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(idea2023年月4月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

くらし調査ファイル№21「年(歳)神様の迎え方②」

 「松飾り」や「しめ縄」など、「御年(歳)神様(以下、年神様)」をお迎えするための風習は、当地域でも多くの家庭・地域で行われていますが、「年神様をお迎えするための習わし」という意識ではなく「お正月飾り」として行っている家の方が多くなってきているのが実情。前号では当地域における実態や地域性の有無などをご紹介しましたが、今回は「しめ飾り」を深掘りしつつ「松の内」と呼ばれる期間について整理してみました。       

(記載内容はあくまでもセンター独自調査の結果)

 

■地域差がみられる「松の内」

 「年神様信仰」として、家の入口や門に松を立てたり、しめ縄やしめ飾りを戸口に張る(あげる)風習が当地域でも見られます(前号参照)。

 

 年神様の依り代としての松を立てている期間は「松の内」と呼ばれますが、この期間には地域差が見られます。

 

 まず、家の入口に立てる木(松・杉・栗・竹など)を調達する必要がありますが、地域によっては必要な木を伐りに行くことを「門松むかえ」などと称します。この「門松むかえ」の日を文献で見比べると『山目史』が12月25日、『一関市史』の舞川地区、『真滝村史』が12月28日、『一関市史』の厳美地区、『室根村史』『門崎村史』が12月30日、『一関市史』の萩荘地区、『磐清水村史』が12月31日……と、ばらつきがあります。

 

 一般的に、29日は「二重苦」を連想させるため縁起が良くないとされ、31日は大晦日に急ごしらえで準備をすることが神様に失礼である(「一夜飾り」)と言われます。そのため、28日や30日に「門松むかえ」をする家が多いようです。

 

 また、しめ縄作りも同時に行われますが、舞川地区の場合、28日に「門松むかえ」はするものの、しめ縄を作り、門松を立てるのは30日と記載されています。

 

 なお、前述の日にちはあくまでも町史等の記載であり、28日が仕事納めという人が多い現代においては、29日を避け、30日に準備をする家が多いのではないかと推測します。

 

■年神様がお帰りになる日

 

 では、「松の内」の最終日はいつかと言うと、年神様がお帰りになる日、すなわち依り代である門松を撤去する日です。

 

 当地域では「どんと祭(焼き)」などと呼ばれることが多い「左義長(さぎちょう)」は、門松やしめ飾りなどの正月飾りを神社の境内や道祖神の近くで焚き上げる「火祭り」ですが、この時の煙に乗って年神様はお帰りになると言われています。

 

 当地域における「どんと祭」は、概ね1月15日前後に行われており、当センターの行ったヒアリング調査では、「どんと祭」の当日または前日に撤去すると答えた人が多かったですが(40人中32人)、7日や11日(鏡開き)に撤去するという人も実感としては多いように見受けられます。

 

 なお、15日の門松撤去の際には「門松を倒し、栗の木を立て、カツの木で花を作って栗の木につける(『萩荘史』)」、「早朝門松を取り除き、松葉をとりて祈祷をなし、若水を迎え松納め粥を炊き神様に供える(『室根村史』)」など、撤去と連動した風習がある地域も(あくまでも文献上)。

 

 ヒアリングにおいては、「どんと祭」ではなく、「氏神様に納め、自然に返す」という回答もありました。

 

 

当地域の「どんと祭」

 今回の調査でヒアリングを行った人の多くは、「松の内」期間に使用したしめ飾りなどはどんと祭に持って行くと回答(38人中26人)。居住地に近い神社(≒氏神神社、産土神社)が行う『どんと祭』に持って行くパターンと、「所属する自治会等が行う『どんと祭』に参加する」というパターンが多いようです。

 

 「氏神様に納め、自然に返す」という回答もありましたが、花泉町老松の「御嶽山御嶽神明社」の佐藤宮司によると、しめ飾りなど、昔の正月飾りは「土にかえるもの」だったので、各家の氏神様に納めて(焼くわけではない)終わっていた家も少なくはないとのこと。 

 また、一般的に年神様は「煙に乗って帰る」と言われますが、当地域においては、年神様が「田の神様」という考えもあり、「松の内」が終わると、田んぼの水口にお祀りし直すという家もある(あった)ようです。

 

 「年神様を煙に乗せて帰す」という考え方の広がりで「どんと祭」が集落レベルでも行われるようになったのか、「土にかえらない素材」も使用されるようになったために「どんと祭」が必要とされたのか、当地域における「どんと祭」の普及経緯は定かではありません。

 

 

しめ飾り」を深堀りしてみた

 

 前号で、当地域における「しめ飾り」は、西磐井地域では「牛蒡じめ」、東磐井地域では「サゲ付きのしめ縄」が多い傾向があるという調査結果をご紹介しました。市販品を購入する家庭も増えていますが、「しめ飾り」を手作りするための講座を毎年開催している地域も。その1つ、一関市曽慶市民センターで開催された「しめ縄づくり教室」に参加し、「サゲ付きのしめ縄」の作り方を教えていただきました。 

 

 「サゲ付きのしめ縄」とは、しめ縄に「サゲ(フサ)」「紙垂(シデ)」、松の葉を挟み込んだしめ飾りです。

 

