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自治会住民で組織する多面的機能支払活動組織での農道草刈り終了後集合写真(令和4年9月)
(idea 2023年1月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
行政区は「前畑」。30戸104人(6班体制)が暮らす(20歳以上が自治会の構成員)。自治会の副会長は区長が兼務し、集落内の各種団体長と4部会(納税・環境衛生・自主防災・体育文化)の部会長が自治会の運営委員となる。部会と横並びで前畑農家組合がある。
前畑集落は、一関市興田市民センターから3㎞ほど北西に向かった場所に位置する中山間地域で、かつては果樹と酪農が盛んでした。平成20年には「恋ふじ」というリンゴの新品種を自治会住民が商標登録し、今も栽培を続けています。
平成元年、当時の大東町が自治会の組織づくりや運営の強化対策(国の「ふるさと創生事業」の一環)を打ち出したことを受け、平成4年、前畑集落内に「前畑振興組合(老人クラブ・婦人会・農家組合・行政区長・納税組合・前畑農業振興組合・同志会の各代表で組織)」が発足。
前畑集落民の交流促進及び研修等のための多目的集会施設として「前畑コミュニティセンター(以下、自治会館)」を新設し、地域農林畜産の振興に寄与することを目的に組織された同会では、自治会館を活用した集落内の農林畜産振興策等の検討が進められました。
平成5年、自治会館が完成し、目的が一つ達成されたことを受け、組織の在り方などを再検討することに。平成9年、納税組合を部会として吸収し、「前畑自治会」へと改組。農家組合は部会と横並びの組織となり、婦人会は解散、その他の団体は独立組織のまま存続させました。
「小さな集落ですが、目的がそれぞれ異なる複数の団体が存在しているので、少しでも住民の負担を軽減すべく自治会設立当初から合同総会としています。自治会は各種団体の連絡調整的な役割も担っていますからね」と語るのは、自治会長の千田清記さんです。長きに渡り事務局も務めていた千田さんは、「自治会館ができたことは集落の最大の出来事だった」とその歴史を振り返ります。
自治会館建設翌年(平成6年)からは、自治会館を会場に「部落祭(盆踊り大会)」を実施。自治会に改組してからは体育文化部が中心となり、8月に企画運営してきましたが、平成16年からは、「さなぶり」を兼ねて6月に変更しました。「春祭り(通称)」として行いますが、自治会運動会や自主防災部企画(避難訓練と消防署からの指導)も同日開催にしており、交流を深めつつ、防災への意識向上にもつなげます。コロナ禍で春祭りは中止が続いていますが、「いつでも再開ができるように予算は毎年組んでおり準備は万端です!」と事務局の武田祐一さん。「やるとなったら、とてもまとまりのある集落です」と千田さんも続けます。
まとまりの良さが活かされ、平成20年10月、自治会館が建つ土地を自治会として所有すべく、「認可地縁団体」の認可にこぎつけました。同自治会にとっての誇りの一つです。
昭和40年代、集落を離れた若者が地元に帰って来た時につぶやく「ここには何も楽しみがない」という声。そうした声をきっかけに、地元の若者らで立ち上げたのが「同志会」です。立ち上げ当初の名称や正確な立ち上げ年度は不明ですが、現在の区長や自治会長の親世代が立ち上げたとされ、現在も続いています。
「その頃は娯楽が少なく、せっかく帰省した若者も集う機会がありませんでした。そこで、地元にいる若者がお盆期間中の飲み会(前述の盆踊り大会の前身となるイベント)の企画や、秋には豊年祭(芝居屋を集落に呼んだ)を企画し集落を盛り上げたものです」と語るのは、区長兼自治会副会長の武田誠さん。その盛り上げは、都会に行った若者の呼び水ともなり、Uターンも多くあったのだとか。「自治会館ができてからは『毎月第4日曜日は同志会の集い』と設定し、定例の交流を行ってきました。現在では自治会役員やその他集落内の団体役員等の多くが同志会メンバーなので、その日を集落内各種団体の連絡調整会議日としても位置付けています」と続けます。
また、近年は夕方からの同志会の集いに合わせ、午前中から何かしらの自治会事業(環境整備作業等)を組み合わせています。「参加する負担が軽減され、情報も共有できるので一石二鳥です」と、微笑む千田さんが「さ、そろそろ同志会の時間です」と案内してくれたのは自治会館前の東屋。「暖かい時期はあの東屋でバーベキューをします。この集いをこれからも続けることができるように、我々は次の世代と良く交流しながらバトンタッチしていきたいですね」と、「同志」たちとの交流を楽しみながら、今後の自治会運営への抱負を語ってくれました。
ちだ せいき
千田 清記さん
5期9年目。平成5年から19年間事務局として尽力した後、自治会長へ。「先代が築き上げた集落の和を今後も大切に引き継いでいきたい」と語ります。
A.和
たけだ ゆういち
武田 祐一さん
5期9年目。コロナ過で様々な事業が中止となったものの、来年には「春祭り」の復活を期待。自治会の活動は「みんなが楽しく」がモットーです。
A.楽しく
自治会のみならず、各種団体の活動拠点。毎月第4日曜日は「行けば何かある日」。写真は令和4年の同志会BBQの様子。
近隣集落も含めて穀物が集まる農繁期。乾燥調整は他者の穀物と混合することがないように、1軒ずつ作業しています。
昭和60年に設立した「農業振興組合」は、後継者問題を解決すべく、大東町内でもいち早く集落の農業を共同化しました。
住民間で継承されてきた「権現舞」。「南部大権現」とともに舞で使用する道具は座元と呼ばれる宿(民家)で保管します。