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(idea2024年12月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
1999年に国のレッドリストで絶滅危惧2類に指定された「キタノメダカ」「ミナミメダカ」は、品種改良された種が野外に放たれた故に交配し、遺伝子汚染も問題視されています。かつては一関市内の水田にもメダカが生息していましたが、全国的に野生のメダカが貴重な存在となった昨今、メダカと田んぼを共存させる取り組みによってメダカが棲みやすい環境を守り続けている団体があります。 (記載内容はあくまでもセンター独自調査の結果です。)
■日本のメダカ
日本には江戸時代中期以前から「メダカ」を鑑賞する文化があり、その後「金魚」の鑑賞が流行、20世紀頃からは「熱帯魚」が注目され、21世紀に入ると「メダカ」ブームが再来し、様々な種類のメダカが品種改良されてきました。
田んぼなどでよく見かけていた、古くから日本に生息する在来のメダカを通称「クロメダカ」と呼んでいましたが、現在では遺伝子解析が進み「キタノメダカ(主に青森県~兵庫県の日本海側に生息)」と「ミナミメダカ(主に岩手県太平洋側~兵庫県西側の日本海側に生息)」の2種類であることが分かりました。
■なぜレッドリストに?
県が作成している「レッドリスト」とは、県内の野生動植物の状況に関して絶滅のおそれのある種をリスト化したもののことで、数が多かった種が減少した場合のみ追加されていき、もともと個体数が少ないものは対象になりません。岩手県に存在するミナミメダカは「絶滅危惧2類※」に分類され、その他の地域でも絶滅の危機に瀕している状況です。
※ 岩手県が作成した「レッドリスト(2024年度版)」での分類。絶滅危機が増大している種で、現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、近い将来「絶滅危惧1類(絶滅の危機に瀕している種)」へ移行することが確実と考えられるもの。
メダカが減った原因について、「(一社)久保川イーハトーブ自然再生研究所」の佐藤良平さんによると、「農薬などの使用でメダカが棲める環境が無くなったという見解もあるが、メダカの減少に農薬などが直接関係しているのかどうか、明確には分かっていない」とのこと。
また、「昔の田んぼは土側溝でメダカが産卵できる水草もあったが、現在は三面張りのコンクリート側溝となって水の流れも速くなり、メダカが水路から田んぼへ行き来ができず、繁殖が難しくなっている」という理由も考えられるそうです。
近年は休耕田(休耕地)も多く田んぼが干上がっていること、農薬を減らした田んぼにアメリカザリガニが増えメダカの脅威となる外来種が生活しやすい環境になっていることなど、様々な原因が重なり、メダカが減少していったと推測されます。
◆実際にメダカがいるか調査してみた!
8月に開催した、当センター主催「いちのせき市民フェスタ24」に参加された方へ、市内でメダカを実際に見たことがあるかどうかのヒアリング調査をしたところ、平成10年頃までは田んぼの水路などでメダカを見たことがあると答えた人が複数人いました。
しかし、今回の調査では、平成10年以降でメダカを見たと答えた方がいなかったため、実際に調査してみました!
<調査場所>
花泉町涌津にある田んぼの用水路
メダカは発見できたのか…!?
タナゴの赤ちゃんや沼エビなどは見られたもののメダカの発見には至りませんでした。メダカは臆病で警戒心が強いため人影を見ただけでも隠れてしまいます。個体数が少ないこともあり、自然界での発見はとても難しくなっているのかもしれません……。
「メダカ」が棲みやすい環境
ヒアリング調査の情報からメダカが目撃された場所の現地調査を行ったものの、残念ながらメダカの発見には至りませんでした。それでは、メダカが棲みやすい環境とは具体的にどのような場所なのでしょうか?
「メダカ」という名前は「目が高い位置にある事」から由来し、水面に落ちてくる虫や、浮いているボウフラを探して捕食しています。
水温が高い場所を好むため、水深が浅く水が温まりやすい田んぼで生育しやすいと言われており、夏場の水温が30度近くなる田んぼは他の魚にとって生活できない環境となりますが、メダカにとっては天敵も少なく快適に過ごせる場所となります。季節によって生活する場所が変化し、寒い時期には水深の深い場所で過ごすのが特徴です。
メダカが棲みやすい条件は?
「水温が高い」
「田んぼへ繋がる」
「流れが速くない」
「水草がある」
「天敵が少ない」
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メダカにとっての「天敵」
外来種の存在がメダカの数を減らす原因にもなっています。外来種に捕食されてしまうことだけでなく、外来種が「生育環境を変化させてしまう」ことによる影響が大きいです。
右の解説を読むと、アメリカザリガニさえ抑えれば……と考えがちですが、アメリカザリガニの天敵となる「ウシガエル」や「オオクチバス」も外来種。
その場所に生息する動植物を調査し循環図を把握することが大切で、それをしないまま外来種に対抗しようと外来種を放ってしまっては、悪循環に陥ってしまいます。
外来種
アメリカザリガニの場合
①水草を食べるため、獲物を捕まえやすくするために、水草を刈り取ってしまう。
↓
②メダカやその他水生生物は水草に産卵するため、水草が無いと繁殖できなくなる。
↓
③食物連鎖の循環が崩れ、水が濁って光が届かず水草が生えなくなる。
↓
④アメリカザリガニしかいない環境に……。
メダカが棲みやすい環境を守るため
取り組んでいる団体が一関にもある!
農事組合法人 門崎ファーム
同法人は一関市川崎町を拠点に、メダカやホタルが棲む豊かな環境を保全するとともに、次世代へ継承し農業の担い手育成を目指しています。
稲作を行いながら、下図のようにメダカが田んぼ→水路→田んぼへ帰る仕組みをつくり、また、越冬できる枡を整備してメダカの循環を図っています。
メダカ水路の泥上げ作業とアメリカザリガニの駆除を行う門崎ファームのみなさん。
<参考文献・論文(Webサイト)> ※順不同
金子美智雄(2002)『消えゆくメダカと水辺の自然』
岩手県.「レッドリスト(2024年度版)について」.https://www.pref.iwate.jp/kurashikankyou/shizen/yasei/rdb/1074861.html(2024/11/12)
環境省.「何が問題なの? 水草、全部切る!?」.https://www.env.go.jp/nature/amezari_mondai.html(2024/11/12)
【調査協力者】
一般社団法人 久保川イーハトーブ自然再生研究所 佐藤良平さん(一関)
農事組合法人 なつかわファーム(花泉町)
NPO法人 北上川サポート協会(川崎町)
農事組合法人 門崎ファーム 藤江修さん(川崎町)
市内のみなさん
その他、調査にご協力いただいたみなさま、ありがとうございました!
↓実際の誌面ではこのように掲載されております。