(idea 2019年9月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

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高齢者の生活と地域を繋げる

~全ての地域に高齢者が安心できる場所を~

生活支援コーディネーター 一関 佐藤伸

生活支援コーディネーター 佐藤伸さん(上の写真)

平成28年度に生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)に就任。花泉・川崎・藤沢地域を担当しています。

前職で培った介護福祉に関する知識や経験も活かしながら、高齢者の方の生活相談を受けたり、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活するための支援体制づくりなどに取り組んでいます。

 

対談者 生活支援コーディネーター 佐藤伸さん   

    

聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹

2025年には75歳以上の高齢者が全国で2000万人以上になることが予想されていることに伴い、国では地域の実情に応じて柔軟かつ効率的に介護サービスが提供できるよう、地域主体の取り組みを支援する事業を制定し、支援者として各自治体に「生活支援コーディネーター」を配置。市内には4人が配置されており、その一人である佐藤伸さんに、活動や事業内容についてお伺いしました。

 

 

小野寺 まずは、生活支援コーディネーター(以下「SC」)とは何か教えてください。

 

佐藤 私達SCは、地域の高齢者が住み慣れた地域でずっと安心して生活するための支援体制づくりをお手伝いしています。皆さんから地域のニーズや悩みなどを伺い、それをサービスに繋げる「繋ぎ役」の役割というか。

 

小野寺 地域コミュニティでいうと、「地域にこんな高齢者がいる」だとか「生活に苦労しているようだ」とか、自治会長さんや民生委員さんなどがそのような悩みで困った時はSCに相談してくださいということですよね。SCは「高齢者の生活相談を専門的に受ける役割の方」といえばわかりやすいかもしれません。

まだ知らない方が多いかと思いますが、この制度はいつ頃か

ら始まったものでしょうか?

 

佐藤 国では平成27年度から始まり、一関市では翌年の28年度から始まりました。私の場合は前職で介護予防教室を担当していたので、最初の2年間は担当地域の各行政区で行っている介護予防教室をもう一度見て回り、地域の課題を細かく探したり「事業の説明をしてほしい」という依頼を受けたり。

 

小野寺 制度が切り替わる時期でしたからね。始めの頃は、介護予防教室を回りながら地道な宣伝活動をしていたんですね。

その頃に見えていた課題とはどんなことですか?

 

佐藤 今と同じで「移動」に関する課題がありましたね。介護予防教室の会場(集会所など)に行く手段がないとか。あとは一人暮らしの高齢者の見守りについて。見守り自体は意外とできているのですが、いざ何かあった時にどうするかとか、もっと踏み込んでいく場合には、一個人や市民だけでは難しいし限界があると感じました。

 

小野寺 見守りはできるけど、それ以上の専門領域になると線を超えられない。なのでそういうところでもSCなどの専門分野の方々が必要ですよね。

 もう一つ伺いたいのが、「介護予防・日常生活支援総合事業(新しい総合事業)」とはどんなことでしょうか?

 

佐藤 今まで介護事業所だけが行っていた介護予防のデイサービス(通所型サービスB)とヘルパー(訪問型サービスB)が、地域でもできるようになるという事業です。ハードルが高いように聞こえますが、要は地域が通常で行っている介護予防教室やふれあいサロンの回数を少し増やすというイメージです。

 

小野寺 実は市内ではもう行っている地域があるんですよね。

 

佐藤 訪問型サービスBはまだないですが、通所型サービスBは、花泉地域で6か所、一関地域は4か所、大東・藤沢地域では各1か所が行っています。私達はこの「地域に居場所をつくる」ためのお手伝いもさせていただきます。

 

小野寺 介護事業所のデイサービスは色々な地域から利用者が集まりますが、ある意味知らない人達の集まりですよね。でも地域でそれが行えれば、いつも地元の人達と一緒だし、身近で通いやすいし。今まで住み続けてきた地域の中に居場所がつくれてサービスを受けられると。

 

佐藤 市民センター単位だと「距離が遠くて行きにくい」という方もいらっしゃいますので、もう少し小さなコミュニティで居場所がつくれればと思います。ですが、将来的にはその上の地区単位での活動も必要になってくると思いますので、その時は各地域協働体との連携は必要で

すね。

 

小野寺 そうですよね。地域の状況は常に変化しますから、その状況をキャッチし柔軟に対応できる協働体であってほしいですし、SCと地域協働体がパートナーとなり連携できるように。

何だかんだ言って、地域の色々な課題の根源には「コミュニティの希薄化」があるんでしょうね。昔は食べ物に困れば近所の方が「うちでご飯食べていがい」と誘ってくれたり、皆で世間話をし合う社交場があったり、知らない人にも当たり前に挨拶していたし。今では、それがなくなってしまいましたからね。

 

佐藤 そういう社会をもう一度つくるのは無理だとしても、高齢者だけでもそんな生活ができればいいなと。

 

小野寺 生活支援はそういうところを目指しているんですよね。孤立を防ぐとか関係づくりとか、そんなセーフティネットの役割もあるんですよね。

 

佐藤 「介護予防・日常生活支援総合事業(新しい総合事業)」を行っている地域では、それができつつあります。そこで知り合う前までは、その一人暮らしの高齢者を誰も知らなかったとか、仲良くなって普段の交流もでき、怪我をした時はゴミ出しや買い物を代わりにしてあげたとか。ほかには、他の家との繋がりが一切なく「人と関わることが嫌な人」だと周りから思われていた方を民生委員さんが誘い出すと、生前に「(介護予防教室に)行って良かった」と兄弟に話していたみたいで。

 

小野寺 そのように地域での必要性を理解してもらえれば、覚悟をもって取り組めるし、つくった時の納得度は高くなるでしょうね。でも途中で道を間違えたり、担当の方や方針が変わることもあるでしょうから、その時は「こっちだよ」と道を戻してあげる伸さんのような役割の人が必要ですよね。

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