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代表 小山健治さん
(idea2019年1月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
◆代 表:小山 健治 さん
◆住 所:〒029-1202 一関市室根町矢越字千刈田46-4
◆電 話:0191-64-2056
◆FAX:0191-64-2036
一関市は古くから地域ごとに郷土芸能や祭りが盛んな土地柄です。舞手などの動きに合わせ軽快なリズムを刻む“和太鼓”が中でも演舞の要ともなっています。
さまざま場面で出番の多い和太鼓ですが、製造場所は全国的に少なく、岩手県内では5箇所だけ。しかしその内の2箇所は、一関市内に工房を構えています。
その1つである室根町の小山太鼓店さんは、昭和24年に、現代表で和太鼓職人・和太鼓調律師の小山健治さんの祖父小山徳男さんが創業しました。当時から原木の削りだし、胴作り、革なめし、革張り、金具の取り付け、鋲(びょう)打ちに至るまでの全行程を行う職人が「木から製品まで一貫生産体制」で太鼓作りを行っており、今年で創業70周年を迎えます。この一貫生産体制は、初代の奇跡的な出会いや経験、発想力が積み重り築き上げ確立できたものでした。
「祖父は、青少年義勇軍※として15歳の時に満州に渡り『なにか手に職を』と考えていた頃、偶然一緒に渡った方が秋田で桶職人をしており、その方から桶作りの技術を学んだそうです。その後はソ連の捕虜としてシベリアに渡り、その時には皮なめし工場で働き技術と知識を習得。帰国後、故郷の室根に戻り、家族を養うためにと様々な仕事をしばらく続ける中で、たまたま交流のあった気仙沼市の漁師さんから『桶作りができて皮なめしの技術があるのなら、祭り用の太鼓を作ってもらえないだろうか?』と声をかけられ、未経験ながら和太鼓作りに挑戦したそうです」と、祖父の思い出と共に創業のきっかけについて三代目代表の小山さんは語ります。
※青少年を満州国に開拓民として送る制度。
太鼓作りの経験がなかった初代が、技術と知識を得られたのは「地域の方々のご指導があったから」と語る小山さん。郷土芸能や祭りが地域や集落ごとに違いがあるように、太鼓へのこだわりも様々だと言います。また、太鼓は注文を受けるとすぐに完成できる商品ではなく、100年以上使い続ける長胴太鼓などは荒胴の状態で5年~10年の歳月をかけて自然乾燥する必要があり、「祖父は依頼してくださったお客様や地域のオンリーワンを作るべく、完成までの長い歳月の中で、その都度ご指導をもらい、お客様(地域や風習)と共に作ることにこだわりを持っていました」と振り返り、「そんな祖父を見て育ち、職人気質な背中に憧れもありましたね」と続けます。
初代他界後は、二代目(小山さんの母)と共に二人三脚で受け継いだ技術と知識を活かし太鼓作りに励んできた小山さんですが「職人というのは孤独なもので、特に太鼓職人には組合などもありません。製作中には『これでいいのだろうか?』と一人悶々とすることもしばしばありました。そんな中出会ったのが市内や平泉町内の異職種の若者職人が集う“五感市”です。私は当初会員ではなかったのですが、興味が湧き会議があると聞きつけては飛び込みで顔を出していくうち仲間にさせていただきました。それぞれが単独の技術職人として培った経験を活かしつつ、新たなものを創造する“仲間”に大変刺激をいただいています」そう語る小山さんの技術や知識だけでなく人と関わることも大切にし、視野と可能性を広げるところは初代から受け継いだものなのかもしれません。
同店舗では、工場見学・太鼓作り体験教室(毎週土日、2週間前までに要予約)を開催しています。自分だけのオリジナルミニ太鼓の革張り体験ができますので、お気軽にお問い合わせください。