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民区内で初めて実施した敬老会の様子(令和2年度)
(idea 2021年1月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
一関市厳美町の本寺地区と奥州市衣川に隣接する第7民区(行政区名は厳美7区)は、40戸140人ほどが暮らす中山間地域です。部会はなく、区長、山谷上農家組合、山谷上農業共済組合、班長(7班体制)で民区内の事業を行っています。
40戸中、専業農家18軒、兼業農家18軒と住民のほとんどが農家という第7民区。水稲のほか、リンドウの栽培にも力を入れています。「この地区は一級河川の山谷川があるから美味しいお米が作れる」と開口一番に話すのは区長の佐藤昌悦さんと農政推進員(旧農林連絡員)を務める佐藤宗雄さんです。
民区としての主な取り組みは、春の観桜会と冬の新年会、春・秋の一斉清掃や集会所周辺の草刈りなどといった環境整備ですが、3行政区(5・6・7区)で組織する「山谷振興協議会」としての活動も。3地区が共同で使用する厳美市民センター山谷分館周辺の草刈りやサロン交流会、収穫祭などの事業が協議会としての事業です。
さらに民区内には小字規模で2つの親睦会(釜ノ沢・菅生沢)があり、それぞれ活動。昌悦さんは、「民区としての活動は少ないが、昔からの名残でいわゆる部落での活動があり、逆に民区を越えた協議会の活動もあるなど、何かしらの形で住民との交流や繋がりがあることは自慢」と笑みをこぼします。
平成27年頃から始まった「観桜会」。毎年4月下旬に山谷川近くにある桜の木の下で行われますが、実はこの行事、民区内へ新たに移り住んできた人がきっかけで始められました。
民区内には様々な活動があるものの、移住者が気軽に参加できるような場がなかったため、地域のことや住民の人となりが分からず、なかなか地域に馴染めずにいたのだそうです。その方が班長を務めることになった際に、「地域の人と交流がしたい」という想いを伝えてくれたことから「お互いまずは人を知りましょう」という意味で企画されたのが「観桜会」です。
「長年この場所で暮らしてきた住民の繋がりは自然と構築されていたが、移住してきた人が気軽に交流できるような機会はなかった」と振り返る昌悦さんは「移住してきた人だけではなく、夫婦共働きや兼業農家の増加などで住民同士が話をする機会が以前より少なくなってきたと感じていたので、今がタイミングだと思い、企画した」と、長年暮らしてきた住民にとっても必要な企画だったと語ります。
参加者からの会費に加え、農家組合からの補助もあり、飲み物や仕出し弁当のほか、郭公団子も並ぶなど、少ない負担で賑やかな宴を愉しむ観桜会。子どもからお年寄りまで30人ほどが参加する同民区の一大イベントに成長しましたが、今年はコロナ禍ということで止む無く中止に。2人は、「来年こそは桜を見ながらみんなと会話を楽しみたい」と来年の春に期待を寄せます。
今年は新型コロナウイルス感染症の影響で一関市主催の敬老会が中止に。そこで同民区では、民区独自の事業として敬老会を初開催しました。
厳美地区福祉活動推進協議会の会長も務める昌悦さんは、民区独自の開催と米寿を迎えた4人のお祝いをしたことについて「何歳になってもお祝いされることは嫌なことではない。急遽の開催ではあったが、お祝いされる側も祝う側も感染対策をしながら参加してくれて良かった」とコロナ禍における開催が成功したことに安堵します。
また、毎回15人ほどが参加する「7区元気いきいきサロン」は月に1回の開催。元気なお年寄りが多く、80歳前後の参加者が中心となっていることから、「80歳前後の集まりの中に60代の人が来ても、お嫁さんとお姑さんのような関係となってしまうため、話が合わない。世代ごとに集まれる場をつくることも検討したい」と今後の展開も考えています。
福祉分野に力を入れる一方で、深刻化している鳥獣被害への対策にも力を入れ始めた同民区。国の鳥獣被害防止総合対策交付金及び多面的機能支払交付金などを活用し、今年の秋に民区内の全ての田んぼへ電気柵を張りました。
宗雄さんは、「特に最近は猪の被害が多く、猪に踏まれた稲は匂いが酷いため出荷もできない。住民のほとんどが農家なので、被害が続くようであれば生活にも支障が出てくる」と対策の必要性を強調します。
自然豊かな土地だからこその苦悩はありながらも、住民同士が交流できる機会の創出、そして民区住民の様々な節目を「みんなでお祝いする」という姿勢を大切にしながら、今後も丁寧な民区運営に励んでいきます。
さとうまさえつ
佐藤昌悦さん
区長は4期8年目ですが、地元から離れなかったため、若い時から区民活動に参加。
「お酒の繋がり」も大事にしています。
A.地域との繋がり
さとうむねお
佐藤宗雄さん
定年退職後、専業農家へ転身した宗雄さんは、農業組合長も兼務。鳥獣被害に頭を抱えながらも、民区内の農業をサポートしています。
A.清流の里
自然と生まれる一列のフォーメーションで、急な傾斜の草をあっという間に刈っていきます。
年に2回の実施です。
11月のサロンは保健師を講師にお招きし、「心と体の健康」について勉強。その後は軽い運動で一汗流しました。
成人のお祝いと、厄年を迎える人の厄払いは、新年会を兼ねて行われ、若い人が参加してくれる貴重なイベントです。
観桜会は女性たちにも楽しんでもらうため、料理はすべてお店で購入。少しでも負担を軽減する工夫が施されています。