毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第50話(idea 2023年5月号掲載)
「農村RMO」と「地域協働体」は‵上手に連携’すべし
「農村RMO」と「地域協働体(=地域運営組織=RMO)」に関しては、正しい理解ができていない状況では、「似たような組織をいくつ作るんだ!」という声が聞こえてくるのが目に見えています。そこで、第48話・49話に引き続き、農村RMOの取り扱いについて検討していきます。
農村RMOと地域協働体をそれぞれで設立すると、確かに二重構造になってしまいます。まして、高齢化や人口減少により担い手が少ないという現実を抱えているわけですから、似たような組織を、行政の都合(縦割り)で新たに設立する状況は避けたいところです。48話で触れているように、どちらも「集落規模の縮小」という課題に対して、「集落規模を拡大し、地域内の各種団体や住民と連携することで、支え合いの仕組みを構築していく」ということが目的であり、`組織の設立’が目的ではありません。これからの時代の「支え合いの仕組み」の構築です。形式上、`組織’になってしまいますが、言い換えるなら「円卓会議をする場(組織)」でしょう。
一関市では、市民センター単位で「地域協働体(地域運営組織)」を組織し、「地域づくり計画」に基づいて、地域振興や支え合いに通じる活動、産業の活性化などに取り組んでいます。地域協働体によっては、部会制を取っており、例えば産業に関する部会は、新たな産業創出を目指したり、農業や林業、獣害に関することなど、`農村集落機能の維持’を目的とした事業(円卓会議)を行っています。そのため、農業関係団体・者が部会の構成員になっていることが多く、農村RMOの原型ができていると言えます。部会がない地域協働体でも、「地域の円卓会議の議題」として農業に関することを取り上げる(議論する)ことは、農村RMOの原型に近いです。
このように、既にある地域協働体に、農村RMOの`機能’を追加することで、二重構造を生まず、地域の課題として農業や農村振興に関する共有や議論をすることができます。
ここで注意したいことは、`農家’`非農家’です。「なぜ非農家が農家の支えをしなければいけないのか」と思う人もいると思いますが、農村RMOは`農業支援’ではなく、`農村集落の暮らしに対する取り組み’を取り扱います。つまり、収入に関係する‘農業’だけではなく、集落の環境整備や高齢者支援などを「農家非農家関係なく、みんなでやっていきましょう」ということです。「多面的機能支払交付金」に取り組んでいる集落(組織)の場合、その`地域拡大版’と置き換えると、イメージしやすいかと思います。
地域協働体では、高齢者福祉や安心安全に関することなどに既に取り組んでいます。新たに農村RMOを設立し、同様の取り組みを行うと、地域住民にとっては`負担の上乗せ’であり、無駄な動きにもなりかねないため、「地域協働体に農村RMOの機能を組み込む」ことが理想です。
昨年8月に農村RMOに関する研修会を開催した際に、「地域協働体に農村RMOの機能を追加すると、中山間地域等直接支払交付金や多面的機能支払交付金のお金も地域協働体のものになってしまうのか?」という質問をいただきました。機能を共有し、`中山間や多面的でできないことを地域協働体が補完する’という考え方なので、事業自体は別ものです(環境整備等の従来の事業はそのまま)。ですから、環境整備等における人件費など、中山間や多面的の従来の事業費(交付金)を地域協働体に入れる必要はありません。農村RMOとして事業をするならば、農村RMO事業費や地域協働体の事業費をはじめ、各種補助金や助成金が活用できます。
また、中山間や多面的も事務局の担い手が課題となっていますが、`機能の共有と補完’という視点から考えれば、事務能力がある人に中山間や多面的の事務局を手伝ってもらうことも可能になると考えられます。狭域の集落では人材不足でも、広域で見ると一定量の人口が確保され、その中には様々なプレーヤーがいるからです。
人口減少時代に備えたRMO(地域運営組織)は、全国各地で増加傾向にありますが、文化活動や高齢者の生活支援を目的としたものが多いように感じています。「農業」「農村」「農地」に関する活動は、一関の地域協働体を見ても事例は少ないです。このままでは中山間地域の農地や農業、住民の生活といった「農村集落機能」の衰退が、ますます進行してしまう恐れがあります。農地や農業の課題もみんなで共有し、地域協働体と農村RMOの機能を上手に使いながら、集落の機能維持に努めていきましょう。