(idea 2017年9月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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対談者 油島なのはな協議会 地元学研究部会 山川純一さん
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹
【小野寺】山川さんとは、地域づくり計画策定ワークショップの時に出会ったのですが、改めて山川さんについて教えてください。
油島なのはな協議会 地元学研究部会 山川純一さん
【山川】私は栃木県の壬生町出身で、歴史に興味を持ったきっかけは、小学5年生の時にあった地域調べ(史跡などを見てその絵を書いたり説明をメモしたりする)の授業でした。同じ頃、友達から「土器が拾える所があるから行ってみないか」と誘われ、行って土器や石器を拾って「すごいな!考古学を勉強したいな」と思ったんです。そんな思いを持ち続けて仙台の大学に進学し、そこで特に古墳時代について勉強しました。大学を卒業してからは多賀城市、栃木県の埋蔵文化財(調査)センターで嘱託・調査補助員として働き、その後は東京の発掘調査をする会社に10年勤め、仙台市で仕事をしている時に妻と知り合い結婚しました。平成22年、仕事が一区切りしたなというタイミングで、退社して妻の実家がある油島に引っ越すことにしたんです。
【小野寺】なるほど。実際一関に来てみて7年、生活はどうですか?
【山川】もともと、隣接している奥州市や栗原市・登米市・気仙沼市に先輩・後輩がいて、ちょくちょく行き来していたので土地勘はありました。市役所にゼミの後輩が勤めてたんですが、私が一関に来たという情報を聞きつけて「非常勤職員を募集しているから応募してみませんか?」と声をかけてくれて、平成23年からは生涯学習文化課・文化財課で6年働きました。昨年度一杯で任用期間が満了となったので、現在は、岩手県埋蔵文化財センターの期限付調査員をしています。
【小野寺】では、油島でワークショップを行っていた時は、山川さんが一関に引っ越してきて3年目くらいですか?
【山川】4年目ですかね。まだ、油島なのはな協議会が立ち上がる前でしたね。
【小野寺】僕はワークショップで山川さんと知り合い、お話を聞いてすごく面白い方だなと思ってました。
【山川】一関は特に古文書や絵図が残されている地域で、昔の絵図と今の地域を見比べてもほとんど変わっていない所もあるんです。開発が進んでいる私の地元からしたら、凄いことです。
一関の古文書や絵図を調べているうちに「自分のことも調べられるかも」と思い始めて、役所で古い戸籍をとって系図をつくることもやってみました。一関にずっと住んでいる家であれば、誰でも江戸時代のご先祖まで戸籍を遡って調べられますから。すると、○○の家とは何代前は親戚だとかがわかりますよ。自分がどの地域のどこの家の誰と繋がりがあるのか、一度再認識することは重要じゃないかと思っているので、そんな系図づくり講座をいつかやってみたいと考えています。
【小野寺】それは面白いですね!ぜひ協議会でやってください!
【山川】最近の地元学研究部会では、地域の航空写真とか地形図とか、手に入れられるものを入手してから、それを田畑とか宅地を色別に塗り分け、いつ新しく道路ができたとか川の流れが変わり橋ができたとか、そんな地域の変遷を調べられればと思っています。
【小野寺】まずは情報収集からということですね。
【山川】誰が見ても明らかに古い物は、皆さん「残さなきゃ」と思うようですが、近代(明治~戦前)・現代(戦後~現在)の物は我々の生活と同化しているからか捨ててしまう方もいらっしゃるようです。
【小野寺】極端に古いものであれば「残そう」となりますが、中途半端に新しかったり古いものだと捨てちゃうんですよね。
【山川】一関のまちなかにも明治~戦前の建物もかなりあったようでしたが、だいぶ少なくなってますよね。なるべく残すように方法を考えるとか、もし壊してしまうなら、記録をとってから壊すとか。私たちの活動がそういうものを残す一つのモデルになれればと思っています。
【小野寺】素晴らしいですね。ワークショップの内容がそのまま生きて動いてる。
【山川】昔の集合写真やネガだって貴重な資料ですよ。写っている人は会ったことがない人でも、もしかしたらご先祖様かもしれないし。いまのうちにご高齢の方々に写っている人を聞いておかないと。
その人が亡くなってしまったら“記憶”は消えてしまいますが、“記録”は残すことができます。昔の人達はそれを古文書として記録し代々残してきましたが、一関では特にそのような意識が高くどの地域でも古文書や絵図が残っている。絵図を見れば地域的なまとまりもわかりますよ。
地元学研究部会の活動で「蒲沢堤」に標柱を設置した時に撮影した一枚
【小野寺】地域づくりは色々な視点からできますが、山川さんのように地元学とか歴史的なものが得意な方がいれば、地域のルーツを探っていくことによって色々と枝葉が広がっていくと思います。山川さんが所属している協議会の地元学研究部会は率先して事業を進めていると聞きましたが、メンバーの皆さんはどんな方なんですか?
【山川】ほかの部会はあて職が多いようですが、地元学研究部会は興味をもって参加してる方が多いです。
【小野寺】有志のメンバーなんですね。
【山川】もともと協議会が始まる前に、元気な地域づくり事業を2年間やっていたので、その延長で参加している方が多いのかな。その時はお宝マップを作ったりしました。地元学研究部会は10年先まで計画を定めていますが、遅れも出てきているし、きっと10年では終わらないなと。でも、年度ごとの記録集は、今年から毎年出していこうと考えています。地域の各家に残っている古文書や歴史的な物を残すために、どこに何があるのかを地域で知っておけば、災害で壊れたり、水に浸かったり、汚れたりしても捨てずに残さなきゃと思ってもらえると思うので。緊急時などに地域の方が「そういえば○○の家のあれどうなった?」って気にかけるようになることが重要なんですよ。
【小野寺】地域に何があるのかを、地域で知っておくことが大切なんですね。
【山川】そうです。各家にある物を、お借りして、写真に撮ったり複製させてもらった後にお返しします。よければ寄贈していただいてもかまいませんが、保管場所や管理の課題がまだ解決していなくて。でも、いずれ今残さないと、家が代替わりした途端に「こんなのいらない」と一気に処分されてしまうこともありますので。
【小野寺】山川さんたちの活動を聞き「私たちの地区でもやりたい」と、動き出すところが出てくるといいですね。話が広がっていくのはすごくよいことだと思います。
【山川】ご連絡をいただければ、どんな風にやったらよいか私たちが持っているノウハウを伝えられればと考えています。
【小野寺】それはありがたいですね!こういうことは油島だけじゃなく他の地域でも必要ですからね。
【山川】それぞれの地域で同じような取り組みが広がれば、非常に面白いことになると思います。
┃基本情報
【油島なのはな協議会 事務局(油島市民センター)】
住所:〒029-3207一関市花泉町油島字上築道34-1
TEL&FAX L:0191-82-4371