(idea 2016年4月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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【小野寺】まずは、若神子亭の紹介からお願いします。
【五十嵐】骨寺村荘園交流館(以下「交流館」)は、震災があった平成23年にオープンしました。交流館を設置した目的は、骨寺村荘園遺跡の歴史や価値を映像や展示により学習していただくこと、骨寺村荘園遺跡を訪れる方が産直や食堂を通じて地域内外の皆さん方と交流いただき、それにより、ここに住み続けていくということがこの遺跡・景観を守ることになるので、この地域の活性化を、施設を通じてやっていけるようにということで設置されました。
【小野寺】交流館が設置されてから5年も経つんですね。5年間を振り返ってみてどうですか?
【五十嵐】オープンしてからは、お陰様で入館者が増え続けています。23年度の入館者は18,000人で、昨年は25,500人くらい。今年は1月末で26,000人を超えています。昨年8月にはトータルで10万人を突破しました。当初は不安だらけでしたが、行政の皆さん、地域内外の皆さんの協力で入館者については順調に増えています。
【小野寺】交流館に立ち寄られる方は、世界遺産の構成資産の一部であるという考え方の骨寺村荘園遺跡を見に来る方が多いんでしょうか。
【五十嵐】平泉が有名ですから、平泉を見てから骨寺も知っておくということで見に来る方が多かったのですが、旅行会社の方に言わせれば、絵図を見ながら平泉と骨寺の関係を知った後に平泉に行った方が、平泉そのものをわかりやすいという評価もいただいています。
【小野寺】こういう施設があるということはよいことですよね。荘園や田んぼしかなかったときから比べると、この交流館ができたことにより視覚的に訴えられるので、わかりやすさが人の気持ちを引いていきますよね。ただ「田んぼを見に来てください」というのもなかなか難しいので。拠点があることで、行きやすさ、わかりやすさが人の心に伝わるかなと思います。
【五十嵐】おっしゃる通りです。「骨寺村荘園遺跡が世界遺産候補、重要文化的景観に選定された」と報道されても、こういう施設がないと、骨寺に来た方にどのようにご案内・説明するのかという話が出ておりました。この施設のシアターで映像を見た方からは「非常にわかりやすい」「すごいね」という評価をいただけるようになったんです。そういうところでは、この施設は本当にありがたいなと思います。
【小野寺】若神子亭を運営していて、よかったと思うことは何ですか?
【五十嵐】今の会員メンバーは49人で、その方々の多くが産直で物を売っているんですが、販売は顔が見える関係じゃないですか。産直で物を売る方やレジの方が、お客様と直接話をし、交流できる。その中で自分が作った野菜、あるいはとってきた山菜を食べた方から、「とても美味しかったですよ」という励ましの言葉をもらうと自信になるとか、そういうのはよいことだと思います。
【小野寺】生産している物を持ってくる方は、対面式ですよね。直接声を聞けるから、今度ああいうものを作ってみようかなという励みにもなっていくし、作っていれば売れる喜びもありますから、そこはすごくよいコミュニケーションの場になっていますよね。前に行ったワークショップでは、運営に係わっているお母さんたちのやりがい・生きがいになっていて、お父さんそっちのけで「若神子亭に通うのが楽しくてしょうがない」と言っていたお母さんの話がおもしろかったのですが、今もそのような感じですか?
【五十嵐】野菜を持ってくるのも、レストランの食事もお母さんたちがつくったものですし、そういう意味ではお母さんたちは元気ですよね。もともと元気だった地域のお母さんたちが、さらに元気になっています。
【小野寺】きっかけがあると、今までの元気プラスもっと元気になるということですね。そこですよね。きっかけが今どこもなくて引きこもりがちになったりとか、手持ち無沙汰になったりするんですけど。こういう指定管理なり、拠点で活躍できる場があると、人は輝くと思います。
【五十嵐】そこだと思いますね。ですから、周辺の地域の皆さんの方にも「本寺の人達はいいよね」という風に話をされるんだそうです。
【小野寺】私もその話は聞きますね(笑)
【五十嵐】大変な時もあります。農作業と運営と掛け持ちですから。でも、60歳を過ぎてから働けるところがあり、売れるところがあることは非常にありがたいことだと思いますね。ここは野菜だけじゃなくて、山菜とか、山の幸のものを出すというのが基本的なコンセプトなものですから、そういう意味では、お父さんたちが山に柴刈ではないですが、そういったものを収穫して、ここにそれを仕分けて、お出しになる。そういう仕組みも出来つつありますので、そういう意味では上手くお父さんとお母さんと分担ができているんじゃないかなと思います。
【小野寺】地域の活力は個人の活力ですよね。
【五十嵐】そうですね。
【小野寺】骨寺が元気になっていきますよ、なんていうときの一つの拠点として交流館があって、その拠点に地域の人が出てきてやること・やりたいことがあるから生き生きするっていうことですよね。交流館をつくった機能の目的の達成の仕方としては、すごく良い達成のされ方なんでしょうね。そういう人の観光の拠点になりつつあるし、地元の人にとってもここが生き生きする拠点になったりするということですからね。
【小野寺】実際、若神子亭の運営をしてみて、難しいなと思うことはありますか?
【五十嵐】一番は、冬のお客さんが少ない時期に、どういう風に管理・運営していくかが大きな課題です。あとは、次の世代の方、若い方に活動に入ってきていただき、働けるような場所になっていけばいいのかなと思っています。
【小野寺】今はまだ運営に支障はないけれども、今やっている人達が5年~10年と高齢化していったときに、次世代の運営の部分は今から準備しなければならないというところが、やはりあるんですね。地元で、若神子亭に就職するんだという職業になっていくといいですね。
【五十嵐】そのためにも、ここが365日働ける施設になって、生活できる賃金が出せて、社会保険などの保障もしっかりできるようになるなど、そういう仕組みができれば、「私の将来就職したいのはここだ」というように思ってもらえるんじゃないかと思うんですよね。
【小野寺】地元で育って地元の空気を知っていて、地元の歴史を知っている、今の子ども達なんかがあと5年後くらいに、若神子亭に就職したいんですとなってくれれば万々歳ですよね。どこかに就職を探しに行きますじゃなくて。
【五十嵐】私自信もそういうことを目指していきたいと思います。現状に満足するのではなく、やはり、次の世代にバトンタッチできるような仕組みをつくっていかなきゃなんないなと思っています。
【小野寺】我々も、色々な地域との関わりをもっていますので、地域間のコラボレーションとか連携というところでは情報提供だったり、お手伝いできるかと思いますので。
【五十嵐】ぜひよろしくお願いします。
【小野寺】今はどこもかしこも指定管理とか、地域管理に移管していきますというのがブームですけれども、やはり、ある程度責任とか保障の部分もしっかりつけていかないと、受け皿としては契約したくないじゃないですか。そこはしっかり市側も頑張って、しっかり用意するものは用意していただければと思いますし、夢のある場所として、ここが将来もあればいいなと思います。
【骨寺村荘園交流館】
館長 五十嵐正一さん
住所 〒021-0131 一関市厳美町若神子241-2
電話 0191-33-5022
開所時間 9:00~17:00
定休日 火曜日・年末年始