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(idea 平成26年10月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
会長:氏家 平(たいら) さん
連絡先:〒029-0202 一関市川崎町薄衣平松225
電話:0191-43-3039
国道284号線の川崎小学校付近から千厩町磐清水に向かう道の左手に、庭木のように立つ3本のアカマツ。その姿が広げた傘に似ていることから「薄衣の笠マツ」と呼ばれ親しまれています。この笠マツを長い間にわたってお世話してきたのが「名木笠松保存会」です。
※“かさまつ”は団体名では漢字表記ですが、地域では“笠マツ”というように、漢字と片仮名を組み合わせた表し方をするそうです。
「笠マツは川崎のシンボルです。知り合いが訪ねてくれば先ずは笠松へ案内し、その見事な姿を紹介しています」と氏家会長さんは語ります。
笠マツのある場所は川崎町薄衣柏木地内。そこは外山東部行政区に属し58戸約200人が暮らす中山間地で、氏家会長さんは外山東部行政区長を務めています。この松には「見越しの松」の異名もあり、案内板にはこのように記述されています。むかし、藩主伊達公がいたく気に入り、青葉城内に移植することを望んだ。しかし、移植が困難なことを承知していた家老が、「如何に名木と言えども、一介の路傍の木に過ぎぬ。御館にはそぐわない」と進言して諦めさせた。
名木笠松、3本の古木と周囲の7本の幼松も含めて昭和51年に岩手県指定天然記念物に指定されました。それまでは、近くの人達の集まりである「笠松親類」が手入れをしていたそうですが、天然記念物に指定されたことを契機に、行政区全体による保存会が発足しました。
当時を知る浦上さんは「保存会は発足したものの活動資金の不足が大きな悩みでした。まずは労力を提供しようと部落全体で取り組みました。その後、県から補助金をいただくようになり活動が充実してきました」と語ります。10年ほど前から、保存会の会長は行政区長(=自治会長)が兼務することになり、自治会の中に笠松保存部を設けて活動しています。
会の活動は、会員総出による年3回(6月、7月、10月)の下草刈り、木に負担をかけないために実取り作業を6月に行います。また、松くい虫防除のための農薬散布を年に3回行っています。そして、木を元気にするため発根剤を根元に散布するなど古木をやさしくいたわるように行われています。
地域の皆さん方でお世話してきた笠マツでしたが、1号木の衰弱が顕著となり伐採しなければならなくなり、伐採を前にした7月13日にお別れ会を行いました。慣れ親しんだ笠マツの最後の姿を目にとどめたいと大勢の皆さんが集まって別れを惜しんだそうです。「生あるものは寿命がある。その一瞬に立ち会えたことはうれしいことです」と会員の菅原さんは語ります。
約600年もの間地域の変わりゆく姿を見続けた笠マツ。別れを惜しみ書かれた寄せ書きには「幾百年の歴史を刻みし笠松の人々の思いを残し今 ここに終わらん」の言葉がありました。
伐採された松は、川崎支所の新築に合わせた活用や地域の子ども達がペンダントにするなど、笠マツは姿を変えてこれからも地域の様子を見守ることでしょう。