(idea 2015年8月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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対談者 一関市農村地域づくり活動支援員 佐藤佑樹 さん(地域おこし協力隊)
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹
【小野寺】「地域おこし協力隊」(以下協力隊)とは、地域外の方を地域社会の新たな担い手として受け入れ、地域力の維持や強化を図るもので、各種地域協力活動に従事して当該地域への定住・定着をはかっていくものです。一関市では「農村地域づくり活動支援員」の職名で受け入れ、市内で農村活性化に取り組む地域を支援しています。
地域づくりを語る時に「よそ者・若者・ばか者」の3要素が引き合いに出されますが、佐藤さんは、よそ者の視点も持ち・若者であり・ばかになれる人ということで、3要素を一人で兼ね備えていますね。一関市出身でありながら、地元の協力隊をしておりますが、応募したきっかけを聞かせてください。
【佐藤】私は大学進学を機に千厩町を離れ、卒業後は東京のデザイン会社に7年ほど勤めました。協力隊の応募には首都圏に住む若者という条件があり、条件的には合っていたのですが協力隊として本当に求められている人材かと考えると疑問でした。合併前に千厩町を離れたので、合併して大きな転換点を迎えているなとは遠くから見ていて思っていましたし、時々帰って来て地元を見るといろいろ思うこともありました。
Uターンは当初から模索はしていましたが、地元の求人情報を調べると自分が今までやってきたことが見当たらないわけです。協力隊の制度や業務内容を調べると期限はありますが、面白いことも見えました。行政がやっているのでつながりを作れたりすると新しい働き方も見えてくるのではないかと思い応募しました。
【小野寺】そうですね。Uターンを模索していても戻るきっかけがない。戻ってきても今やっている仕事の延長線、自分の積んできたキャリアを生かせる仕事が一関にあるかというとそう多くあるわけではありません。話を聞いて、行政の協力隊の制度をうまく利用して新しい風を吹かせようとしたのかと感じました。
【佐藤】都会は民間の動きがとても活発ですが、地方では行政主導で進められている部分が多いと思います。そこに民間の人間が行政に入り込む隙間があるのかと勝手に思いました。
【小野寺】先日ある地域で、協力隊を地域協働体の事務局として呼ぶことは可能かという話が出ました。むしろそういう人たちに新しく作る事務局を託したいという話も出てきました。協力隊として佐藤さんはどのような活動をしていますか。
【佐藤】私は平成25年6月から室根支所産業経済課に籍を置き、農村地域づくり活動支援員として仕事をしています。基本的には市農政課で進める一関市農村地域活性化モデル支援事業で策定されたモデル地域に入り、地元でこんなことをしたいということを一緒に行っています。
【小野寺】市内のモデル地域は幾つ位ありますか。
【佐藤】11地域ありそれを二人で分担しています。私は室根町をベースに大東町京津畑と下内野、東山町紙生里(かみあがり)、千厩町奥玉の5地域を担当しています。それ以外の地域でも要望があれば一緒に話を聞くこともしています。各地域からやりたいことを聞き、何ができるかを相談し合います。自分の裁量で行える部分もあるので、自分のデザイン経験を生かした商品パッケージなど比較的すぐにできることもやらせていただいています。それ以外にも、一緒にイベントの手伝いをしたり、計画づくりに入って一緒に話を聞いたりとアドバイスはあまりできないのですが、よそ者ばか者の視点で一緒に行動しています。
【小野寺】後押しすると言うより一緒に並走する伴走者的な立場で地域の活性化に取り組んでいるようですね。
【佐藤】「こうしてください」とかはなかなか言えません。私は農業に関しては素人なので、生産者が当たり前のこととして話していることでも「そこがポイントですよね!」みたいに要点を見つけるようにしています。
【小野寺】当たり前すぎることは新鮮には感じられない。しかし、よその人が新鮮に感じることはありますね。新しい発見や気づきを後押しするということでしょうね。
【佐藤】すべてがうまく動いている訳ではありません。事業を実行するのは手間がかかります。モチベーションをいかに上げるかが悩みです。
【小野寺】一関を離れ東京に住んでいた時分、合併した一関市の課題は見えていましたか。
【佐藤】よく聞かれますが言葉で表すのは難しいです。敢えて言えば『もったいない』でしょうか。一関は仕事もまあまああるし、もっと売り出していけばいいのではないかと。物もいいのだから、あと一歩動き出すことが足りないことでしょうか。
【小野寺】個人的にずっと掲げている一関市の課題として表現力が足りないことだと思います。一関は、まあまあいいものがあり、商業サービスもあり、住むには不自由しないと思います。よそと比較すると足りていないのは表現力で、それこそ佐藤さんが専門とするデザインやキャッチコピーなのではないかと思っています。
【佐藤】自分もどう表していいか分からなかったのですが、今、分かったような気がします。室根では6月以降農家は、さなぶりで比較的動きはありません。今は夏場のイベントの準備が始まりそのチラシやポスター作りをしています。3年目にして初めて頼まれました。求められていたのはそれなのかと思ったりもします。販売などのデザインに携わっていたのでその方面から少しは貢献できるかと思っています。
【小野寺】協力隊も3年目になりますが、区切りとなる1年の目標を聞かせてください。
【佐藤】もしかして協力隊は、地元では役場の人と思われているか、市役所の他部署からは何をやっている人と思われているかもしれません。3年終わったら自分の道を進むわけですが、そのことはあまり気にせず自分の専門であるデザインを生かしていきたいと思います。できないことも相談に乗ったりするのではなく、これならできますと言えるようにしていきたいです。
【小野寺】地域デザインなどの専門的なプログラムを用意して、自分の力が発揮できる支援をしていければいいですね。そしてそれが将来の生業へと繋がっていければいいですね。
【佐藤】こちらでは生産者は物理的な物にはお金を出しますが、知識などのノウハウには出しません。その意識を変えられるように自分は頑張っていきたいと思います。しかし、一人ではできないのでいろいろな人と知り合い広げていきたいと思います。
【小野寺】デザインなどはこれからの一関には必要な分野だと思います。新しい生業として成りえる産業分野を一緒に開拓していきましょう。
【一関市役所農林部農政課】
〒021-8501 一関市竹山町7-2
TEL:0191-21-8421 FAX:0191-21-4221
【一関市役所室根支所産業経済課】
〒029-1201 一関市室根町折壁字八幡沖345
TEL:0191-64-3806 代表FAX:0191-64-2115