2023年7月7日付けで法人化し、現在名称は「一般社団法人 いちのせきニューツーリズム」となりました。
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田植え作業を体験する教育旅行で来訪した子どもたち。
(idea2019年5月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
平成23年3月設立。教育旅行をはじめとする農村体験の機会を提供する窓口として活動している。
◆住所:〒029-3105 一関市花泉町涌津一ノ町29 一関市役所花泉支所3階
◆電話:0191-82-3111
「着地型観光」とも表現される「ツーリズム」。高度経済成長期以降に巻き起こった「レジャーブーム」とともに、旅行会社などの「出発地側」がパッケージ化した団体旅行商品が普及しました。大型バスでのツアー旅行等が人気になりますが、家庭への自動車の普及が進むと、個人や家族をベースとした旅行の割合も増加。ニーズの多様化とともに、観光の形態もまた変化していきました。
そんな中で、需要が高まっていったのが農山漁村地域において自然や文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動である「グリーン・ツーリズム」です。平成4年に農林水産省に研究会が設置され普及が始まります。これまでの旅行商品と異なり、「着地側」の地域特性を活かしやすいことから、地域活性化につながるものと期待され、各地で導入されていきました。
その後、健康増進・健康回復を目的とした「ヘルスツーリズム」、自然・歴史・文化など地域固有の資源を活かしながら、それらの適切な保護・保全をはかる「エコツーリズム」など、様々な「テーマ型観光」が登場。物見遊山的な観光旅行に対し、それらテーマ性が強く、体験や交流の要素を取り入れた形態の旅行を、観光庁が平成19年に「ニューツーリズム」と表現し、より一層推進されるようになりました。
そして平成23年3月、地域資源を活かした教育旅行及び着地型観光による交流人口の拡大と、それによる地域活性化を目指し、「いちのせきニューツーリズム協議会」が誕生。
今回は発足当初から同協議会の会長を務める後藤定幸さんに、会の取り組みや現状、活動の魅力についてお伺いしました。
同会の事業の中心となっているのが「教育旅行」の受入れです。中学・高校の修学旅行をはじめ、各種研修旅行などの窓口となり、来訪者に体験メニューを提供したり、宿泊先となる受入れ農家を調整します。
後藤さんは会長でありながら、自らも受入れ農家として来訪者を迎えています。受入れ農家歴は13年。というのも、後藤さんは同会の発足以前から、「花泉町グリーン・ツーリズム推進協議会」の一員として受入れを行っていました。平成23年当時、両磐地域には約10の受入れ団体がありましたが、それらの窓口を一本化することで、より広く受入れができるようにと発足したのが「いちのせきニューツーリズム協議会」なのです。その過程では、内部体制の構築や、方向性の統一に時間がかかったそうで、後藤さんは現状を「種をまいて、ようやく芽が出てきたような状態」と表現します。近年は受入れ農家同士の交流会なども企画し、受入れ農家自身が積極的に事業に関わってくるような機運づくりにも力を注いでいます。
教育旅行とは別に、個人等に向けた「農泊(民泊)体験」にも力を注いでいる同会では、平成30年9月に民泊施設として「またきたい」をオープンさせました。民泊新法の施行に伴い、一関市滝沢に空き家を借り、同会職員が「隊長」として同施設で暮らしながら、宿泊者を受入れています。オープンから半年で延べ70人程が宿泊しているとのことで滑り出しは上々。
教育旅行も含め、こうした旅館やホテルではなく、民家に宿泊するという体験は、「人と人との関わり」であり「迎えてくれる人がいる」ということに意味があると後藤さんは言います。「昔は〝教え語り〟と言って、家の仕事を手伝う中で祖父母等から〝やり方〟だけでなく〝知恵〟とか〝善悪〟を教えられたんだ。農泊にはそういう要素があるし、他の家庭で言われたことは不思議とずっと残る」さらに受入れ農家の魅力としては「奥さんとの会話が生まれることかな。共通の話題ができる」と、笑いながらも現実味ある回答が!
来訪者にも受入れ側にも〝刺激〟を創り出す「ニューツーリズム」。現在約100戸の受入れ農家数を150戸程に拡大することができれば、300人規模の学校も受入れることができるようになるとのことで(現在の戸数では200人程が限界で、大規模校の受入れが難しい)、受入れ農家を常時募集しています。非農家でも受入れ可能ですので、その魅力を体感してみてはいかがでしょうか。
ごとうさだゆき
後藤定幸さん
花泉町油島在住。花泉町グリーンツーリズム推進協議会の顧問も務める。水稲農家であり、古代米を練り込んだ「しゃぶしゃぶ」用のおもちを開発、好評販売中。
まつおかちかこ
松岡千賀子さん
一関市在住。平成25年から同会事務局員スタッフとして市内の農家を訪ね飛び回る。
楽しさを練り込んだ企画を開発中。
1泊2日が多い教育旅行ですが、短時間とはいえお別れの際は寂しいもの。時には手紙をもらったり、思い出をかみしめます。
市内や近隣地域の市民向けに開催し、好評を博している企画。市内の各種企業・工場などを見学する貴重な機会です。
市内滝沢にオープンした「またきたい」は昔ながらの一軒家。庭にはヤギがおり、来訪者を癒しています。
海外からの来訪者も増えているため、受入れ農家向けに各種セミナーも開催。折り紙や巻き寿司なども喜ばれます。