(idea 2014年9月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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対談者 陸前高田まちづくり協働センター 統括コーディネーター 三浦 まり江さん
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹
【小野寺】東日本大震災から早いもので3年が経ちましたね…いろんな意味で新たなフェーズ(段階)に移ってきたのかな?と感じているところですが、思いおこせば、発災直後に陸前高田の避難所を訪問したとき、「これからの復興まちづくりを市民主体で進めていくために支援機能が必要なのでは?」と勝手に感じて、いちのせき市民活動センターのノウハウ移転として、陸前高田まちづくり協働センターを開設し、早いもので2年。陸前高田のまちづくりに少しずつだけど馴染んできたかなと感じているところなのですが…。
【三浦】開設当初は運営する私たちも、住民の皆さんも、「『まちづくり』って何だろう?『協働』って何だろう?」と、きちんとわからないままセンターができたという感覚でしたね。今は、市内のNPOやまちづくり協議会などを含む活動が活発になる中で、少しずつ浸透し、センターが協働のまちづくりの支援拠点であることが認識されてきた気がします。3年目に入って、やっとセンターが機能し始めてきたかな?とは言え、NPOへの理解が高まってきたかと言えば、まだまだです。住民や行政から信頼できる仲間と思ってもらうには、もう少し時間が必要かなと感じますね。
【小野寺】震災前は、地縁組織活動が当たり前すぎて、市民活動という分野が地域社会の位置づけになっていなかったことを記憶しています。発災直後たくさんのNPO・NGOが県外から支援に入ってきて、急にNPO文化が広がりだしたって感じだったよね?
【三浦】そうですね。高田のNPOは今、法人認証を受けているもので16団体ありますが、内14法人は震災後に立ち上がったものです。それも住民自らが立ち上げたというよりは、外のNPOが知恵を入れて組織がスタートしたっていうのが多いので、「結局NPOって何?」と、所属する本人たちもよくわかっていなかったんですよね…「NPO=ボランティア」という意識が強く、「地域をつくる・運営する主体の一つ」とは考えられなかったのが実際のところ…「皆さんがこれまでやっていたことがNPOなんですよ!」と言っても今ひとつ実感がわかなかったようです。
【小野寺】今現在、地域の動きは、三浦さんの目にどう映っていますか?
【三浦】「地域をより良くしよう!」と活発に動いているところもあれば、これまで通りで…と地域でも様々です。「地域運営上問題がない」と住んでいるみなさんが思うのであれば構わないのですが…支援する側として一歩引いて見た時に、住民が本当は思うことがあるけれど「聞ける場がない、話す場がない、まとめる場がない」など、実はうまく意見を吸い上げる場がないんじゃないか?とか、意見集約したとしても、それが反映されないのでは?という不安もある気がします…まちづくりの主体それぞれが持つ得意分野と役割の認識がまだ曖昧というか…これが地域最大の課題かなと。地域の課題に対して、どこがやると一番効果的かというルートや仕組みをつくることが大切だと感じますね。まちづくりは、住民一人一人が主人公であり、外にいる人が主体となってすることではないと思うので…住むまちがどうあるといいという事も住民のみなさんが考えて作りあげることが、高田らしいまちづくりにつながると思います。
【小野寺】一関もそうだけど、地域を運営する仕組みって改めて大事なことだと感じますね。全国的に少子高齢化が叫ばれ、その状況に対応できる地域運営をしていかなければいけない。そう考えると、今年、まちづくりコーディネーター育成講座を開催してみて、参加者の様子が、大きく変化しているように感じるのですが…。
【三浦】そうですね。これまでも講座は開催してきましたが、スタッフに強く引っ張られて参加していた方が多かったと思います。今回、定員がいっぱいになるくらい参加申し込みがあったことは大きな変化ですね。復興工事、特に住宅の再建が動き出したことで、「自分のことから住むまちのことへ」と意識が変わり、少なからず今の活動や地域に課題を感じ、自ら動く方が増えたのではないでしょうか?
【小野寺】今後、講座に参加した人たちが、どうなっていることを期待していますか?
【三浦】今回の講座は、まちづくりの担い手をコーディネートする人材育成を目的にしています。参加者のみなさんには、ぜひ自分の地域で、仲間や他の人たちをコーディネートし、「一人一人がこれからのまちづくりのキーマン」になってもらいたいと思っています。講座で学んだことを今度は自分が講師になって、地域のみなさんに共有し、どんどん輪を広げてくれることを期待しています。
【小野寺】最後に、「陸前高田は、いまどうなっている?どんな支援が必要?」と思う人たちも多いと思います。実際に必要な支援は?
【三浦】今、現地で活動している団体は自立支援や、住民主体の活動への転換ということを考えています。支援団体の数は減ってきています。活動の期限ということもあるでしょうが、緊急的なニーズが減ったということも、外部団体が決断する決め手の一つだったと思います。炊き出しや物資支援という緊急期に需要の高かったニーズは、今はほとんど聞かれません。必要としている時もありますが、多くはライフラインの回復、ものが買える状態になったことで、改善してきています。今、例えばトイレットペーパーを送ります、と言われると、地元の商店ではトイレットペーパーが売れなくなってしまうかもしれません。ただでもらえるから買わない、そうすると、地域の経済が回りません。中心市街地のゾーニング案(配置を区分すること)が検討されていますが、店を再建するにもテナントとして入るにも、そのための資金を蓄えなければならない。ものの支援が全く要らないとも言えないですが、このあたり、少し配慮してもらえたらと思います。これからは、ものの支援よりも、こころの支援が必要とされてきます。3年が経過したとはいえ、仮設住宅の入居率は依然高い状態で、いつになったら再建できるのか?不安を感じてこころが苦しくなっている方は多いです。こころに寄り添い、励ましながら背中を押してあげるような、そんなお手伝いをしてもらえたらと思います。「支援をしてあげる」から、「一緒に歩いていきましょう」という方向へ。やってあげるのではなく、やり方を教えながら一緒に作業する。人と人との交流にもつながりますし、前向きな明るい気持ちにもなれると思います。
【陸前高田まちづくり協働センター】
住所:〒029-2205
岩手県陸前高田市高田町字大隅93-1
高田大隅つどいの丘商店街内11号
TEL 0192-47-4776 FAX 0192-47-4778
E-mail rtkyodo@gmail.com
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