(idea 2015年12月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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対談者 千厩着物虫干し会 代表 伊藤京子 さん
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹
【小野寺】今年も千厩きもの物語(以下「きもの物語」)お疲れ様でした。今年で3回目(10月10日開催)ですが、続けてみての手応えはどうですか。
【伊藤】お陰さまで、先日3回目を無事終えました。手応えとしては、回を追って着物を着て参加する人たちが多くなり、今回は100人ほどになりました。1回目の時は見もの見物の人たちが多かったようですが、何を着てもいいんだという感覚になってきたと思います。1回目の終了後に参加された方から、「代表さんが気楽に着ていたので参加しやすいですね」と電話をいただきました。参加するために美容院に行くとか、着付けを習っている人たちだけが参加するとなると参加しづらいと思います。最初の出だしとしては良かったのかと思いました。
【小野寺】きもの物語という企画が生まれた時、良い企画だと思いました。最近は着物を着る機会が少なくなり、着物を着ることは日常的なものから非日常的なものに変わることだと思います。非日常の部分をもう1回日常に戻して楽しもうという企画で、着物を着てまちなかを闊歩するというのはすごく良いと思います。
【伊藤】私たち世代は、子どもの入学式や卒業式に着物を着る機会は多くありましたが、最近は着る機会は確かに少なくなりました。私の店は着物を扱っており、着物をリメークした洋服も始めました。また、裂き織りをしている高校時代の同級生もいて、一緒に着物に関連した3人展を開催してきました。私は着物が好きで何かある時は着物で出かけるのには抵抗はありません。ある時、店に来たお客様の「着物を着ることが少なくなったね」の話に動かされ、着物を着る機会を考えよう、皆でやればこわくないと思うようになったのです。そうしていた時、いちのせき市民活動センター(以下「センター」)のスタッフさんから「応援しますからやってみたらどうですか」と話をいただき勇気百倍、千厩着物虫干し会(以下「虫干し会」)を立ち上げました。
【小野寺】2年前の5月にそんな話があって、すぐに市の地域おこし事業に応募しましたね。
【伊藤】イベントをやるには宣伝もしなければならない、ちょっと集合するにしても場所代がかかるなどどんな手立てが必要か、センターさんにはいろいろとアドバイスをいただきました。幸いに市の地域おこし事業の補助金が通り、無我夢中でやってきたことを思い出します。
【小野寺】継続して3年やってきて、きもの物語というイベントが千厩の文化の定着になってきたと思います。市広報紙にも取り上げられるようですが、イベントを聞きつけて写真を撮りに来るわけで、それはすごく大きなことだと思います。
【伊藤】あまり大それたことはしていないと思っているのですが、そのように話していただくととてもうれしく思います。
【小野寺】話は戻りますが、虫干し会を立ち上げようと思ったきっかけって何でした?
【伊藤】平成25年5月に千厩本町(もとまち)地区の女性たちで立ち上げました。虫干し感覚で着物を着てまちを歩きまちの魅力を再発見し、できれば地域おこしにもつなげてみようと始めたもので、現在の会員は20名ほどです。
【小野寺】虫干し会という名前は、とてもインパクトのある名前ですよね。虫干しという言葉は最近ではあまり聞かなくなりました。
【伊藤】実は虫干し会という名前は、一関の着物好きのお客様からいただきました。4年ほど前に私の店で開いていた展示会にいらしたのがきっかけでした。「着物を着て出かける場所はそうそうないので、着物をリメークした洋服の展示会だから着物でもいいかと思い着物で出かけて来ました」とお二人が。
話を聞けば、誰でも気楽にタンスに眠らせている着物を着ようと、数年前に10人位で立ち上げた会だそうです。しかし、4年前の大震災後には活動していなかったそうです。いろいろ話しているうちに「応援しますから何かやったらどうですか」と言われその気になりました。そして活動を開始するに当たり、虫干し会の名前を使うことを相談したら「自分たちの特許でないからどうぞ使ってください」ということで、私たちは「千厩着物虫干し会」という名前にしました。
【小野寺】人の縁を感じる良い話ですね。会としてはきもの物語以外の活動って広がりましたか。
【伊藤】毎年10月に行ってきたきもの物語が一番の活動です。10月はウールの着物や袷を着るには適した時期になっています。それ以外には、千厩吊るし雛祭りなどの地域の催しに会員が着物を着て出かけるようにしています。
【小野寺】先ほどの話で今回は100人ほど参加されたそうですが、それは凄い事です。実は週末のイベントに人を呼ぼうとするとなかなか難しいです。100人が着物を着て参加した。それに付き添っての人も同数いる、写真を撮りに来る人もいるのでかなりの数の人が来たと思います。
【伊藤】そう言われますと、参加者の倍以上の人が来ていたんでしょうか。最後に集合写真を撮り参加者に配るのですが、最初の年は30枚位、去年は70枚位、今年は100枚位ですから年々参加者は多くなっています。知名度も高まってきたのかと思っています。
【小野寺】まちおこしは商売の活性化にもつながっていきます。人が出てくるような雰囲気を作り、来たらまちで買い物をする、写真も撮ると商売につながりますね。そうしてきた人にまちの人の協力で、お茶の一杯でも振る舞えることがまちおこしには必要だと思います。
【伊藤】そうですね。そうであれば、こちらでコーヒーコーナーを設けなくても済みますね。少ない会員の中から接客などの仕事も割り振りしているので、人を浮かせるかもしれません。それと、今回、抹茶コーナーには干菓子ではなく、思い切って地元のずんだ大福を出しました。そうしたら好評で、参加された方からは販売している店を教えて欲しいと言われました。地域の商売にも広がっていけたらいいですね。また、今回もセンターさんのつながりで馬車を走らせました。その関連で市役所千厩支所などに相談したところ、支所や商工会議所から人を派遣して手伝ってもらって助かりました。3回やってみて色々なことが分かってきました。
【小野寺】地域おこしの活動を行うことで、たくさんの人とのつながりが出てきます。行政機関などに相談するとお手伝いに来てくれます。どんどん人の輪が広がっていきますね。
【小野寺】3回続けてみて手ごたえを感じてきたと思いますが、これからの活動についてどうお考えですか。
【伊藤】私は商売をしているので、ここに居ながらにして何ができるか。そうすると、本町通りしかイメージが浮かばないわけで。ここはまだ区画整理事業もしていないので、昔からのお店が並びます。そして、千厩酒のくら交流施設も近いので、そこを核に本町通りをメインにした催しをしたら、日本の伝統文化にも触れられるのではないかと思います。幸い、千厩にはガイドの会(観光交流ネット千厩)があります。その方々にガイドをしていただければ、夫婦石や大光寺までも行けると思います。
【小野寺】それはおもしろい内容になりますね。さらに煮詰めていくことで素晴らしい虫干し会の催しになると思います。最後に、会の運営についての課題はどうですか。
【伊藤】会員は年配者が多いのでどうつなげていくかだと思います。地域おこしには若い人を巻き込むことが必要だと思います。しかし、若い人は仕事をして家族を持っていたら首を突っ込むことが難しいのではと思います。私達世代が当分引っ張り、次にバトンタッチできたらいいのかと思います。
【小野寺】その考え方で良いと思います。やれる人がやる、これが大原則だと思います。次の世代に無理して繋げようとするのではなく、自然に繋がっていくと思います。
【千厩着物虫干し会】
代表:伊藤京子さん
住所:〒029-0803 一関市千厩町千厩字町158-1
TEL:0191-52-2043(伊惣商店)