(idea 2022年1月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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きくしん!ちゃんねる‼ YouTubeのトップ画像
当市在住(住所非公開)のYouTuber(ユーチューバー)。自動車関連の職歴を活かし、乗り物を切り口にした動画で人気を博す。2021年9月にはチャンネル登録者数が5万人を超え、347万回以上の再生回数を誇る動画も。 YouTubeチャンネルリンク⇒(https://bit.ly/3quwMwF)
対談者 You Tuber きくしんちゃんねる さん
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹
近年注目を浴びる「ユーチューバー」。動画投稿サイト「YouTube」に動画を投稿し、その収益を生活の糧にしている人などを指します。「進研ゼミ小学講座」が小学生会員に実施した「なりたい職業」に関するアンケート調査※1によると、男子では2位、女子では4位に「ユーチューバー」が。「ユーチューバー」の実態とはどのようなものなのでしょうか(2回シリーズの前編)。
※1 令和2年11月に小学3~6年生の会員7661人に実施した調査。
小野寺 きくしんさんは本業がユーチューバーということですが、そもそもユーチューバーに定義はあるんですか?
きくしん 大きく分けると「ユーチューブを配信している人」「ユーチューブで生計を立てている人」「ユーチューブタレント」の3つに分けられます。ユーチューバーと聞くと、ヒカキンさん※2のような自らが動画に出演している人をイメージしがちですが、実際のユーチューバーは、動画に自らは出演しない人の方が圧倒的に多いです。僕も画面には基本的に映らず、声だけの出演です。
※2 HIKAKIN。日本の人気ユーチューバーで、複数のチャンネルを持ち、その合計登録者は1800万人以上。
小野寺 ユーチューブで生計を立てているという線引きでいくときくしんさんは?
きくしん 「チャンネル登録者※3」が1千人、年間の動画再生時間が4千時間を超えると広告収入が発生します。いわばプロになるということで、僕もその点ではプロのユーチューバーです(笑)ユーチューブを始めて3年目くらいで生計を立てられるようになりました。
※3 気に入った「YouTubeチャンネル(動画を公開しているアカウント)」に「登録(無料)」することで、そのチャンネルで新たな動画が公開されると通知が届くようになったり、当該チャンネルに辿りつきやすくなる。
小野寺 収入を得られているユーチューバーというのはどれくらいいるんですか?
きくしん チャンネル登録者が1千人を超えるのはユーチューブに動画を投稿している人の10~15%程度と言われています。僕は5万人を超えていて、上位0・5%くらい=日本での5千位くらいには入っているらしいです。
小野寺 かなり底辺の広いピラミッドなんですね。ユーチューバーにはなりたくてなった?
きくしん そうです、お金欲しくて!(笑)楽しいことしてお金稼げるって夢あるなと思って。
小野寺 そういうイメージがありますが、実際には?
きくしん ユーチューブに投稿した動画は全部データ管理されてるんです。どの動画のどの部分をどういう視聴者に見られているのか……、全て見ることができます。そのデータを見ながら戦略を練るんですが、「視聴回数を増やしてお金を稼ぐ動画」「チャンネル登録者数を増やすための動画」「自分のブランド力を高める動画」という3つに分けて考えて、その割合などを計算しながら1か月の計画を立ててるんです。要はマーケティング。夢ないでしょ(笑)
小野寺 ユーチューバーの実力って動画の企画力とか編集スキルなどで考えられがちだけど、マーケティング力なんだね。
きくしん チャンネル登録をしている視聴者も、「出演者のファン」の場合と、「企画の中身に興味がある」場合の大きく2つに分かれていて、僕のチャンネルで僕そのもののファンと言える人は1万人程度。4万人以上は僕の「乗り物+ぬいぐるみ」というちょっとマニアックなジャンル(企画内容)に興味を持っている。それを正しく理解していないと、流行りモノのチャレンジ系動画※4などに手を出して失敗するんです。その数が逆転するのは10万人を超えた時かなと僕は予想してます。
※4 「バケツに入った氷水を頭からかぶる」など、挑戦要素のある行為を撮影した動画で、一種のキャンペーンのような形で展開・流行することが多いため、同時期に同様の挑戦を行った動画が多数投稿されることがある。
小野寺 つまり10万人を超えたら、食リポなどに手を出してもある程度視聴数が伸びるということですね(笑)
きくしん そう(笑)僕のようにある程度お金が欲しくてやっている場合、視聴率勝負なので、自分が何をしたいかより視聴者が何を見たいかが優先。なのでどんな時に視聴率が上がったかを分析することが大事。ちなみに僕にはマネージャーもいます。
小野寺 芸能人のような専属マネジメント契約ということ?
きくしん ユーチューバー事務所のクリエイター枠※5でスカウトされました。渋谷にいるマネージャーさんとオンラインで企画会議をしたり、「案件動画」と呼ばれる企業からの依頼動画の仕事をもらったり。
※5 ユーチューバーの中でも、YouTubeに「出演」だけするのではなく、動画の「企画~編集」まで自ら手がける人(グループ)を指す。「YouTubeクリエイター」。
小野寺 「案件動画」の依頼もあるんですか!過去にはどれくらい依頼が?
きくしん 月1~2本は依頼がありますよ。先日も日光(栃木県)のホテルからの依頼をこなしてきたばかりです(笑)
小野寺 動画の撮影から編集まで全て一人でやっているんですよね?かなりハイペースに動画が公開されてますが……。
きくしん 週に3本、月に13~15本は公開しています。今日もこれから自主企画で盛岡に行って、撮影してきます。撮影から編集まで全部自分でやらないと面白さは作れません。自分が面白いと思ってやったことが、他の人に違う視点で編集されたら意味がないですからね。
小野寺 でも編集にはそれなりの時間がかかるんじゃ?
きくしん 僕は5分あたり1時間で作ると決めてるんです。時間を決めて、作業単価に計算して(笑)無駄にクオリティをあげないことにしていて、僕の強みである岩手県という地方性とか広い土地とかを活かして、動画を量産することに重きを置く。
小野寺 確かに、視聴者としてはクオリティよりも内容。
きくしん 今のユーチューブは面白いものか勉強になるものかの二択なんです。意識するのは「手が届きそうだけど届かない」「やってみたいけどまた今度」というライン。「みんなができそうでできないこと」です。
小野寺 そういえば僕も先日、自転車のサビをひたすら落としていく動画を見てました(笑)
きくしん 今のユーチューブはそういう専門性とかストーリー性、内容の深さが重視されてますが、トレンドはどんどん変わります。よくユーチューブを教えてくださいと言われますが、今のことは1か月もすると古くなる。ユーチューブ自体がずっと最先端なので、やるなら自分で何でも調べる癖をつけないとダメですね。
小野寺 ユーチューブ自体が常に最先端……名言だね(笑)
(2回シリーズの前編 ★後編はこちら)