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自宅兼工房にて、一般着物の仕立てや仕立直しのほか、着物のリメイク(洋服や小物等)や販売など、手作業による一点物の和服縫製業を営む。東京で和裁の技術を学んだ小山富二子さんが工房を立ち上げ、現在は長女の春日(はるか)さんも職人として工房を切り盛りする。また、地元の職業訓練校が開催する和裁教室(毎週金曜日)の講師も務め、「着物」という日本の伝統と文化の継承に貢献しています。着物を着る機会が激減している中、少しでも着物に興味関心を持ってもらえるよう、リメイク着物などの情報発信にも注力。同工房のリメイク着物作品は、同店舗ほか、「道の駅むろね」でも購入可能。
(idea 2021年9月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
「一人でも多くの方々に、着物に興味を持ってもらいたい。着物を着用し、日本衣装の素晴らしさをもっともっと身近に感じてほしい。着物を普段着として楽しんでもらえたら」と語るのは、和服工房 小春屋代表の小山富二子さん。学生時代から手先が器用で、モノづくりが得意だった富二子さんは、その得意分野を活かした手仕事を自らの生業にしようと、東京で住み込みをしながら和裁技術を習得。国家資格である和裁技能士1級や和裁教員免許を取得した後、実家(室根町)に帰郷します。
当初は実家を和服縫製作業の拠点としていましたが、昭和61年に現住所で工房を構えると、同じく和裁を得意とする知人や、和裁を学びたいという人(生徒)数名で、気仙沼市の呉服店や仙台市内の着付け学校などから依頼を請け負うように。一般着物・振袖・留袖・和装コート・男物・帯・作務衣等の寸法直し、仕立て直しや、染め・シミ抜き・洗い張りなど、すべての依頼を手縫い・手作業で仕上げていきます。
日本の「民族衣装」とも言える「着物」ですが、「普段着」ではなく、「品位のある特別な衣装」というイメージが強くなっている現代。「普段着が洋服になり、着物が日常的にも着用できる衣服だという意識は薄れてしまった」と、残念がる富二子さん。少しでも日常使いしやすいようにと、現在力を入れているのが着物のリメイクです。
お客様の思い出の詰まった着物や羽織物が、普段着として使える洋服などに大変身!その素材や柄などを活かし、ご要望に合わせてリメイクしており、着物が日常使いできるようになるだけでなく、和服縫製技術の継承にもつながっています。
長女の春日さんの名前にちなんで命名された「小春屋」。「工房で着物の仕立てをしている母の姿を見ながら育った」と話す春日さんは、「私もいつか、着物に携わる仕事に就きたい」という想いから、高校卒業後、東京で和服縫製の修業をし、和裁技能士1級を取得。地元に戻り母の下で修行を続ける中で、和装縫製という日本の伝統技術や着物の素晴らしさを「残したい、守り続けなければ」という思いが増し、工房を継ぐ決意をします。
着物・羽織物の反物からの仕立ては工程全てを手縫いで行っており、2~3日かけて完成させます。また、今ある着物や羽織物をほどいて、新しい着物や羽織物に生まれ変わらせる「仕立て直し」にも対応。「和服は洋服と異なり、生地を裁断せずに縫い込んでいるため、ほどいて並べると反物の形になります。そのため、サイズに変化があっても、お仕立て直しをすることで新たな命が吹き込まれるのです」と春日さん。
SNSを使い、着物の魅力や和装士の技術、リメイク品情報などを積極的に発信する母娘は、「たくさんの人に興味を持っていただければ嬉しいです」と笑顔を見せます。
代表の小山富士子さんと娘の春日さん
仕立てたきものと着物リメイク作品
あぐらをかいて足の親指と人差し指で布を挟み引っ張りながら仕立てる方法「男仕立て」