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古紙100%を原料とした質の高いトイレットペーパー・ちり紙の製造を行う上山製紙株式会社は、昭和25年に創業し、今年70年の節目にあたります。初代で創業者の菅原冨次さん(現代表の祖父)は、昭和14年に「上山工業社」を起業、セメント瓦や建築ブロック等のコンクリート製品を製造していましたが、当時貴重であった紙製品の安定供給を目指すという業種転換を図ります。
試行錯誤の末、旧東磐井郡の特産である東山赤松を使用したグランドパルプの製造を開始、社名を改めます。
三代目となる現代表の菅原寿基さんは、循環する資源「上山製紙リサイクルシステム」を構築し、環境保全とともに、より高品質な再生紙100%のトイレットペーパーの供給に努めています。
(idea 2020年9月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
私達の日常生活の中において必要不可欠なトイレットペーパー。昔は木をすりつぶしたものを紙の原料としていたため、いわば森林伐採で原料を調達していたことに。上山製紙株式会社も創業当時は地元の木を原料としていましたが、創業者の「限りある資源を大切に」という思いと、二代目の「環境に配慮した製品を」という思いから、昭和40年に古紙のリサイクルに転換しました。
また、ひと昔前の主流はしっかりした肌触りの平ちり紙(通称がさちり)でしたが、水洗トイレの普及と共にソフトな肌触りで水に溶けやすい「トイレットペーパー」の需要が高まり、同社でも昭和52年からは後者を中心に製造しています。
古紙100%のリサイクル製品を手がけるのは県内では同社のみ。古紙から製品に至るまでは、10~15の工程があり、工場は週末のメンテナンス以外24時間稼働で1日に30万ロールを製造しています。
平成30年からは、公共機関や企業、病院等で不要となった機密書類・重要書類の溶解処理事業を開始。段ボールなどに書類を密封して持ち込み、封をしたままの状態で直接溶解設備に投入することで、機密情報は抹消され、トイレットペーパーに生まれ変わるという仕組みです。溶解作業には立ち会うことができ、機密情報を確実に抹消したことを証明する溶解証明書を発行しています。
企業等だけではなく、学校や家庭でも無料で利用可能というこのサービス。現代表取締役社長の菅原寿基さんは「地域で排出された原料(地産)を、地元で回収・再生(地循)し、地元(東北6県内)で消費(地消)するという仕組みが実現できる」と笑顔を見せます。
※1 東北6県の家庭、オフィス、事業所から回収された古紙を利用
※2 研修を受け、専門の知識を持った社員のみがその業務にあたる。平成31年には情報セキュリティマネジメントシステムISO/IEC27001を取得。
新型コロナウイルス感染症の流行当初に全国で発生したトイレットペーパーの買い占め現象。県内でも同様の現象が発生したことを受け、同社にもテレビ取材(NHK)が。「十分な原料があり、買いだめをしなくても必要な供給がなされている」ことを県民に訴えたことで、安心することができた人はもちろん、同社製造商品の原料が古紙100%であることを改めて知った市民も多いのではないでしょうか。
70周年を機に、地域イベントなどで、家庭で不要となった紙類をトイレットペーパーと交換できるという企画を検討していたという同社。しかし感染拡大防止の観点から、地域イベント自体が今年度は軒並み中止に。そんな中でも菅原さんは「新型コロナウイルスを巡る状況が落ち着いたら、住民と企業の交流活動のひとつとして、子どもたちがリサイクルを学ぶきっかけの場を創出していきたい」と、今後の展開を前向きに模索し続けています。
古紙がまっさらになトイレットペーパーに生まれ変わって、家庭やオフィスにかえってきます。
工場は24時間稼働で、生活必需品であるトイレットペーパー等の安定供給に取り組んでいます。
代表取締役社長 菅原寿基(ひさもと)さん