 「紙垂(シデ)」とは、榊の枝や串、しめ縄に垂らす紙片(かみかた)を指し、串(棒)に紙垂を挟んだものが「御幣」です。様々な形がありますが一般的な吉田流という切り方が4つの長方形が垂れたような形であることから、「四手」「四垂」と書いてシデと読むことも。

 

 東磐井地域では、現在も手作りの「サゲ付きのしめ縄」を飾っているという家が少なくありません(手作りされたものをいただいているという家含め)が、見た目は同じように見えても、その作り方は様々。地域性というよりも、各家(=人)流という傾向が強い印象です。

▲曽慶市民センターで開催された「しめ縄づくり教室」
▲曽慶市民センターで開催された「しめ縄づくり教室」
手作りしたしめ縄
手作りしたしめ縄
手作りしたしめ縄

 曽慶市民センターで開催された「しめ縄づくり教室」では、興田地区在住の小山文吾さんを講師に「縄ない」の工程から開始。藁が手に入りにくくなった現代においては、購入した藁を使用することも。うるち米の藁よりももち米の藁の方が長いため、昔はもち米の藁を使用することが多かったとか。

 

 「サゲ付きのしめ縄」は「七五三縄」とも呼ばれ、縄から垂らす「サゲ」の場所を「七筋・五筋・三筋」にしていましたが、この仕様だと現代の玄関には飾ることができない(大きすぎる)ことが多いため、それぞれの玄関に合わせて適宜アレンジしているようです。

 

小山文吾さん流

さげ付きのしめ縄の作り方

 

※しめ縄の作り方は各家庭の流儀があり、正解があるわけではありません!

各家・地域で受け継がれてきた流儀を大切にしてください。

 

27~30本の藁を束ね、霧吹きなどで湿らせ、たたいて柔らかくする。それらの束を合計6束用意し、2束ずつ、麻紐等で結ぶ。この時、根本側の太い方を中央に向け、根本側同士を結ぶ。

※2束ずつ結んだものが3セットできている状態。

1セット目のそれぞれの束(図のA・B)を同じ太さで2つに分け、分けたそれぞれの束を右に撚り(より)ながら左に綯って(なって)いく

わら細工や草履などの日用品に使用する縄は、右に綯っていく「右縄」だが、しめ縄は逆に綯った「左縄」。 

 

 

 

 ←実際の縄目

「左縄」の1本目ができた状態(C)。中央(根元部分)から端(穂先部分)に向かって細くなっている。

 

2セット目、3セット目の中央部分を重ね、麻紐等で結ぶ。今度はそれぞれの束(DとE、FとG)を1セット目と同じ要領で右に撚りながら左に綯っていく。※Cよりも太い左縄ができる(H)。

 

左縄が2本完成(CとH)したら、この2本を合わせて綯っていく

Hの中央部分にCの中央部分を合わせ、Cを巻き付けていくイメージ

 

←↑この時左にも綯っていくが、Hの筋の3の倍数筋にCが収まるように巻き付ける幅を調節する。

長さが足りなくなったら、藁を継ぎ足して綯うことも。きつく巻いていかないと、サゲや紙垂が落ちてしまう。

はみ出た藁を見栄え良くカットしたら完成。サゲなどを挿す。

 

 

サゲ・紙垂・松をつける場所

小山さん流では、サゲ(フサ)・紙垂・松をひとまとめにし、縄の筋と筋の間にねじるように差し込む。差し込む場所は、中心を決め、そこから「1、3、5、7」とします(上図参照)。

串で固定すれば完成!

 

<参考文献(Webサイト)> ※順不同

小岩浩一郎/千葉庄松(1955)『萩荘村史』/一関市史編纂委員会(1977)『 一関市史 第3巻各説Ⅱ』

室根村史編纂委員会(2004)『 室根村史 下巻』/大原役場(1931)『大原町誌 上巻』

萩荘文化協会/萩荘編さん委員会(1991)『萩荘史』

真滝村誌復刻委員会 蜂谷 艸平(2003)『復刻 真滝村誌』

門崎村(1956)『門崎村史』/磐清水村編纂委員会(1957)『磐清水村誌』

津谷川公民館(1966)『郷土史(民族)』

監修/服部幸慶(医学博士・服部栄養専門学校校長)・市田ひろみ・山本成一朗/発行者/納屋嘉人(2006)『ニッポンの名前 和の暮らしモノ図鑑』

監修/谷田貝公昭/共著者/長沢弘ひろ子/本間玖美子/高橋弥生(2006)『イラスト版子供の伝統行事 子どもとマスターする40の行事●その由来とやりかた』

編者/飯倉晴武(2003)『日本人のしきたり』

編者/田中宣一・宮田登(2012)『三省堂年中行事事典〈改定版〉』

著者/森須磨子/編集/田辺澄江(2017)『しめかざり 新年の願いを結ぶかたち』

※著者/福田アジオ・菊池健策・山崎祐子・常光徹・福原敏男(2012)『知っておきたい 日本の年中行事事典』

 

<取材協力>

大東町 小山 文吾さん 

大東町 曽慶市民センター

東山町 岩渕 松雄さん

 

その他、調査にご協力いただいたみなさま、ありがとうございました! 

↓実際の誌面ではこのように掲載されております。

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