(idea 2019年11月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

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「日のあたらない」経験を武器に

~地道な努力で成功をつかむ~

吉田真童 脚本家 一関

吉田真童さん(上の写真)

 千葉県出身、一関市山目で育つ。脚本家を目指してコンクールに応募を続け、2010年、第3回WOWOWシナリオ大賞で優秀賞を受賞。同年、第35回創作テレビドラマ大賞でも大賞を受賞し、その作品『夜明けのララバイ』が2012年3月にNHKにて放送される。2018年9月に小説「天下にきらら 幕末少女伝」(文芸社)を出版。花泉町駒場在住。

対談者 脚本家・小説家 吉田真童さん   

    

聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹

脚本家の肩書を持ちながら、岩手日日電子新聞にて書き下ろし時代小説「いけころし~伊達男捕獲帳」を連載中(第2話が10月16日よりスタート)の吉田真童さん。プログラマーとしての一面も持ちウェブ制作などの仕事も請け負う吉田さんに、脚本家という世界について、そして近年注目が高まるフリーランスでの生き方についても伺いました。

小野寺 市内には随筆投稿含めアマチュアの執筆活動をしている人はいても、書籍にしたり、ましてやドラマ化された人はそういないと思うのですが。

 

吉田 僕の場合、表に出るのが嫌な人間で、人の前にたつようなことはできるだけやりたくないので文章を書いているんです。そもそもは小説家ではなく脚本家を目指していたんです。テレビドラマの全盛期世代なので、テレビドラマに憧れていて。

 

 同世代なのでわかります。社会問題をテレビがちゃんと取り上げていた時代ですよね。

 

吉田 そう、今じゃ絶対にできないようなヤツ(笑)だからコンクールで大賞をとった僕の企画も「とがっている」と言われて、ドラマ化する過程でプロデューサーとディレクターに全否定されましたよ。 

 

小野寺 コンクールで賞をとることが脚本家の入り口ですか?

 

吉田 はい。ただ、なってはじめてわかったんですけど、受賞はスタートであってゴールではなかったんです。2~3年で賞をとれると思ってコンクールに応募し続け、結果10年かかってようやく賞をとって肩書をもらいましたが、そこからがもっと辛かった。脚本家は小説家と違い、枠が決まっているので間口が狭い。ここでは言えないような熾烈な争いがあるんです。

 

小野寺 やはり当時のテレビ局は強かったんですね。

 

吉田 だけど昔はテレビ局の企画会議の中で使う企画書にも原稿料が発生し、それで脚本家は生計が成り立ってたんです。それが、僕の時代にはそういう仕組みはなくなっていて、タダ働きの我慢対決のような状態に。僕はそんな我慢対決が無理だなと思ってやめましたが、こうして脚本家を育てる環境がなくなったために今のテレビはつまらないんだと思うんです。

 

小野寺 社会の構図が変わってきていますよね。昔はヒトを育てようとか良いモノを作っていこうという機運がきちんとあったのに、今はコスト削減重視。

 

吉田 こっちに言わせると、あなた方は畑を焼き尽くし、新しい種もまかないでいながら「実りがないな」なんておかしな話だと。

 

小野寺 豊かな時代になってしまったから、あちこちにベースはできていて、パズルを当てはめるように物事ができていき、ブラッシュアップと言いながらアップデートしてるだけ。人が育たない環境ですよね。

 

吉田 今の仕組みはライン生産の組み立て作業のようなもので、誰に頼んでも一緒になるようなものばかりで、そこに魂はこもらない。

 

小野寺 こういう話は今の若い子たちには大事で、華やかな世界に思われていても、ストレートに上手くいくわけじゃないんだと。

 

吉田 僕なんかはっきり言って失敗の経験しかない。よく小説を書いてみたいという相談をされますが、相談する前に書いてみな、と。僕は普段プログラミングの仕事もしてるのでわかりますが、結局は地道にやるしかない。 

 

小野寺 プログラミングの仕事はどのような流れで? 

 

吉田 中学の同級生が新宿でウェブ制作会社をやっていて、僕はそこのプログラマーなんです。当時は知識ゼロだったので、半泣き状態で必死に覚えました。おかげでパソコンでできることはひととおりできるようになりました。

 

小野寺 東京の仕事を遠隔操作で行うわけですよね。

 

吉田 はい。プログラムを書き換える、構築するという仕事なので、ネット環境さえあればどこでもできます。なので基本的に僕は家から出ません(笑)逆に言うとコミュニケーションが苦手なのでそうなりたかった。

 

小野寺 吉田さんのような仕事の仕方を求める子は少なくないですし、これから増えていく気がします。今はフリーランスの仕事を仲介するウェブサイトなどもありますし。

 

吉田 かっこいい言い方をすれば、僕みたいにモノを書くとか、プログラミングとか、クリエイティブな仕事が一関にいてもできるということ。ただフリーランスでやっていくための入り口を作るのは簡単ではないです。

 

小野寺 フリーランスでやるには商品化できるくらいの技術がなきゃダメで。それには吉田さんのような落選経験も大事。ビギナーズラックで賞をとったって2番目3番目を生み出せない。最近の若い子たちは勢いで何かをしてしまいがちで、1発目は上手くいっても、中身がないから次に続かないことが多い。実力が伴う「職人気質」に自分たちもこだわりたいと思ってます。

 

吉田 僕も夢の場所として目指した場所がいざ辿り着いたら違っていたわけですが、違っていたらそのスキルを使って違うことをすれば良いだけだし、物書きしてることが意味がなかったものだとは思わないです。

 

小野寺 活字離れと言われますが、物書きの立場からはどう考えていますか。

 

吉田 基本的にウェブだって活字でできているし、若い人もスマホで活字を読んでいるわけで。紙で見るかネットで見るかということであって、文字であることに変わりなく、古代からの文字に代わる最上の情報伝達技術はないと思いますよ。

 

小野寺 結局は人の感動の部分ですよね。どんなに進化してもアナログの部分は変わらないというか。

 

吉田 そうですね。デジタルも使うのは人なんで、最後に試されるのは人間力です。ひたむきに歩いた跡が、道になるんだと思います。

| 吉田真童 公式ホームページ

 https://shindoyoshida.com/

 

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