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令和元年度のふれあい花壇整備後の集合写真。若い世代も参加している。
(idea 2020年6月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
2行政区からなり、6班ずつの12班体制で75戸約280人が暮らす(高齢化率は約38%)。集落内には金沢小学校との統合で廃校となった旧刈生沢小学校があり、刈生沢コミュニティセンターとして同集落が管理(指定管理者は金沢ふるさと協議会)。
豊かな農村風景の広がる刈生沢。昔から草木が生える沼沢地であったため、多くの動物がすみ、狩人が生活していたのだとか。狩人は山に多数生息していた猪をこの沼地に追い出し、刈生沢の滝に追って獲っていたということで、地名の由来として「狩人にとっては暮らしよい沢=狩沢」が「刈生沢」になったという説があります。また、「刈る生る」とは、草などを刈ったあとに再び芽生えることを指すそうで、「菅(スゲ)」などが群生していた沢だから、という説も(髙橋龍夫『ふるさと花泉』参照)。どちらにせよ、自然豊かで、かつ、その自然と人間が共存してきた集落ということが読み取れます。
江戸末期からの屋敷も数軒あるという歴史ある地域であり、今でも美しい田園風景を眺められる一方、農家組合員でありながら非農家住民が増えていることで、「14年後には農家組合はなくなる」という試算もある同集落。さらには区長の成り手が見つからず、一時区長不在期間が発生してしまったという現実的課題も。
集落として守るべきものと、時代に適応させていくべきものとを少しずつ整理し始めている刈生沢集落の現状や改革について集落のみなさんに伺いました。
集落内には2つの行政区があり、4‐1区を上刈生沢、4‐2区を下刈生沢としています。集落公民館の組織体制は館長、副館長、会計、事務局がそれぞれ原則1名ずつ。そこに上・下それぞれの農家組合長が監事として加わるほか、推進委員として集落内の各種団体の長が加わるというスタイル。集落公民館長は上・下の輪番制ですが、副館長が館長に上がる仕組みなので、館長になる人は自動的に4年は役員を経験することになります。
実はこの体制になったのは9年前。以前は「10年一人前」と言われたほど、館長は複数期に渡って再任するのが当たり前でしたが、そのプレッシャーによる成り手不足が懸念されたため、原則1期制へと改革。ただし、全員が新任になっては運営がままならないため、館長と副館長をスライド制としました。同時に役員手当も大幅に増額し、「名誉職」という認識だけでは務まらなくなってきた時代に適応させたのです。
また、改革は会計と事務局にも。長期にわたり会計・事務局を担当してくれた人がいたものの、その結果として「集落公民館が何をしているかわからない」という地域住民の声が聞こえ始めていました。そこで、会計と事務局を若い世代に任せ、集落公民館事業に対しての免疫をつけてもらうことに。この時、ただ単に「若い人に任せる」では成り手を確保できないので、急きょ各戸の「世帯主ではない息子たち」を招集!自分たちで担当する順番を決めさせました。「来なかった人は欠席裁判と言ったら後継者のいる家からほぼ全員の約30人が集まった」とのことですが、その時に決めた順番に則り実際に若い世代が役に就いています。
半ば強制的に集落公民館事業に関わることになった若い世代ですが、「青年部」として活動補助費も予算化されており、本人たちが何か事業を起こしたいという機運になった時にはいつでもバックアップできる体制が取られてます。
年間の事業は複数の要素を上手に組み合わせて開催している同集落。元旦には歩け歩け大会の終了後、ゴール地点にて新年交賀会が。年祝いも兼ねるため、老若男女が参加します。ほとんどの人がご祝儀を持ってくるため、ご祝儀と引き換えに番号が書かれたティッシュを渡し、それが抽選会へとつながるという仕組みもユニークです。どんと祭は消火訓練と救命救急講習を兼ねていますし、集落の一大イベントである豊隆神社奉納秋祭り(実行委員会主催)は集落公民館祭りとの同日開催とすることで盛大に開催します。
その一方で、花壇整備に関しては縮小させていっているとか。本来は地域振興が目的だった事業ですが、整備に参加する人・家が固定化してきたことで、逆に住民の関係性が悪くなることを懸念しての動きです。小さな変化を敏感に捉え、対応していく力は、狩人だった先人たちから受け継がれているのかもしれません。
かねたまこと
金田誠さん
集落公民館長としては1期1年目ですが、副館長からスライドしているため役員歴は2期3年目。仕事・農業・館長業とをこなしています。
ささきさち/なる
佐々木紗千ちゃん・菜留ちゃん
コミュニティセンターの鍵管理を行う佐々木家は3世代同居。3姉妹の次女・紗千ちゃんは金沢小学校1年生。三女の菜留ちゃん(3)は昆虫採りに夢中!
月に1回の介護予防教室(刈生沢右脳いきいき教室)と週イチ倶楽部(刈生沢週イチ倶楽部)を導入しており、積極的に展開中。
老人クラブが30年近くに渡り作り続けている門松。コミュニティセンター前にも飾られ、新年交賀会を盛り上げます。
集落として開催するどんと祭は旧刈生沢小学校の校庭にてお焚き上げし、その後は消防署職員の指導の下で消火訓練です。
各種行事の際には集落公民館長がカメラ係を務めるのが暗黙のルール。その写真は市民センターまつりでも掲示します。