(idea 2016年1月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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対談者 一関商工会議所 会頭 佐藤晄僖(こうき) さん
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹
【小野寺】一関商工会議所(以下「会議所」)の会頭になられて3カ月ほど経ちましたが、改めて新会頭としての抱負をお聞かせください。
【佐藤】宇部会頭さんが亡くなられて急遽就任した形ですが、長らく副会頭をしていたので前会頭の方針を受け継いでいくことが役割だと思っています。前会頭が常々話していた地域の農商工連携はもちろん、一村逸品に当たるような地域の特色を出した地域活性化をやっていきたいと思います。特に一関は広いので各地域の特色は様々です。これらを生かしていかないと地域の活性化は図られないと思います。難しいことですが同時に、考えようによってはやりがいのあることだと思います。
【小野寺】農商工連携は地域活性化のカギになるのかと思います。いろいろな会議に出る機会がありますが、活性化のキーワードとして出てくるのは連携ですね。
【佐藤】明治の近代化は奇跡的と言われるほど短期間に進みました。それは、徳川時代260年の間に、教育をはじめ、農、工、商のそれぞれにおいて日本独自の改良がなされ続けていたこと。そして、各藩が独自の政策のもとに競い合っていたからだと言われます。ところが、戦後は復興期から高度成長期を経て、いろいろな分野での中央集権化が進みました。戦後はほとんどゼロからのスタートでしたから、傾斜生産制などと言って、少ない資源や予算の配分や生産活動を国が重点を決めて行ったこともありました。これは物の少ない時代でしたので、中央集権的な仕組みはうまく機能し、さらに江戸時代から続く教育尊重の風土や「匠の国」の基礎を生かすことによって、世界第2位の経済大国にまで登り詰めることが可能になったのです。しかし、かつては有効に作用した中央集権方式は、豊かな国となって人々の価値が多様化している現在では、むしろある種の停滞要因となってしまっているのです。過去の『成功体験』は、もう役割を終えて、これからは各地域がそれぞれの特色を出して取り組む時代だと思います。日本の匠の技術を基礎に、日本の四季折々の際立ちやそれぞれに異なる地域の風土を生かすことをもう一度見直す必要があります。それが農商工連携のベースにあると思っています。
【小野寺】一関市が合併し会議所も合併しました。合併以降言われるのが一体感の醸成と地域の特色ですが、会議所ではどのように考えられていますか。
【佐藤】地域間の特色があって一体感が醸成されると思います。会議所の合併については、一関の場合はその区域が広いことや八つの商工団体の合併ですから、成功が危惧されていました。しかし、現在は地域間の特色を出しつつ、一体感が醸成されていると思います。これは、宇部前会頭が、合併に当たり方向性を明確に打ち出した成果です。広域の各地には、それぞれ伝統や積み上げがありますから、よく言われるように、霞が関で一極コントロールするというようなわけにはいきません。ですから旧商工会が行ってきたことをできるだけ尊重する方向でやってきました。そのことで各地域は安心したと思っています。
【小野寺】元の商工会の活動はそのままでしょうか。
【佐藤】多くはそのままです。地域の行事はそれぞれ蓄積があるので大切にするようにしています。祭りなどには本部から各地域に応援に行くようにしました。単独でやっていた頃よりはある意味では楽になったかもしれません。人の少ない所に応援に行くので皆で支援しているという思いが大切だと思っています。結局、一体感とは何かと言えば最終的にはそれぞれの思いの共有ではないでしょうか。
【小野寺】最近、市内各所での住民ワークショップで話題になるのが生活の足の確保で、我々も一緒に頭を悩ませています。会議所の支援も必要だと思いますがどうお考えでしょうか。
【佐藤】そうでしょうね。どちらかと言えば行政の役割だと思うのですが、まちづくりをどのように設計しそこに交通インフラをどう位置づけるかです。100円循環バスの活用もあり、その時は車両を小さいものを利用することも必要です。赤字のバス会社を立て直した話を聞くと、従来の決まったバス停ではなく、そのまちのニーズに合わせたバス停を新しく作っています。ニーズを探るマーケティングを行い、無駄を削ぐことで赤字路線が黒字に変わっていく例もあります。
