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(idea2019年8月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
外を散策していると、何気なく歩くことがある「石段」。公園、山道、お寺など…
意外と各地で見かける石段ですが、数ある石段の中でも市内で1番段数が多い石段は一体どこなのか!?気になったスタッフが聞き込みと現地調査をしてきました
※記載内容はあくまでもセンター独自調査の結果です。多少の誤差や調査漏れ、順位の変動等はお許しください。
市内で1番段数が多い石段」についてスタッフが各地でヒアリング調査を行ったところ、有力候補として名前が挙がったのは山目字館にある「配志和神社の石段」でした。情報によると、石段の段数はなんと400段以上!
この段数を超える石段がないか各地域で情報を集めましたが見つからず…。そこで、市内で1番段数が多い石段は「配志和神社の石段」を独自調査の結果とし、現地調査を行ってきました。
神社の宮司さんに許可をいただき、下記の図の要領で、神社入り口を計測のスタート地点とし、手動式カウンターで1段ずつ登りながら段数を数えていきました。最初は緩やかな傾斜で足元も広く楽々と登ることができましたが、後半は勾配が急になり途中で息が上がるほど。
石段はきれいに清掃され、木々の木陰で涼しく、調査中には何度も往来する参拝客の方を見かけました。
ちなみに、石段を徒歩でゆっくり登ると7分弱かかり、片道の石段部分の距離は約340mありました。
神社の石段が造られたのは、1687年(江戸時代前期)と記録されています。中里村の住人で木材の卸売りや鉱業の経営で財を築いた豪商 の阿部随波(あべずいは)氏の寄進(※)により、それまでは土がむき出しで歩くことが不便だった参道に石段が構築されました。
その後、石段は時間の経過と共に劣化し、凹凸に緩み歩きにくくなったため、地域から募った寄付により昭和初期からコンクリート階段を整備。コンクリートの普及に伴い、明治以降は配志和神社のほかにも参道をコンクリートに整備する神社が増えていったそうです。
(※)お寺や神社に物品を寄付すること
【写真】整備のために取り外した石段は、本殿正面の階段と石畳に再利用し、昔の名残としています。
石段造りを請け負ったのは、当時赤荻村にあった石工屋さんだと伝えられています。「山目史」によると、天明(1871年~17891789年)の頃に京都から落ちのびた石工の隠れ職人が赤荻の屋敷に仮泊した際、付近の山を探索したところ良質の石が多くあることを発見。以後、職人は赤荻に定住し、地元の方々に石工の技術を伝え、職人を育成。当時は「赤荻の石工集団」として地域に名を馳せたそうです。
当時の赤荻の石材は、両磐地域をはじめ、遠くは出羽三山(山形県)の石段にも利用されたと伝えられています。
トラックや重機などがなく、石の移動は全て人力だった昔。石工職人達はできるだけ少ない力で石を運ぶため、目に触れない石の内部をこっそりと削り、石の重さを軽くして運んでいたという裏話も。配志和神社にある石にもその形跡が見られるそうです。
【写真】参道の途中にある石碑のひとつ
今回、現地調査した石段の多くはコンクリートに造り替えられていましたが、このコンクリートに所縁のある一関市出身の阿部美樹志さんという方をご存知でしょうか?
阿部さんは明治16(1883)年に現在の磐井町に生まれ、札幌農学校を卒業後に鉄道作業局に就職。その後、農商務省海外練習生としてアメリカで鉄筋コンクリート工法を学び帰国してから日本に初めて鉄筋コンクリートを導入しました。国内主要都市などの高架鉄橋や映画劇場、デパートなどを設計し、一関では旧一関市役所庁舎や旧一関小学校講堂等を設計。当時、一関の方は彼を自慢の心と畏敬の念を込めて「コンクリート博士」と呼び、今は一関市の偉人の一人になっています。
【写真】
「勲二等瑞宝章受章記念」の時の阿部美樹志さんの写真(「コンクリート博士 阿部美樹志伝」より転載)
調査の過程で市外の石段情報も探ってみると、日本一段数が多い石段は熊本県下益城郡美里町にある「日本一の石段(釈迦院御坂遊歩道)」で段数はなんと3333段でした!
今回のテーマは「石段」でしたが、ほかにも調べてみたい「市内で1番」のテーマがあれば、今後の自由研究でご紹介していきます。
石段をよく見ると、上面が平らではなく斜めに、右端には補修したような線のある石段があります。ここは、管理者不在の時に舗装工事が始まり、後で拡幅し、直した跡なのだそうです。
【写真】参道入口付近の石段
〈取材協力〉
配志和神社 宮司 岩山芳憲さん
〈参考文献〉
①山目史を作る会(1993)『山目史』②NPO法人一関文化会議所(2015)
『一関地方ゆかりの人物事典』
③藤原忠司(2018)『コンクリート博士 阿部美樹志伝』④配志和神社誌編集委員会(2018)『配志和神社誌』