(idea 2014年6月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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【小野寺】市の地域協働推進計画が策定され、いよいよ地域協働への本格的な動きが始まろうとしているところですが、一関市が目指す協働の在り方、目指すべき所についてどうお考えでしょうか?
【市長】目指すべきところは、地域運営の主役交代といった所でしょうか。古くは平安時代、平安朝ができたその時の主役は貴族でした。それから400年後、鎌倉時代の主役は武士に、さらに400年後の江戸時代はお役人が主役となったのです。それから400年たったのがついこの間。歴史的な400年単位の変わり目でもある今が、主役が市民へと変わる大きな転換期に来ているのではないかと感じているところです。
協働の在り方については、例えると釣り。魚は補助金や事業。一昔前までは、行政は市民に、ほかから(国や県など)いっぱい魚をとってきたのでみんなで分けて下さいと差し上げることができました。住民は、釣りをしなくても魚を与えられ食べることができましたが、現在は配ることができる魚が少なくなり、これでは住民一人一人が十分に魚を食べることができません。そうすると住民は自分たち地域の力で魚を釣ろうとします。しかし、そのための釣竿がありません。だから今は、市は釣竿を貸し出します。でも、これからは釣竿だけではありません。どこに行けば魚が釣れやすいのか、いつ行けば釣れるのか、エサは何を使えば釣りやすいのか等、きめ細やかな情報を行政では提供し、少しでも住民に魚が行き渡るよう支援します。このように行政だけが主導を握り引っ張っていく時代からは脱却していく方向に向かっていくのですが、行政が住民に物事を押し付けあとは知らないよということはありません。みんなの情報を持ち寄り共有して、地域の情報力を高めましょうと、今まさにそこに踏み出していこうとしているところです。魚釣りの例え話のように、お互いの得意分野を出し合って、一つの目標に向かい一緒に歩き出すという考えが協働のまちづくりのベース(基本)です。
【市長】協働のまちづくりと言っても、今までとは違う市の動きに戸惑いもあると思います。「なに!今まで役所でやってくれていたのに!」という声も必ず出てくると思います。しかし、その意識を住民と行政が一緒になって変えていかなければならないと思うのです。
【小野寺】そうですよね。戸惑いがあるという点は、本当に共感できるところです。公民館単位で地域協働体の設立を推進していますが状況は様々です。当センターでも、地域にお邪魔して懇談会や研修など地域の人たちの意見を聞く機会が多いですが、市の新しい施策が入ってきたことに、いったい何をするのか?何をさせられるのか?といった戸惑いの声が多いです。
地域協働推進計画の中で特に大事にしていかなければならないことは、地域づくり計画だと感じています。この計画を各地域が創り上げるまでは大変な時期だと思いますが、計画が出来上がれば、地域にとっても行政にとってもすごく効率良い地域づくりができるようになっていくだろうと想像しています。
住んでいる人達で、自分たちの住んでいる地域を自由に描き、行政は住民の描いた絵を見ることで、ニーズ(必要)に素早く対応できる。そういった役割が明確になるとお互いが理解し合えるようになると思います。戸惑いがある分、戸惑いを解消するまで、今はお互いが我慢の時なのではないでしょうか?
【市長】確かにそうですね。ただ、いつまでも戸惑いの時間を長くしておくわけにはいかないと思います。そのために、行政側はいかにわかりやすく説明するかが説明責任だと感じています。説明責任とは、ただ単純な説明を住民にすればよいということではありません。市民にいかに分かりやすく伝えるか、いかに市民に受け入れてもらえるかというところまでいって、初めて説明責任を果たすことができるのです。協働の推進は、住民理解が不可欠であり、急がず焦らず、みんなで納得するように進めていきたいです。ただし、期限を決めて。
【小野寺】実際に、地域協働の力が発揮された時、一関のまちはどのように変わると思いますか?
【市長】すごく大きく変わると思います。協働のまちづくりをしていくという方向性は決まっているから、今は、そこに向かって動き出している段階。完成形になるのは何年先になるかはわかりません。しかし、自分たちが住んでいるところをこういうふうにしたいんだという住民の想いが積極的にあがり、地域の中で事業や取組みに優先順位を決めることが当たり前になったその時に、我々、行政が試される時期になると思う。今までとは違う視点で行政の役割が示されることになり、どんどん地域に職員が入っていくことになるだろう。地域住民や行政の職員のそれぞれの得意分野を活かし、お互いを理解しながら、一つの目的に向かって動いているでしょう。
【小野寺】地域が行政や制度をうまく活用していくために協働という手法があるということですね?住
民と行政が一つの課題を共有して、その課題解決のために役割分担をしてうまくお互いに制度を活用していく…それが出来るか、出来ないかで協働の効果が違ってくるのかなと感じます。
【市長】そうそう、だからこそ時間がかかったり、途中で止まったりするんですよ。自分たちでやってみようということもあるだろうし、どうしてもここは行政の力を借りなければならないということもあるでしょう。もちろん最初から住民と行政が一緒になって行動することだってあるでしょうし。そして、行政の仕事は、住民が活動しやすいように支援することにもなっていくでしょう。
【小野寺】なるほど。住民の行動力、そして行政のコーディネート体制の確立が必要だということですね。
【小野寺】本日のお話の中で、協働に向けた行政の動きとして、市民への説明責任と感じ取ることができたのですが、市民側についてはどのような行動をしてほしいと期待していますか。
【市長】まずは、協働に関心を持ってもらうことです。まだ市民は、行政が何とかしてくれるだろうという行政依存の傾向があると思います。頼られるのは非常に光栄なこと。しかし、そういうやり方では今の時代、物事が動かないのが現状。そういう時代なのです。行政側も住民に納得の上で、理解してもらえるよう説明をすることが大前提であって、住民の皆さんも説明に関心を高くもって聞いてもらいたい。これからの新しい仕組みをうまく活用するためにも、住民の関心力が一番重要だと感じています。
【一関市】
住所:〒021-8501 一関市竹山町7番2号
電話&FAX:0191-21-2111(代表)
Mail:shiseijyoho@city.ichinoseki.iwate.jp
HP:http://www.city.ichinoseki.iwate.jp
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