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記事内の写真や資料は、当情報誌での使用について許可をいただいて掲載しております。
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(idea 2020年4月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
さっそくですが…
市内各地で突撃訪問取材させていただいた軒数は30軒超。
とても誌面にてご紹介できる数ではないので、ご紹介できなかった松は「ホームページ内にて公開」と誌面に記載しました。
本来であれば誌面に掲載した文章を先に載せるところですが、「誌面で紹介されていない情報を見たいんだ!」と言うかたのために、「【本誌こぼれ記事】門かぶり松ギャラリー」として別ページを作成しました。本誌掲載外の内容はそちらをご覧ください(^^)/
↓以下は本誌掲載内容です。
市内をあちこち回っていると、時折目につく「枝が横に長く伸びた松」。造園用語で「門かぶり松」と呼ばれるそうですが、簡単にはできないであろうことから、それぞれの「門かぶり松」には何かしらのエピソードや、深い愛情が注がれているに違いない!…そんな素人の憶測から、市内各地の「門かぶり松」があるお宅に突撃取材をし、「門かぶり松」の深い世界を少しだけ覗いてきました。
※記載内容はあくまでも当センター独自調査の結果です。
常緑であり、長寿であることなどから、縁起の良い木として庭木に好まれていた松。また、日本庭園においては、庭の景観の趣を出すために植えられる「役木」としても重宝されてきました。その「役木」の一つに「門かぶり松」が挙げられます。
厳密な定義があるわけではないですが、狭義では枝を左右どちらかに伸ばし、門の上(門の代わり)に伸ばしたものを、広義には門の場所に関係なく、横に長く仕立てたものを「門かぶり」と呼ぶようです。また、松の仕立て方は大分して「直幹」「曲幹」「斜幹」に分けられますが、斜幹仕立てのものを「門かぶり」と呼ぶこと(人)もあるようです。
屋根つきの門が格式高い家にしか許されなかった時代に、民衆の間で「門かぶり松」が広まったという説もあるようですが、当地域で見ることができる「門かぶり松」はあくまでも「庭に趣を出す存在」として植えられたものが主流であるようです。
▲「浦しま公園」にも斜幹仕立ての松が
(一関大手町)
▲室根町折壁・村上さん宅
今回の調査にあたり、当センターのスタッフが各自の担当地域において門かぶり松を探し(聞き込み&目視)、合計34軒のお宅にお邪魔させていただきました。もちろん各お宅によって門かぶり松を仕立てた経緯などは異なる中で、大きくまとめると以下のようなパターンに分けられました。
【門かぶり松に仕立てた経緯】
① 「縁起が良い」等の理由で造園屋に勧められたから
② 植木が好きで、門かぶり松に憧れがあったから
③ 何かしらの記念樹(シンボルツリー)として
①の場合は,すでに門かぶり松用に仕立てられた松を購入するパターンが多いようですが、②③の多くは「山から実生の松をとってきた」「海に行った時に思い出として持ってきた」「畑に生えてきたものを移植した」等、かなりワイルドな方法で松をゲットしていることが判明(今は法に触れる場合もありますのでくれぐれもご注意を)!自己流で仕立てているという人が調査したお宅の約半数で、さらにその半数は先代が仕立てたものを見様見真似で継承しているというパターンでした。
◀一関南町・阿部さん宅。植木が好きだった先代が、家と合わせて庭を造り、床の間から見える位置に1本目を、翌年、門の位置にも門かぶり松を植栽。
【樹形のこだわり】
① 造園屋さんにお任せパターン(手がける庭師の好みが反映される)
② ひたすら長さを追求(左右どちらか/左右両方)
③ 樹形を優先して一定の長さに詰めていく
松は1年に30cm程伸びるとのことで、枝の長さが10mを超えているお宅も多数!
その結果、せっかく伸ばした枝に車がぶつかって折れてしまったというような切ないエピソードもチラホラ。盆栽や植木そのものが好きという方は③のパターンが多いように見受けられました。
◀一関弥栄・渡辺さん宅。100年以上前から門かぶり仕立てとのこと。手入れをする庭師も何代か移り替わっているものの、それぞれにお任せコース。
◀一関厳美・佐々木さん宅。子ども会で遊びに行った思い出に、40年程前に某海岸からいただいてきた松を自己流で門かぶり仕立てに。
当初は調査結果をもとに、門かぶり松の樹形等を勝手にジャンル分けし、ランキング的にご紹介しようと考えておりましたが、それぞれに個性があり、優劣をつけられるようなものではなかったので、当センターのホームページ内において、調査で撮らせていただいた門かぶり松の写真を公開しております。エピソードとともに、ぜひお楽しみください! コチラのページ
奥が深い松の世界!取材先や造園屋さんに教えていただいた「基本のキ」です。
▲黒松のミドリは白いのだとか。
松の新芽(春芽)はミドリと呼ばれ、このミドリが梢となり、そこに針葉が生え、数年後に葉が落ちて枝になるという仕組み。そのため、仕立てものの松においては、5月~6月にかけて行う「ミドリ摘み」が必須。仕立てる樹形に応じてミドリを摘み取ります。
ミドリの摘み取り方(=梢の残し方)によっては、左のような細かく屈曲した樹形を作ることができます。また、11月頃に行う「もみあげ(すかし)」という作業も重要とのこと。
枝を伸ばしていくと、風雪から守るための支柱(挿し枝と呼ぶ人も)が重要に。竹などを用いますが、添えることで枝が伸びやすくなるとのこと。また、巨木化してきたら「頬杖支柱」という地面から枝や幹そのものを支える支柱も有効。
◀東山町長坂3区内のお宅
松は基本的に直幹であり、曲がっているものは人為的に曲幹にされていることが多いとか。その場合は樹齢10年位の頃(直径10㎝程度の頃)から、少しずつ(3~10年程かけながら)樹形を作っていくとのこと。
◀東山町長坂1区内のお宅
調査をする中で出会った病気にやられてしまった松たち。
外材の流通の影響で松の病気は増えているのだとか……。
◀ 幼少期の後藤新平(胆沢出身の政治家)が何か悪さをしてこの松に縛られたとして「後藤新平懲らしめの松」と呼ばれているという樹齢350年超の立派な門かぶり松。岩手日日にも過去に数回取材されているというこの松も、マツ材線虫病(俗称:松くい虫/松枯れ)によって現在はこのような立ち枯れ状態に。「自分に気のゆるみがあったのかもしれない」と本当に悔やまれている様子。(一関舞川・斎藤さん宅)
▲「謡いの文句の中に『相生の松』という文言があり、それを名称として看板をつけた途端に枯れてしまった」という切なすぎるエピソードのあるこの松は、たまたま2本生えてきた実生の松を、上に伸びないようにしていたところ、それぞれが干渉しないように上手く横に伸びてくれたのだとか。そのうちの1本がマツ材線虫病で枯れ、残っている1本も中に虫が入っているとのことで、枯れるのも時間の問題とのこと……。 (花泉町涌津・今野さん宅)
樹木は葉からの光合成で生きていて、松も同様。過度に葉を薄くしてしまうと、光合成ができず弱くなる。手入れのバランスが病気に負けない元気な松にするポイント。弱ってきたら手入れを休んだ方が良い時も。全体的に黄色くなってきたら要注意!早めに専門業者に相談しましょう!
↓実際の誌面ではこのように掲載されております。