(idea 2015年6月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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対談者 行山流舞川鹿子躍(ぎょうざんりゅうまいかわししおどり)保存会 会員 小野寺秋悦 さん
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹
【センター長】行山流舞川鹿子躍(以下、鹿子躍)で活躍している秋悦さんとお話する機会がつくれました。鹿子躍は最近若い人たちが入っていると新聞などで紹介されて注目されています。秋悦さんが入ったきっかけは何ですか。
【小野寺秋】一番初めは小学5年生の時で、当時の相川小学校では踊りを教わり、運動会で披露することが続いていました。中学・高校の時は踊る機会はなかったのですが、市役所に就職して公民館に異動した今から5年前、そこの公民館指導員さんが鹿子躍を踊っていた人で、誘われて始めたのが再開したきっかけです。
【センター長】偶然と言うか、公民館に移り、しかも誘いが無ければ今の秋悦さんは無かったのですね。
【小野寺秋】それもありますが、家系で曽祖父、祖父も踊っていました。父はやっていませんが、二人とも保存会の会長をしていたこともあり、いずれ自分もやるのだろうとは思っていました。
【センター長】舞川の地域は郷土芸能に関しては市内では一番残っている所ですね。1区は念仏(舞川鉦太鼓念仏)、3区は神楽(蓬田神楽)、8区は獅子舞(善楽流獅子舞)、14区は鹿子躍(行山流舞川鹿子躍)が上げられますね。
【小野寺秋】17区の大黒舞もあります。面積は広いけれど人は少ない所なのに、5つそれも種類が違うものが残っているのは凄い事だと思いますね。鹿子躍には若い子がぽっと入ったことでどんどん続き、関東方面から一関に就職して入った人や中里から練習に通っている女性などもいます。
【センター長】鹿子躍はPRがうまいのかもしれませんね。他団体では後継者がいない、今の人数では踊る体力が無くなったなどの課題が聞こえてきます。鹿子躍は、市内では若い人が入って続けている数少ない保存会かもしれませんね。保存会の雰囲気はどうですか。
【小野寺秋】下の年代が出てきているので上の年代はあまり出てきませんが、自分が覚えてきたことを後輩に託そうとしています。後輩も上手な人の動きを見て覚えようとしているので、雰囲気としては切磋琢磨している感じです。先に上手くなりたいと取り組む雰囲気は良いと思います。鹿子躍は他団体にはあまり見られない跳ぶ動きがあり、体力も必要なので踊りはなかなか難しいですが、足の上げ方や動作の流れはさすが経験を積んだ先輩方です。
【センター長】鹿子躍に若い人たちが入ってくる魅力は何でしょうか。演じたいと思ってわざわざ東京から来た人もいます。
【小野寺秋】パフォーマンス性が高いのかと思います。確かに後継者不足に悩まされた時代が5・6年前まではあったようです。それがあって、たぶん途絶えるだろうと思っていた矢先に若い人が入ってきたことで会の考えも変わったのかと思います。
【センター長】一時の危機感を今の時代に合わせようと思ったのですかね。郷土芸能はその土地に住む人が継承するというイメージが強い。しかし、よその人、その土地に住んでいなくてもやれるというオープンな感じにしたことはある意味成功例ですね。
【小野寺秋】若い人、よその人が入るなど新聞でも取り上げられ、後から入る人が楽になったと思います。
【センター長】現在の保存会のメンバーは何人ですか。
【小野寺秋】今は16人で活動しています。会長、副会長も自然に決まっていくようなシステムになっているところがあります。
【センター長】若い人が多くなり、鹿子躍も何かとコラボするとかアレンジするという考えはないですか。
【小野寺秋】アレンジは無いと思います。鹿子躍は8演目あって、今踊っているのは2、3演目しかない。年配者は全部演じられるのですが、私たちはまだまだです。今年の藤原祭りで演じた演目は何年振りかと聞いたら「何年か分からない」と言っていました。まずは、皆が8演目演じられるようにすることだと思います。続いてきたものを若い人が何かにアレンジすることはないと思います。
【センター長】10年位前にイベント会場を使って、能役者がトランスミュージック(注:ディスコのようなテンポの高い音楽)に合わせて演じるというものがあって、こういう伝え方もあるのかと見ていました。鹿子躍も今風の音楽に合わせてやったりという企みは無いですよね(笑)
【小野寺秋】それはないと思います(笑)イベントとしては良いのかとは思うのですが。8演目が分かるのも年配者の何人かしかいない。その人たちが抜けてしまうと勝手にアレンジになってしまう。舞川では15年前に演目をビデオに撮り、最悪踊れる人がいなくなっても何とか真似できるようにはしています。
【センター長】鹿子躍があることによって、秋悦君のライフスタイルの変化はありますか。
【小野寺秋】練習は週1回ですが、付き合う年代の幅が下は20代、上は80代までと広がりました。このようなつながりは地域行事に出て来ない限りできないと思います。
【センター長】地元で演じることも多くなってきたと思うのですが、プレッシャーなどは感じますか。
【小野寺秋】見てくれる方が知っている人だと、よそでやるよりもやりがいがあります。踊る機会を作ってもらったことに対して、いくらかでも良い踊りを見せたいと思います。
【センター長】保存会の活動が地元にもたらす効果は何でしょう。
【小野寺秋】舞川という地域を周りに発信していることかと思います。今度は山形に呼ばれて行ってくるのですが、踊ることを通して県内ばかりでなく県外にまで舞川という地域を発信していけます。
やってみようと自分も声をかけられ始めました。声をかけてもダメだと思っている人が多いかもしれないけど、今の時代、誘われることが少なくなったので、逆に声をかけられると、自分を誘ってくれた=指名してもらえたような気がして、行ってみようかという気持ちになると思います。人が集まるコツは、コミュニケーションの原点回帰なのかもしれません。
【行山流舞川鹿子躍保存会】
事務局 舞川市民センター
〒021-0221 一関市舞川字中里84-1
TEL:0191-28-2111 FAX:0191-28-2341