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「まがれっと倶楽部」が開催した「曲田マルシェの様子」(令和4年7月)
(idea 2023年4月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
行政区は「21区」。旧藤沢町の西南に位置し、上曲田、下曲田、山谷の3小字に分かれる(山谷地内に「岩手サファリパーク」が立地)。行政区としては49世帯100人強が暮らすが、うち14世帯はサファリパーク宿舎であり、実質の自治会員は35戸。
南は宮城県登米市、北上川を挟んで花泉町日形・永井地域にも隣接する曲田集落(以下、曲田)。北上川上流狭隘地区に入っており、平成29年に堤防(輪中堤)が築造される前は、水害が頻発していました。「台風の時は、水が上がるかどうかの瀬戸際でいつもヒヤヒヤした。平成14年の台風では、舟を使って避難したよ」と振り返るのは曲田自治会副会長の佐々木晴男さんです。
築堤後は、集落内への浸水はめっきり減りましたが、その一方で10戸が曲田集落外へ移転しました(移転対象の14戸のうち4戸は曲田内に移転)。そのため、同自治会では平成29年4月に班体制を9班から7班に再編成。事業にも支障が生じます。
「10戸減ると全然違う、あの時が転換期」と語るのは、自治会長の鈴木良久さん。昭和49年に自治会が発足して以来、約40年続けてきた「曲田ふれあい運動会」を中止とするなど、自治会活動を見直さざるを得なかったと言います。
昭和48年に集落内にあった曲田小学校が閉校し、平成29年に築堤で小学校の空き校舎解体とともに戸数が大幅減、しかし平成20年には集落内に「岩手サファリパーク」がオープンするなど、変化の半世紀を過ごし、今があります。
同集落内には北上川を横断する「花藤橋」が架かっており、毎年8月上旬(お盆前)に全世帯で「花藤橋清掃」を実施しています。橋の縁石に溜まった泥を除去したり、各家庭一人以上は参加する一大事業です。
「平成4年の花藤橋開通で曲田の行動範囲がぐっと広がりました。花泉方面に出かける時は、北上川橋がある七日町まで遠回りを余儀なくされていたので。自分たちにとっても大事な橋なので、自分たちで綺麗に維持していこうという思いで平成5年頃から始めました」と振り返る佐々木さん。維持管理の意味合いのみならず、自治会員が対面で顔を合わせる貴重な機会でもあります。
「曲田老人クラブ」と共催する「防犯教室」は毎年11月に実施。近年は藤沢地域交通安全対策協議会の会長などから、特殊詐欺対策や交通安全に関する講話等をいただき、防犯意識向上の機会としています。
こうした事業は、自治会全体で年間行事を計画し、実施。鈴木さんは、「人口規模に対して、自治会や関係団体の役の数が多いと感じる。複数の役を担う人も多く、現行の組織体制などを見直す時期にきているかもしれない」と、今後の課題を語りつつ「でも、事業の際は、特に苦労することなく皆さんが自然と集って参加してくれます。曲田の団結力には定評がありますから」と誇らしげな笑顔も見せます。
なお、隣接する中山自治会・小日形自治会と3自治会で「曲田地域自治会協議会」を組織し、花藤橋のたもとにある「曲田地区ふれあいセンター」の指定管理も受託(平成18年~)するなど、集落を越えた連携も。その他、藤沢地域全体で行われる事業にも参加・協力しています。
自治会と横並びで、集落内に各種組織がある曲田では、それぞれに特徴的な取り組みがあります。「まがれっと倶楽部」はその一つで、「曲田営農組合」から派生のグループ。令和4年4月に結成し、ふれあいセンターの庭で「お母さんたち」が持ち寄ってきた野菜を並べ「曲田マルシェ」を開催しました。地域内外(県外含め)からのお客さんで賑わい、曲田を知ってもらうきっかけにもなりました。
また、「曲田営農組合」でも令和4年秋に「曲田だいこん祭り」を開催。曲田の大根には定評があったことから、基盤整備終了後の畑10aで大根を栽培すると、「大根詰め放題」企画を開催し、地元住民の好評を得ました。
「まがれっと倶楽部は女性陣自ら会の結成やマルシェの計画を行い、のびのびと活動しているようです。自治会とすれば、『地域のためにこれをやりたい』という活動を後方でサポートするという姿勢です。自治会関係者と各団体のメンバーが重複していることも多いので、おのずと地域一体なんですよね。館ヶ森エリアの観光施設やイベントを目的に年間20万人程はこのエリアを訪れているので、そういう方々が立ち寄ってくれる工夫も今後は必要かと思っています」と、鈴木さん。各種資源を活かし、地域住民がイキイキと暮らすための土台を維持していきます。
すずき よしひさ
鈴木 良久さん
1期2年目。約10年間自治会役員を務めた後、自治会長へ。普段は藤沢地域の地域協働体「藤沢町住民自治協議会」の事務局として勤務しています。
A.輪
ささき はれお
佐々木 晴男さん
2期4年目。庶務を経て副会長へ。8年間自治会役員を務める中で、「長年住んでいても知らなかったことが多いと気付けた」と振り返ります。
A.和
「曲田の大動脈」と表現されるほど、生活には欠かせない花藤橋。1年間で溜まった泥などを丁寧に取り除きます。
築堤のために解体された旧曲田小学校。その門柱がふれあいセンター付近に移築され、その歴史を後世にも伝え続けます。
治水事業によって水害の頻度は減少しましたが、現在も平成14年台風第6号の記憶は住民の間で語り継がれています。
花壇植栽作業の様子。花藤橋の周辺は宮城県からの往来も多く、「岩手・一関市の玄関口」として花壇作りも念入りです。