毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第20話(idea 2020年11月号掲載)
誰でも気軽にインターネット上に様々な情報を公開できるようになった昨今。地域イベントや自団体の活動の様子などを動画におさめ、YouTube等の動画投稿サイトに投稿するという行為も一般的になりました。特に今年度は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、無観客や来場者制限をかけて開催するイベントも増え、その代替として「動画生配信」に挑戦したという話も多数耳にします。何を隠そう当センターもその一人です。
環境さえ整えば気軽に挑戦できるため、安易に手を出しがちですが、実はそこにはクリアしなければいけない「見えない壁」があり、強行突破すると大きな代償が待ち受けることがあります。今回は当センターの実際の失敗事例を交えて「著作権」と「著作隣接権」についてご紹介します。
毎年開催している「イチコレ」というファッションイベント。今年は観客を大幅に制限し、動画生配信で代替。ランウェイで流すBGMは参加モデルの指定曲もあったりと、複数アーティストの曲を使用することから、「著作権」については「日本音楽著作権協会(JASRAC)」に事前に問合せをしました。その際、「非営利・入場無料・出演者への報酬無し」という3要件に合致することから、著作権の許諾は必要ないとの回答を受け、動画生配信に関しても、JASRACと許諾契約を結んでいるYouTube等であれば問題ないとのこと。ただし、アーカイブ配信(本配信後も配信内容が見れるようにすること)をする際には、曲によっては「複製権」に関する手続きが必要だと言われ、その手続きは行う予定でおりました。
ところが……!動画生配信は無事に終了し、後日、アーカイブ配信の準備を進めている中で「著作権」とは別に「著作隣接権」というものが存在することが発覚!著作権が作詞・作曲家など「創作した人」の権利であるのに対し、著作隣接権はアーティストやレコード製作者、放送事業者など「伝える人」の権利であり、イベント等で音源を使用する際には、著作権とは別に、この「著作隣接権」の申請(=使用料の支払い)をしなければいけなかったようなのです。
実際、この問題をクリアしないまま、試験的に公開してみたアーカイブ動画はサイト側により「ブロック」され、動画サイト上に投稿はされているのに、非公開状態に……。そこで、当日使用した音源それぞれにおいて、製作したレコード会社に「イチコレそのもので使用するため(事後申告)」と「アーカイブ動画に使用するため」の2点について、音源使用申請を行なうことに。
しかーし!ここでもう1つまさかの展開が!上記申請の後者に関して、そもそも「動画サイトでの使用は許可しない」と明示しているレコード会社があったのです……!つまり、イベントそのものでの使用に関しての申請は受け付けてもらったとしても、動画配信においてはその曲が使用できないのです。
結局、動画配信においては全てのBGMを「著作権フリー」の音源に差し替えることにし、アーカイブ配信用の申請は取りさげ。残念ながら「臨場感のない」アーカイブ動画になってしまったのでした……。
ちなみに、取り下げはしたものの、レコード会社によっては動画配信での使用料は1曲につき年間25万円という会社もありました。イベントそのものにおける使用料はイベント内容によりけりのようですが、最低でも3万円程度はかかるようですし、手続きには3週間~1か月程度かかるようで、かなり入念な準備が必要です。
また、「著作権」についてもこの機会に改めて確認が必要です。地域のお祭りなどにおけるステージイベントで、ローカルバンドが演奏したり、子どもたちがダンスを披露したり…という場面がよくありますが、その出演者に報酬や謝礼を支払う際には、演奏・使用する曲に関する「著作権」の申請も必要になります。
注意していただきたいのが「どうせ地方のイベントだから無許可で使用してもバレないだろう」と、強行突破すること。冒頭で述べた通り、誰でも気軽に動画配信ができてしまう時代です。著作権、著作隣接権ともに、申請料の大小の問題ではなく、製作者側にとっては自分の生み出した苦労の結晶を守る大事な権利です。今回ご紹介した「著作権」「著作隣接権」の他にも、付随する権利が様々ありますので、一度整理・確認してみることをおすすめします。