毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第45話(idea 2022年12月号掲載)
当市における「中間支援」組織
~「いちのせき市民活動センター」誕生秘話とともに~
当センターが事業を開始したのは今から17年前。当時は、「中間支援※」というと‘NPOを支援するNPO’がメインの時代でした。「NPO法人せんだい・みやぎNPOセンター」や同法人が運営する「仙台市市民活動サポートセンター」の取り組みが注目され、仙台モデルを追うように中間支援の取り組みが広がっていた時期です。岩手県も同様で、岩手県における中間支援のモデル事業として当センターもスタートしました(当時は「きらめきサポートステーション一関」という名称で、NPO法人レスパイトハウス・ハンズが受託)。一関市が合併した平成17年の開設です(平成23年に藤沢町が加わり現在の一関市に)。
※中間支援組織:明確な定義はないものの、内閣府が平成13年に行った中間支援組織へのアンケート調査においては、中間支援組織を「多元社会における共生と協働という目標に向かって、地域社会とNPOの変化やニーズを把握し、人材、資金、情報などの資源提供者とNPOの仲立ちをしたり、また、広義の意味では各種サービスの需要と供給をコーディネートする組織」と定義している。
開設当初は仙台モデルに学び、「情報コーナー」を作ってみたり、「NPOマネジメント講座」などを開催しました。しかし、仙台モデルに倣おうとしても、当時の当センターは、JR一ノ関駅前にあるビル5階のワンフロアを子育て支援団体と同居する形で、半分は子育て支援スペース。我々は、デスク1台とミーティングテーブルを置くだけで、他の中間支援センターのようなNPOが利用する作業スペースや貸事務所などの拠点機能は持ち合わせていませんでした。
実際のところ、法人格を有する団体は自前の拠点を構えて事業を行っていることが多く、任意団体は地域の公民館(現市民センター)などの公共施設で活動しており、仮に拠点を整備しても利用されることは少なかったはず。また、合併後の一関市は東西で約90kmあり、地理的に考えても、一か所のみのいわゆる「NPO支援センター」は、ニーズがなかったように思います。そもそも、地方都市においては、支援対象となるNPO自体が少なく、それも相まって‘NPOの支援施設’と名乗っていながらも、駆け出しの我々にはノウハウもなく……。‘支援する’なんて声を大きくして宣言できる自信はありませんでした(苦笑)。
結果的に、拠点整備をしなかったのが幸いとまでは言いませんが、拠点施設に縛られず、自らが動いて回る体制にすることができたのは偶然の賜物です。
さて、開設して3年間は、活動内容を模索しながら「人口12万人(当時)規模のまちに必要な『中間支援』とは何か」をずっと考えていた時期でもあります。中間支援と言えばNPO支援のイメージが強いのですが、上述のように一関ではNPO支援に特化してもニーズは低く、生活基盤となる‘地域コミュニティ’の支援をしていく必要性をずっと感じていました。そして平成20年、合併から3年が経過した一関市は、「協働のまちづくり」を宣言。この時から一関市の委託(「市民活動推進事業」として同じくNPO法人レスパイトハウス・ハンズが受託し、当センターを開設)になり、地域協働支援としてNPOと地域コミュニティの支援に本格的に取り組み始めたのです。
地域コミュニティとNPOは、地域を支える主体の2者であり両輪です。「テーマ型」の活動が基本であるNPOの機能だけを強化しても、「地縁型」である地域コミュニティの機能は弱いまま。逆に、地域コミュニティの機能強化に努めていくと、「地縁型」の中から「テーマ型」の取り組みが生まれ、それがNPOに成長していくことがあるので、双方を支援し、互いの必要性を掛け算していきたい。その考えは、いまも変わっていません。
少子化、高齢化、人口減少が進み、地域を支える主体の役割は整理されず、人口が多かった時代のまま。果たして、そのままでいいのか?そして、中間支援のあり方も17年前と同じでいいのか?一関のまちと地域と向き合い、中間支援という機能をどのように活かしていくのかを考え続けてきました。最近は、「地域コミュニティを支援する中間支援機能」が求められるようになってきています。そのためか、当センターに県内外から相談や問い合わせをいただくことがあるのですが、「地域コミュニティを支援する中間支援があれば‘うまくいく’」という発想は、落とし穴にはまるだけなのでご注意を。
むしろ、中間支援組織が無くても、その機能を既存の主体が果たすのであれば、それはそれでいいと我々は思っています。しかし地域の現実は、地域を支える主体はあれど、‘隙間’が存在し、その‘隙間の処理’を見過ごしている状態。既存の主体が担えれば良いのですが、業務量の都合もさることながら、その‘隙間’に存在する課題の難解さは、なかなかのものです。ゆえに中間支援機能を担う組織が求められ続けるのでしょう。