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(idea2017年3月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
「きゃあどさではっと おっかねぇごどあっとおもって よっぽどきぃつけなはりゃせ」
とある記念品でいただいた湯飲み茶碗に書かれていた方言の標語。
みなさんどんな意味かわかりますか?
さっそく答えです。上記の標語は「道路(街道)に出ると 危ないことがあると思って よほど(かなり)気を付けてくださいね」という意味です。寒い時期、雪が降り道路がツルツルに凍っていると運転が怖いですよね!本当に標語の通りです。ところで“道路がツルツル”といえば、1月のある日「今日、すごい“たっぺ”だったね」という私の言葉に、スタッフ全員が「“たっぺ”って何?」と言うのです。「常用しているのは我が家だけ!?」と急に不安が。そこで!「同じ一関市内でも地域によって方言の違いがあるのか!?」を検証すべく、例によって100人以上の地域の方にヒアリングを行うことに。調査では右上のイラストのような画像をお見せし(口頭での説明は「路面がツルツルに凍っている状態」程度)、「それを方言で何と呼ぶか?」を尋ねました。
【結果①】ダントツに多いのはやはり…たっぺ
今回の調査※の内、「路面がツルツルに凍っている状態」についての回答割合は、「たっぺ」が55%とダントツ。以下「わからない」「特にない」が25%、「テカテカ」「ツルツル」などの表現が12%、「アイスバーン」が4%、「その他の表現(すが・はしる・すみでる など)」が4%の順となりました。方言として浸透しているものは「たっぺ」のみのようです。
【結果②】「たっぺ」の認知境界線が判明!?地図と年代に見る境界線
たっぺ認知率(たっぺと回答した人の割合)は旧東磐井郡で86%(84人中72人)に対し、旧西磐井郡では7%(55人中4人)と大きな差が。少なくとも「たっぺ」については東西で境界ができた形になりました。
さらに、旧東磐井郡でたっぺと回答した人の割合を年代別に見ると、年齢が高いほど認知度が高い傾向が見られ、60代以上のたっぺ認知率は100%という結果でした。
その他、「花泉地域では田んぼや水たまりに氷がはることを“たっぺ”と表現する」というご意見や、「稲刈り後の“ほんにょ掛け”と“はせ掛け”の境界線と同じなのでは」との興味深い情報もありましたが、残念ながら今回は検証しきれませんでした。
方言について書かれた本によれば、明治の初め頃までは、役人、医者、和尚などの特別な人を除いた一般の人たちは、読み書きを習う機会がなく、日常の暮らしの中から生まれた言葉が、伝承により次世代へ引き継がれてきたそうです。
この言葉こそが“方言”であり、話しことばですから、文章として書き表すのは非常に難しいもの。後世にも方言を残すには、文字としての記録とともに、実際に使うことで伝承していくことが大切なのかもしれませんね。
(参考:菅原幹郎(2011)『千厩地方の方言となまり~方言は地域住民の温かい道具~』)
※この結果はあくまでも当センターの独自調査によるものです。イラストはヒアリングの際お見せした画像を基にスタッフが作成しました。
※実際の調査では冒頭の標語を含め、4項目の質問をしています。詳しい結果はこちらに掲載しておりますのでぜひご覧ください。