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店主の千葉拓也さん
(idea 平成29年3月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
一関市花泉町にある千葉写真館はスタジオ専門で一人一人の思いに沿った記念撮影を行っています。創業は昭和13年。当時は新しい職業の一つであった写真館を現店主千葉拓也さんの祖父が立ち上げました。
「昔は気軽に写真を撮れるような時代ではなく、結婚式など家族や親戚が集まっての記念撮影は、カメラマンが直接出向き撮影していました。栗原市若柳出身の祖父は地元の写真館で働き花泉町まで冠婚葬祭時の写真を撮影しに来ていたそうです。そのご縁から町内で開業しました」と語る千葉さん。カメラマンである祖父や父の背中を見て育ち、東京での修業を終え家業を継ぐため平成5年にUターン。平成18年から現住所に移転し夫婦で地域の写真館を運営しています。
「昭和40年代、二代目である父の時は全盛期だった」と語る千葉さん。当時はカメラが普及しはじめ、撮影だけでなくカメラの販売も行っていたのだとか。現在は記念写真撮影の需要も年々減り「デジタルカメラやスマートフォンの普及でカメラ店の廃業も多くなってきた」と現状を語ります。「同業者などで後継者育成のための活動も行っていますが、後継者は少ない」と続けます。「ただの“記録”を残すだけなら手軽に保存ができるデジタルなものでいいと思います。しかし、私たちが撮影時に意識していることは、その人それぞれのストーリーにスポットをあて『短編映画のような価値ある写真』を“記憶”として残すこと。何年、何十年と時を経て見返しても、その時の記憶で当時を振り返ることができるようなそんな写真をお届けしたい」と語り、その熱い思いがこちら側にも伝わります。
写真館で撮影してもらうといえばやはり子どもを中心とした誕生、七五三、入学・卒業、成人式、結婚式などイベントごとの家族写真。なんとなく、きっちりとした格好でつくり笑顔で…という雰囲気がありますが、千葉さんは「気軽に普段着でいいんです。写真を撮るときは楽しくおしゃべりをしながら自然な表情で。できあがった写真を見て楽しんでもらい、何年か後に見返して楽しむ。記憶に残る写真は3度の楽しみがあるんですよ!特に家族写真はお子さんの反抗期には絶大な効果がありますよ!」と、その魅力をユーモアたっぷりに語ります。
「海外のテレビ番組や映画の中で、家族の写真がリビングに飾られているのを見たことがあるでしょ。あの飾られた写真、実はただのインテリアではなく、『家族の絆を深める』という意味合いがあって、家族が幸せに暮らしていくための一つのツールとして家族写真を上手く利用しているんです。すごく素敵なことですよね」とニコリ。なるほど!と納得しました。
祖父や父の代から家族ぐるみでお付き合いをしているお得意様も多い同写真館は、地域や時代のニーズに合わせた独自の取り組みも行っています。ご高齢の方の撮影時には希望があれば送迎を、千葉写真館をもっとよく知ってもらうためのチラシには撮影に込める思いを、ホームページには日常のささやかな出来事を綴り温かな情報を発信しています。
また、現在は地域の市民センターからの依頼で、デジタルカメラや一眼レフカメラでの撮影のコツを指導する講師として地域に貢献しています。
最後に「試行錯誤中ではありますが、地域の方々のご家族の幸せとそのニーズにお応えできるような写真館であり続けたい」と力強く語っていただきました。
日差しが降り注ぐスタジオ。まるでカフェのような落ち着きがあります。