毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第3話(2019年7月号掲載)
現代がもつ「まちづくり」の意味は、少子高齢化、人口減少による社会構造の変化に対応した将来への備えであり、地域の支え合いを再構築することです。
地域のみなさんとお話しをしていると、「おらほは、限界集落だから」という言葉をよく聞きます。集落の高齢化が進み、見渡すと高齢者が多いと感じて、そんな言葉が出てくるのでしょう。「限界集落」とは、65歳以上の人が集落人口の50%以上を占める集落のことを指し、社会学者の大野晃氏が1991年に提唱した概念です。果たして、一関市には限界集落があるのでしょうか?
行政区別 高齢化率色分け地図
(平成30年3月31日現在の人口データを元に作成しています)
※介護施設への入居者分は含まれておりません。
当センターでは全行政区の人口データを集計していますが、年々、高齢化率が50%を超える行政区が増えています。総人口や高齢化率などの単純な数値だけを見ると、焦りだけが生じてしまいがちですが、問題をきちんと分析し、それぞれに応じた対策や対応が大切です。少子化と高齢化は関連する部分ももちろんありますが、背景や課題、対応策も異なります。問題をひとくくりにせず、分解して考えてみましょう。
一関市の高齢化率(全体における65歳以上の割合)35.7%
準高齢化率(全体における55歳以上の割合)50.3%
年少人口割合(全体における0歳~14歳の割合)10.7%(平成31年3月31日現在)
これまでのコラムでも触れてきたように、近年の様々な危機感の中から、産業の衰退、地域コミュニティの衰退などが叫ばれ、広義の「まちづくり」も、狭義の「地域おこし」も「地域づくり」も積極的に行われるようになってきているのです。では、「地域づくり」「地域おこし」どちらを行えば良いのでしょうか?
答えは、「どちらも大事」です。
よその地域から注目され産業等に結びつけていく「地域おこし」、生活目線で過ごしやすい地域にしていく「地域づくり」に優先順位を簡単につけることはできません。ただ、生活の場としての「地域」が人と人とがつながりあい、安全安心で、豊かな状態を創り出していなければ、それは住みにくい地域であり、移住定住までにも至らないでしょう。まずは自分達にとって「住みやすい」生活基盤を「地域づくり」によって整え、さらに「豊か」な状態にするために「地域おこし」に取り組み、市全体としての「まちづくり」と言う流れが理想的なのかもしれません。
これからの地域づくりを進めていくためには、自分の地域の世帯状況や人口構成比率を意識することが大事です。目に見える課題だけではなく、本当にしなければいけないことは何かを考える素材になります。今と昔の違いは、人口構成バランスが崩れていることです。昔は地域の中に若い人も多く、何かやろうとしても、やれる人が多くいました。ゆえに、私達の先輩達は、たくさんの地域財を残してくれているのですが、それを昔と同じようにやろうとしても、人が少ないためにやれない現実があるのです。
人口減少は、人口が減るという自然現象であり、直接的な課題ではありません。人口減少による直接的な課題は、地域運営が困難になることだと考えます。現実と向き合いながら、人が少ない状況でも地域を運営できるように、地域にある役職や行事などを見直したり、時代の変化とともに地域の仕組みを再構築する必要があります。