※お願い※
記事内の写真や資料は、当情報誌での使用について許可をいただいて掲載しております。
無断での転載などの二次利用はご遠慮ください。
(idea 2020年4月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
一関市民センターを拠点に、月2回(第2・第4土曜)の例会で練習を重ね、主に市内の幼稚園や子育て支援の場で、子どもや親子を対象にした公演を年4回程開催しています。
TEL 090-9532-6317(事務局千田)
写真:2月に行った「三びきのこぶた」公演後の集合写真
「俺様の鼻息で吹き飛ばしてやる。そーれ『ピーッ』」「わー、助けてー」舞台では狼がわらの家を吹き飛ばしている真っ最中。今日の演目「三びきのこぶた」に、子どもたちの目は釘付け。狼の人形が客席に乱入しそうな勢いで大暴れすると、子どもたちのテンションも最高潮に……。
こうして公演が大成功に終わった「人形劇ラビット(以下ラビット)」ですが、時計の針を1日巻き戻すと、そこには何もない会場に、暗幕を吊るすパイプの枠を組み立て、地道に舞台と客席を設営する会員の皆さんの姿が。50分ほどかけて出来上がると、次はリハーサル。本番を想定してセリフや動きのタイミングなどを確認します。「三びきのこぶた」のキャストはナレーション役を含めて5人ですが、人形を持たないメンバーにも、楽器演奏、効果音、大道具などの役割があります。
ラビットの代表である只野博子さんは、客席から全体を見て、時折気になった点を伝えながら指導し、会員同士も「こうした方がいいんじゃない?」と意見交換。最初のリハーサルでは改善点が多かったものの、当日の開演前も含め5回以上のリハーサルを経て、次第に仕上がっていく様子を、取材を通じて目の当たりにしました。
今回は「練習をして、作品を作り上げていく過程が活動の楽しさ」と語る只野さんに、ラビットのこれまでとこれからについてお話を伺いました。
ラビットの結成は平成11年。「ボランティア活動の一つの方法として、人形劇の人形作りから劇の制作までを学習し、実際に施設を訪問して発表する」という講座の修了生有志が週2回の例会や施設・幼稚園の訪問公演等を主な事業に据えて走り出しました。出来立ての人形劇サークルだったので「当時は発表先を求めて、会員が幼稚園などに出向いていた」と只野さん。「布や生地を持ち寄って人形を自作したり、舞台の大道具や幕を支える枠(支柱)も、設計を考えて手作りした。一関文化センターで公演した際には、背景の布に絵を描いて作ったこともある」と振り返ります。
作った人形は少なく見ても50体以上。傷んで作り直したものもありますが、設立当時からの20年ものの人形もあるのだとか。
そんな活動の一方で、転勤や健康・体力的な理由などで徐々に会員が抜けていき、活動規模も縮小していきます。東日本大震災で沿岸の人形も流されたと聞いた時には「人形をそちらに譲ってラビットはお終いにしようか」という話も出たそうで、只野さん自身の思いも揺れたそうですが、最後は続けたい思いが勝り活動を継続することに。
そんな中、平成29年にラビットが活動拠点としている一関市民センターで、新たに人形劇入門講座が開設され、ラビットが講師を務めることに。参加者のひとり、佐藤慶子さんは「(ラビットの)2人の講師に丁寧に教えていただき、人形に触れて興味がわいた。まるで人形が息をしているかのようで舞台が広がって見えた」と講座を振り返ります。
この講座をきっかけに修了生ら8人がラビットに加入、息を吹き返す形に。只野さんは「最終的に2人での活動になっていた私たちと、倉庫で眠っている人形たちに活躍の場を与えたいという、市民センターの配慮があったのではないか」と、講座が開設された背景を推察し、感謝していると語ります。
昨年1年間、8人プラス只野さんという体制で活動してきたラビット。しかし、只野さんは、今年度限りで会を退くことを決意しています。「1年前に辞めるつもりだったが、1年間新しいメンバーの活動を見守りながら伝えられることを伝えようとしてきた。今後はラビットとして使ってきた人形たちをうまく生かして使ってくれたら」と語る只野さん。ボランティア精神に基づき、人形劇を通し豊かな心と文化的な地域づくりに貢献するというラビットの思いと、愛着のある人形たちを後進に繋げられた安堵感。そして一抹の寂しさを胸に、最後のオリジナルメンバーが静かに人形を置きます。
これからは個性豊かな新しいラビットが、話し合い、協力し合って練習に励み、出番を待っていた人形たちと共に、元気一杯に飛び跳ねていきます。
ただのひろこ
只野博子さん
ラビット創設時からの生え抜きメンバー。新メンバーの活動を見届け、今年度限りでの退会を決意。
さとうけいこ
佐藤慶子さん
人形劇入門講座で興味がわきラビットに参加。「子どもたちのつぶやきや笑顔がとてもうれしい」とニコリ。
公演は人形劇の舞台づくりから。暗幕を吊るす枠も手作りで、演者・大道具などの役割関係なく、みんなで準備します。
人形劇の定番。あらすじを知っていても、子どもたちは人形の動きに目を輝かせ、夢中で人形劇の世界に入り込んでいます。
舞台裏を覗いてみると、ナレーションのセリフが手書きで大きく書かれた紙を発見。出番待ちの間もチェックを怠りません。
ラビットで使う人形は手作り。倉庫には20年の間に作られた数多くの人形たちが、出番を待っています。