市民協働の話がありますが、今の協働はどちらかというと行政が何かを提案して民間を手伝いに囲い込む形になっています。本来はお互いが出し合ってノウハウを共有してやることだと思いますので、今後はうまく協働していける仕組みづくりの中で行うことが求められるでしょう。
【小野寺】それとともに、生活用品や生活するための最低限の物だけでも買える店が欲しいとか移動販売があればいいなどの声も上がってきます。実施に向けて地域の人達が手を上げてくれればいいのですが、なかなかいないようです。
【佐藤】採算性が取れるとなればやる人が出てくると思います。問題は採算が取れることで、そうでないと長続きはしないでしょう。スタートの一定期間は行政が助成することは必要かもしれませんね。
【小野寺】私どもが行っている地域の話し合いに会議所さんにも参加していただき、何か一緒にできるものがあればやってみたいと思います。
【佐藤】必要なものは大きなベースになる計画、構想、将来像を描いてそれに向かい、今現実にやれることをやっていくかだと思います。場当たり的に思いつきでやると効率が悪く限られた人材や財源を消耗してしまいますので、そのような共有の場が最初に必要かと思います。
【小野寺】現在、各地区で地域づくり計画が進んでいて、そのためのワークショップで住民の方々と話し合い、産業や商業などの地域の将来ビジョンを描いています。いずれ会議所さんと共有の場が必要かと思っています。
【佐藤】そうですね。課題を列挙してどうすればそれがクリアできるものか、できないものかを検討することが大切ですね。自分たちでするか、行政に頼むか。
行政に提案してもなかなか動かないと言われますが、提案しっぱなしでは無責任だから、もう一歩突っ込んで、私たちの知らない行政側の立場や制度的なものを理解することも必要だと思っています。
【小野寺】地域の人達が作った計画を基に会議所さんにも入って話をしてもらえればいいと思います。住民だけで話すのではなく、商店街の人たちにも入っていただくことで広がりが出てくると考えています。
【佐藤】似たような話が別々にあると効率が悪いので、一連の流れとしてあると良いですね。このような問題については、いちのせき市民活動センターが中心になってもいいのですが、行政、会議所、住民、関連の人たちでの話し合いは、こんな道筋で全体を持って行くという大きな全体構想があり、そこに会議所にも入ってほしいとなればやりやすいですね。
【小野寺】そのような場は継続的に作っていきたいですし、ぜひ一緒に関わっていただければと思います。会議所さんはニーズを発見しやすいので、一番力を発揮しやすい場面で尽力いただけるのではと思います。
【小野寺】会議所で現在感じている課題はどんなことでしょうか。
【佐藤】どうしたら前向きのマインドを醸し出すことができるかだろうと思います。会員は減少傾向にあり、商店の70%は後継者なしのデータもあります。商売が減れば当然会員が減ることになってきます。誘致工場はどちらかといえば順調にいっていますが、会員として中心になって働いていただくことは少ないですし立場上も難しいわけです。結局、地域に根ざした人が活動の中心となっていただくことになります。そこが将来的に危惧しているところです。基本的に地域が住みやすい所になってくれば良いわけです。
【小野寺】商店街の抱えている課題と地域の抱えている課題は違うと思います。課題の違いの明確さを見極める。マインドを変えるとはどういうことをしていけばよいのでしょうか。
【佐藤】結局、小さなことでも一つ一つ励ますことだと思います。励ますという意味は、「頑張れ!」と声をかけることもそうですが、少しでもいいから支えることです。今、京津畑(大東町)がなかなか元気で、よく新聞にも出てきます。何か特殊性があるわけではないが、とにかくみんな頑張っている。それが端から見ると地域で頑張っているねとなってマスコミが取り上げやすい。地元のお客さんも多いが視察の人達も多い。始まりは何人かのグループが動きだした。そうすると行政も頑張っているからと支援するようになる。受け止める方からすると、認めてもらえた、ちょっと支援があった、新聞に取り上げられた、よそから人が来た、それが刺激になりいい循環になっています。
【小野寺】そうですね。認めてもらえることで次への励みになり、好循環が生まれますね。
【一関商工会議所】
会頭:佐藤晄僖さん
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