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代表取締役 佐藤 脩 さん
(idea 平成29年9月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
◆代表取締役:佐藤 脩(おさむ) さん
◆連絡先:〒029-3205 一関市花泉町涌津字二ッ檀17-44
◆電 話:0191-82-3459
◆FAX:0191-82-5537
「花泉町で変わったお風呂を造っている企業がある」という話を聞き、向かったのは花泉町涌津地区にある有限会社佐藤電機さん。主要製造品は工場で使用する半導体製造装置そのもので、商品のほとんどが海外へ輸出されています。また、自社商品として、要介護者がベットを移動することなく入浴できるエアー簡易浴槽“ニッコリおふろ”や畳の上でも入浴可能な日本初の洗髪器付き浴槽“湯ったりおふろ”、災害用品として移動式ガス給湯器や避難生活向けエアーマットの製造販売も行っています。
同社代表取締役の佐藤脩さんは、地元の高校を卒業後、「三男だから地元へは戻らないだろう」という思いで上京し就職しましたが、その7年後に大きな転機が訪れました。
それは、両親から届いた一通の葉書でした。その内容から、家の一大事を察し佐藤さんは家を継ぐため帰郷を決意。「戻ることはないだろう」と感じていた故郷へUターンしたのは25歳の時でした。しかし、戻っては来たものの、地元には生活の基盤となる賃金を得るための働く場、仕事が少ないという現状を目の当たりにしました。そこで、“ないなら会社を立ち上げよう”と思い立ち、以前の職場で覚えた半導体製造のノウハウを活かせる製造工場を昭和53年に立ち上げました。
起業後は、着々と実績を上げ一時期は従業員60名を抱える企業へと発展し、平成9年には従業員のアイディアを基にした自社商品の開発・研究を進めるべく商品開発部を立ち上げました。
将来的な時代背景を考え「介護分野」に参入を決め、介護・介助を必要としている方々や支援している方々が一番の課題と感じる事であろう“入浴”に着目し、平成10年以降に、エアー簡易浴槽を商品化しました。
東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開催された介護関係展示品では岩手県内の介護関係用品として2年連続出展し高評価を得ることができましたが、「高評価を得ることと実際に売れるということは別物」と語り「着目点や機能性・利便性どれをとっても素晴らしい商品でしたが当時の売れ行きは思うように伸びませんでした」と当時を振り返ります。
しかし、ある時期から附属の移動式ガス給湯器が単品で売れ始めました。それは、平成16年の新潟県中越地震以降の災害での需要がきっかけとなったのです。「電気と水道があればどこでも無制限でお湯が利用できる移動式ガス給湯器は体育館など避難生活の入浴時に便利だと必要性が認められ多くの問い合わせがありました。また、東日本大震災後は移動式ガス給湯器についての独自アンケート調査を行い、その必要性を再確認。その重さを20㎏程度の小型化にも成功したのです」と佐藤さん。現在も全国各地で有限会社佐藤電機さんが開発製造した商品が多くの人々に生きる力を与えているのです。
現在、工場縮小に伴い従業員は10名ですが30歳代の若い方が多く、子育て中のママも活躍しています。起業から38年、自身が身をもって感じた「地元に戻っても仕事がない」という現状から目を背けず、「ならば自分が起業し地元の方々が安心して働ける場を提供しよう」と無我夢中で運営してきた佐藤さん。現在は現場(工場)から少し身を引き趣味の活動を楽しんでいるのだとか。
「後継者も育ち、安心して現場を任せられる従業員ばかりです」とにっこり微笑みます。
有限会社佐藤電機工場入り口