3171
千厩町千厩の商店街は古くは三陸沿岸と内陸部を結ぶ気仙沼街道の主要道として、また周辺地域は葉タバコはじめ養蚕の主要生産地として栄えていたので、旧東磐井郡内の娯楽街として多くの商店や飲食店が立ち並び大変賑わっていました。現在の町中は、旧専売局千厩葉煙草専売所の建物を利用した「せんまや街角資料館」はじめ、国の登録有形文化財の佐藤家住宅や横屋酒造など明治大正期の建物が数多く、タイムスリップしたかのような大正ロマンが味わえます。
立ち並ぶ商店街メインストリートから裏路地へ入ると通称旭町商店街があります。ここに千厩町銘菓と謳われる“駒サブレ”をはじめ、地元の歴史や名産に因んだ和洋菓子を製造販売している “菓子処しばた”が誕生したのは、昭和38年4月のことでした。
戦前戦後の困難に立ち向かいながらも、一代で築き上げた先代を「感謝の心を常に持ち、地域の方々との交流を大切にしていました」と語るのは、二代目店主で菓子職人の柴田健二さんです。「地域力が活かされる時代だった」と振り返ります。
「向き合うのは、いつの時代も人と人なんですよ。『お世話になりました。これからもよろしくお願いします』そんな会話の中に、私が作った和洋菓子がつなぎ目となり、新しい出会いを作ったり、思い出を残したりと、少しばかりのお手伝いです」
同菓子店を開業後、「地域に日頃の感謝を」と考えていた先代は、まもなく町内の特別養護老人ホームへの慰問活動を夫婦ではじめました。「まだまだクリスマスケーキというのは物珍しい時代。地域を支えてくれた方々、人生の先輩方一人ひとりへ思いを込めてケーキ作りをしていました」そんな父の姿を見ていた現店主の柴田さんは、県外や一関市内の菓子店で修業した後、昭和46年、当時流行りの喫茶店を併設した千厩本町店を任せられ、地元酒造とのコラボレーション菓子等新商品の開発に力を入れてきました。
「父が何十年と慰問活動を続け、『ありがとうと言われるのではなく、ありがとうと言いながらケーキを手渡す』その活動は、私は義務ではなく真心一貫引き継いでいこうと決めていました」現在も町内の特別養護老人ホームへの慰問活動は世代を越えて引き継がれているのです。
平成4年大店法改正によって郊外型大型店の出現により以前のような活気が減少傾向にあったのは千厩町も例外ではありませんでした。せめて、商店街に店を構える地元の店が協力して雇用を生み、支え合える方法は?と、その課題に向き合った有志数名で立ち上げた、地域そのものに潤いと雇用の場の確保、そして商店街の店主が運営できる地元主導型のショッピングモールエスピアが開店したのは平成11年のこと。
「大手企業の大型ショッピングセンターではダメだという思いが強かった。だからこそ困難もありました。本当は商店街の活性そのものが一番と考えていますし」と言葉を少し濁した後「今も何か方法がないかと探っているところなんです」と、商店経営者の一人として地域発展のため新たな挑戦を続けようとする意志が伝わってきました。