(idea 2022年2月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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きくしん!ちゃんねる‼ YouTubeのトップ画像
当市在住(住所非公開)のYouTuber(ユーチューバー)。自動車関連の職歴を活かし、乗り物を切り口にした動画で人気を博す。2021年9月にはチャンネル登録者数が5万人を超え、347万回以上の再生回数を誇る動画も。 YouTubeチャンネルリンク⇒(https://bit.ly/3quwMwF)
対談者 You Tuber きくしんちゃんねる さん
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹
動画投稿サイト「You Tubu」は、誰もが簡単に動画を公開することができますが、自分の「チャンネル」を持ち、そのチャンネルの登録者が1千人を超えるなどの諸条件を満たすと「広告収入」を得ることができます。「楽しみながら稼ぐことができる」というイメージで、「職業」の選択肢に入っている近年、その実態を当市在住の「ユーチューバー」に聞きました(2回シリーズの後編)。
小野寺 乗り物を切り口にしているだけあって、バイクや自動車がたくさんありますが、車検代など維持費が大変なのでは?
きくしん 車検はほとんどが切れてますよ(笑)今は車検が切れていても、ネタとして使う時に車検取れば良いわけです。なので珍しいなと思ったら買って保管しておく。2年乗って、次の車検のタイミングで「次は保管しておいた〇〇に乗ろうかな」という感じ。置くところがないから乗り換えなきゃいけないだけで、置くところがあるから手放さない、というだけです。
小野寺 すごい発想だね(笑)バイクも原付からハーレーまでジャンルが様々……。
きくしん 僕はユーチューブ事務所のタレントですが、ここにある大量の乗り物は「きくしんちゃんねる」の所属タレントなんですよ。それぞれに特技があるし、5台もあればどれか1つはどこかしら壊れている(笑)修理も立派な動画になるので、彼らがネタを提供してくれるということ。所属タレントは多く持っていた方が良いので。
小野寺 確かに修理系の動画は需要がありますよね。
きくしん 何かを取り付けるようなハウツーもの※1・技術系の動画は、再生回数は大きく伸びないですが、また見ようと思うからチャンネル登録をしてくれるんです。逆に一番再生回数の多い「巨大ぬいぐるみを背負ってツーリングで帰る」という動画は、再生回数は多くても、チャンネル登録にはつながらない。
※1 実用的な技術や方法などを分かりやすく説明したもの(主に手引書)。ここではそうした動画を指す。
小野寺 そういうデータも分析していくわけですね。予想外の結果になった動画はある?
きくしん 乗用草刈機の動画が25万回以上の再生数になったのは意外でしたね。そこまで需要があると思わなかったです。
小野寺 車中泊の動画も再生回数上位に何本も入ってるね。
きくしん 最近のトレンドですね。ちなみに動画の再生数の9割はユーチューブを開いた時に出てくる「おすすめ動画」なんです。AIがその人の興味がありそうな動画を判断するわけですが、僕の動画の場合、1か月に1200万回~1500万回そこに載っています。この枠にどれだけ載ることができるかが重要なんです。
小野寺 その基準というのは何なんでしょう?
きくしん 要はサイト側がおすすめしたいかどうか。その動画の平均視聴率などが重要で、10分の動画なのに10秒で見るのをやめた人が複数いると「この動画は面白くない」とAIが判断するんです。逆に10分の動画の平均視聴率が8分だとすれば面白いと判断されて、おすすめしてくれるんです。
小野寺 AIが判断するとは言え、その元になるのは視聴者の判断ですよね。
きくしん 僕もユーチューブが大好きなのでよく見ますが、10本の動画を見たとして、最後まで全部見るのは1本くらいですからね。だからこの誌面を見てくれた人が興味本位で僕の動画を見てくれるのは嬉しいですが、いろんな動画を少しずつ見たりするのは評価が下がる要因につながるので、本当に興味がある人以外は見なくて良いです(笑)
小野寺 この取材の前にきくしんちゃんねるの動画を少しずついろいろ見てしまいました(笑)
きくしん ユーチューブってNHK教育テレビに近いと思うんです。5分とか15分のマニアックな番組が放送されますが、万人受けは狙っていないですよね。例えば「登山好きの人」「世界遺産が好きな人」「小学4年生」とか、ごく一部の層を狙っている。だから人によっては「自分には興味のないことばかりやっている面白くないチャンネル」と嫌われますが、たまたま自分の興味がある内容の番組にあたった時に「すっごい面白いな!」となる。僕の動画視聴者の中にも、クマのぬいぐるみが登場する動画だけをひたすら見てる人がいますから。
小野寺 視聴者とはコミュニケーションをとるんですか?
きくしん コメントでのやりとりや※2、「プレミア公開※3」というライブ配信に近いような配信方法でのコミュニケーション、それからファンレターやプレゼントもけっこう届きますね。
※2 各動画にはコメント欄があり、視聴者は動画にコメントを投稿することができる(コメントを「無効」にしてい る動画にはコメント欄が表示されない)。
※3 クリエイター(≒投稿者)と視聴者が新作動画をリアルタイムで一緒に楽しむ方法。新作動画の投稿日時が公表され、2分前からのカウントダウン等を経て、新作動画をクリエイターとファンが同時に視聴する。当該動画を見ながらのチャット等も行われるため、クリエイターとの交流が可能になる。
小野寺 ユーチューバーにファンレターが届くんですか!
きくしん 東京の事務所宛ですが、企画に使って欲しいと応援の品が届くこともあります。あとは動画に登場する乗り物やぬいぐるみを見たくて、住所非公開なのに探し当てて来る人も…。
小野寺 興味のあるジャンルが絞れることで、配信者を身近に感じるからか、ファンのレベルが深いですね。
きくしん ユーチューバーに関しては、年齢・性別・職業関係なくみんな平等。子どもも大人も、どこに住んでいようが誰でも始めることができる。とは言え、僕は東京にいるより地方にいた方がネタの豊富さはあると思うんです。1Kのアパートに暮らしながらユーチューバーをやろうとしても「食べてみた※4」くらいしかできないですけど、地方に住んでいると僕のように乗り物たちをタレントとして大量に置いておくこともできる。ただ、トレンド要素は薄くなるので、渋谷にいるマネージャーの意味があるんです。
※4 ここでは「話題の食品」や「非日常の食べ物・食べ方」など、チャレンジ要素や先行性のある食べ物を実際に食べている過程等を撮影した動画を指す。
小野寺 ユーチューブは専売特許じゃないし、地方にいても関係はない、と。
きくしん ちなみに僕、一関信用金庫さんからユーチューバーとして融資を受けてるんです。最初は怪しまれましたが、僕はユーチューブを事業にしていて青色申告なので、最終的には面白がってくれて。事業計画や企業理念まで書きましたよ(笑)
小野寺 我々が思っている以上にユーチューブの世界は多方面に浸透してるんですね。これまでの「当たり前」が通用しない時代を感じる対談でした。
(2回シリーズの後編 ★前編はこちら)