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(idea 2021年11月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
「デコパージュ」という技法の一つである「シャドーボックス」の習得を目指し、令和2年1月に結成。現在は大東町内在住の7名の会員がおり、毎月第4日曜日の午前中、情報交換を行いながら制作活動を行う。
※同会への連絡は摺沢市民センター(0191-75-2229)へ
「シャドーボックス」は、紙に描かれた模様や絵の切り抜き(通称「プリント」)を複数枚用意(複製)し、コーティング剤を使って塗り重ねていく工芸です。同じ「プリント」7~10枚をパーツごとに切り分け、それらを何層にも重ねていくことで、立体絵画として3次元の世界に再構築することができます。この技法はヨーロッパで生まれ、その後アメリカに伝わり、発展しました。
そんなシャドーボックスについて「平面であるはずの写真や絵をパーツごとに数枚重ねることで奥行きや影をつくり立体的に見せる技ですが、作る人の感性によって同じ作品でもまったく違った作品に仕上がるというところが面白みの一つ」と語るのは、シャドーボックスの制作・魅力発信に取り組む「まい・あーと」代表の千葉弘子さんです。
同会発足のきっかけは、令和元年に摺沢地区文化祭の中で開催された「シャドーボックス特別展」。大東町摺沢地区出身で千葉県在住の加賀みき子さんによる展示会です。加賀さんは20年ほどシャドーボックス制作に携わり、国際フォーラムや新国立美術館にも出展するほどの実力者。数年前に開催された同窓会で話題となり、同級生の勧めを受け、生まれ育った故郷での展示会が実現しました。
特別展では、作品の展示のほか、初心者向けの制作ワークショップ(体験会)も開催され、約20名が参加。そのワークショップで出会い、市内では馴染みの薄いシャドーボックスに「魅了された」と意気投合した7人が翌年に結成したのが同会です。
「個人の趣味としてシャドーボックスを制作している方はいるかもしれませんが、団体として活動しているのは市内で唯一ではないでしょうか?」と千葉さん。団体結成にあたっては「まったくの初心者の集まりで、道具さえも何を揃えればいいのか分からない状況でスタートした」と言います。
体験を通して「シャドーボックスを続けてみたい」と感じたものの、続けるにあたって必要となったのが講師の存在。団体を結成した大きな目的はそこにあり、結成当初は加賀さんを千葉県から月に1回講師としてお呼びし、学んでいこうと計画していました。
ところが……。結成間もなくして世の中が新型コロナウイルス一色となり、県をまたいでの往来の自粛が求められる中で、千葉県在住の加賀さんを岩手県に呼ぶことが難しい状況に……。
そこで同会が現在講師の加賀さんにお願いしているのが、LINE(ライン)を利用した動画指導です。加賀さんに見本となる作品を郵送してもらった上で、その制作のポイント等を収めた動画をLINEで共有してもらい、その動画を見ながら各々が自宅などで作業を進めます。そして月に一度だけメンバーが集まり、「『こうすると立体感がでるよ』『この道具を使うと便利よ』と、お互い情報交換をし、協力して個々の作品を仕上げている」のだとか。
現在の目標は「摺沢市民センターが今年度開催する『地区文化祭』への出展」とのことで、現在はその仕上げに取り掛かっている真っ最中です。
本格的な作品だと、1作品を仕上げるまでに、約2~3か月程度はかかるというシャドーボックス。立体感を出すためには、切り貼りの作業だけではなく、「プリント」に専用の道具を用いて丸みを待たせ、影を作ることが重要なのだとか。そうすることでより豊かな表情と奥行きを演出し、オリジナリティーが増すと言います。
代表の千葉さんは「団体としての活動が浅いことや、現在はコロナ禍の影響もあり、地域内外での交流や指導は見合わせているところですが、近いうちには個々のレベルも上げて活動の輪を広げ、シャドーボックスの魅力を伝えていきたいと思っているところです。また、簡単なものだと2時間程度で仕上げることも可能で、集中力の使い方や作品を仕上げるという達成感、細かい手作業ということから認知症予防などにも効果があるのではと感じています。サロン活動などで取り入れたら良い刺激になるのでは」と、今後の積極的な活動展開も視野に入れています。
現在、活動の見学や出展依頼は事前に問い合わせがあれば対応可能とのこと。今後の活動に期待が高まります。
ちば ひろこ
千葉 弘子さん
初めて出会ったシャドーボックスに大感激。額縁も含めて一つの作品なので、作る楽しみ、飾る楽しみ、贈る楽しみを味わっています。
A.集中することで楽しさが出来る
きくち あきひこ
菊池 昭彦さん
メンバー唯一の男性。手先が器用でペーパークラフトが趣味。作品を仕上げるための小物や道具などに詳しくメンバーの頼れる存在。
A.日常のストレスから解き放されて‘無’になる
保存会から寄贈された太鼓。限られた人しか叩くことができない「大太鼓」を演奏することが、演者たちの夢です。
切るも貼るも集中力が必要!集まって制作する時も、基本は個々の作業。同じ作業でも人によって出来上がりが異なります。
同じ絵柄を複数枚使用し、各パーツを細密に何層にも切り重ねることによって、立体感が。小箱を額として使用します。
団体結成のきっかけとなった加賀みき子さんの作品とともに、常設展示。間近で見るとその魅力に引き込まれます。