(idea 2015年9月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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対談者 一関市立一関図書館 館長 小野寺篤 さん
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹
【センター長】一関図書館は昨年7月に現在地に新築移転しました。オープンして1年が過ぎましたがどのような変化が見られますか。
【館長】利用数が増えたのは当然ですが、今まで利用していない人が利用者登録をして継続的に利用するようになってきました。また、図書館の立地場所が駅前中心市街地で公共交通機関の駅にも近く、高校生の利用や買い物のついでに寄るなどの利用の仕方もあるので、場所も含めて良かったと思っています。しかし、利用されている方は決して多いわけではなく、利用登録者は市民の約30%です。実際には雑誌や新聞だけを見に来る人もいます。登録は継続的に図書館を利用していこうという表れかと思います。
【センター長】雑誌も多くフリーペーパーも置かれていて、図書館は、本を借りる所、閲覧室で勉強する所、というイメージが変わってきました。
【館長】お話会はスペースをきっちり作り定期的に開催しているので、楽しみにして来る方も増えています。お母さんだけでなくお父さんも一緒に来るという利用もあって広がりが出てきました。1階にカフェを作っており、本とは直接結びつかない方でもカフェに来て休んでちょっと2階を覗いていただくことで、図書館はこんな利用もできるのかと広がりも出てくると思います。また、インターネット環境も整備しました。インターネットでの貸出予約もできますし、持ち込んだパソコンを利用できるコーナーもあります。それから、iPadを貸し出すサービスもあります。
【センター長】近代的なサービスが充実していますね。図書館建設のワークショップがありましたが、そこでの意見が反映されていることが大きいでしょうね。
【館長】建設に当たっては、カフェを入れる、スペースを広く取る、書架間を広く作って誰でもゆったり本を選べるようにする、読書テラスを作るなどの声がありました。皆さんの希望を形として表すことができたと思っています。また、障がいを持った方の利用に当たりユニバーサルデザインを意識して建設しました。開館1か月前に障がいをお持ちの方々の団体に見ていただき、指摘された点は可能な限り作り直しました。
【センター長】今、公共図書館ではカフェの併設や業務の民間委託などのはやりがありますが、近隣の図書館を見渡してどう感じていますか。
【館長】規模によって図書館の有りようが違うと思います。規模は小さいが温かみがあるとか地域に特化した図書館もあって当然です。例えば、花泉図書館は木で作った図書館でそれは素晴らしいものです。一関図書館は広い図書館だからこそあえて書架や並びをシンプルにするよう心がけました。また、中央館という位置づけもあるので、他館にはないデータの有料サービスや県内では県立図書館とここしかない国立国会図書館のデジタルサービスも行っています。
【センター長】一関図書館は市の中央図書館という位置づけになりましたが、市内の図書館との連携の部分も含めて変わったことはありますか。
【館長】基本的な部分は条例や規則で定まっていますが、それ以外の細かい部分では統一しておらず、祝日の休館、開閉時間などがバラバラでしたが、中央館ができたことで統一したサービスを提供しようという前提で整理しました。
【センター長】図書館ボランティアがあると聞きましたが、新聞等で取り上げられる病院ボランティアと比べてあまり知られていないと思います。一般的には読み聞かせの人達を思い浮かべますが、どのような活動をされているのでしょうか。
【館長】ボランティアの対応はこれまで各館バラバラでしたが、今年度からは図書館サポーターとして位置づけ、統一した対応をしています。年度毎の登録制として、どのような内容にするかは各館で決めています。お話会は知られていますが、ここではバックヤードでの検品や修理の作業、パソコンの得意な人は図書館で積み重ねてきた資料をエクセルでまとめる作業もあります。花泉では今年から学生を対象にしたサポーターを受け付け、高校生に図書館のお手伝いを呼びかけています。図書館は地域の声を聞きながら運営はしますが、行政だけが運営するのではなく、地域の方が可能なところで一緒に運営する方法もあると思います。それがサポーターで、お話会やバックヤードでの作業の他、花を生ける、飾りつけの手伝いなども運営に関わる一部として可能だと思います。
【センター長】新しい公共施設のあり方として、行政だけが運営するのではなく、市民も一緒になって運営できることは理想的ですね。
【館長】行政も可能なところは取り入れることを考えていいと思います。市民センター(旧公民館)は地域密着なので地域の方とのつながりは割りと強いものです。図書館を利用される方も地域の方ですので、利用だけではなく運営に携わっていただく形での関わりもあるだろうと思います。
【センター長】見せ方がうまいと感じたのが正直な感想です。図書館サポーターがいますと前面に打ち出すと、人が足りないから市民の皆さんお願いしますと思われてしまいそうですよね。
【館長】ここで仕事をして図書館のいろいろな可能性に気がつきました。例えば、サポーターやカフェや実習など、本を借りる調べ物をするという以外の図書館の使い方もあるということです。現在、いちのせき若者サポートステーションの就業体験を積極的に受け入れています。人と接するのが苦手な人はバックヤードでの仕事を、そうで無い人はフロアーでと、その時の状況や本人の気持ちで活動する場所を選んで提供します。そのような図書館の使い方もあり、それができるのが図書館の強みかと思っています。
【センター長】オープン1年が過ぎた一関図書館ですが、今後の取り組みや抱負などをお聞かせ下さい。
【館長】図書館の仕事は、資料を集める・保管する・提供することです。その中で地域の郷土資料を収集して整理して皆さんに提供していくことは、長い目で見て図書館が皆さんに頼りにされていく事につながると思います。それを中心にしながら、新しい人にも利用していただけるように読み聞かせや企画展、中高生の体験学習の受け入れなどをプラスアルファでやっていきたいと思います。
【センター長】公共図書館の基本的な役割はそうなのかと思います。私ども市民活動センター(以下センター)では地域の資料を収集していますので、図書館に置いていただければ提供したいと思います。
【館長】地域の資料は将来に向かった時に貴重な資料になるので、永久保存する必要があると思います。もっと広げて、自治会の出した資料や商店街のイベント資料などは長い目で見れば地域の貴重な歴史です。そのような資料を記録として残すことは図書館の役割と思いますが、幅が広くなりすぎる心配もあります。
【センター長】センターでは各地域から収集した資料をストックしていますので、連携して取り組めたらと思います。また、市の地域おこし事業などで書籍を作っている団体もあり、それらを図書館で保存していただくことで、活動が報われるのかと思います。
【館長】図書館で保存しているのはまだまだ行政資料だけで、市の要覧や観光パンフ程度しかないのが現状です。地域に関わる資料を保存する場所は図書館しかないと思います。地域の様々な資料を広く保存することは図書館がこれから考えていかなければならない部分かと思います。
【センター長】住民レベルの資料は貴重ですね。それと合わせてセンターで発行した資料も提供できればと思います。また、新聞記事のストックがかなりあり、いずれデジタル化したいと考えていますが、ノウハウがないので図書館と一緒にできたらいいと思います。
【館長】地域の資料はデジタル化して保存することが必要です。全国的にデジタルアーカイブスということで図書館でも取り組もうという声が生まれています。
【センター長】地域の情報を集めることはセンターの得意分野なので図書館に提供できると思います。一歩深まる部分のお手伝いをしていければいいかと思います。
【一関市立一関図書館】
〒021-0884 一関市大手町2番46号
TEL: 0191-21-2147 FAX: 0191-21-2107