(idea 2017年8月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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対談者 Оn Sunday(s) 代表 工藤 正隆 さん
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹
【小野寺】市内で子どもを対象とした読み聞かせ活動を行っているОn Sunday(s)(以下「オンサンディズ」)さんですが、まずは活動を始めたきっかけから教えてください。
オンサンディズ 代表 工藤正隆さん
【工藤】一関市のI can講座から始まり、1年目に元気な地域づくり事業の「Let’sイクメン講座」、2年目に「Let’s絵本ライブ講座」を受けました。講座を通して知り合ったメンバーで「僕達で何かできればいいね」と話をしていたんですが、そんな時に東日本大震災が起き、メンバーが各々で被災地支援をしていたんです。
【小野寺】1年目に講座で子育て中のお父さん達と知り合い、活動の仕方を考えていた時に震災が起きたのかな?
【工藤】はい。その時はまだ「オンサンディズ」という名前はなく、組織をつくったのは震災1年後の2012年の3月でした。被災地支援をする上で、個々で活動するには限界があるし、信頼を得るためにも、活動の資金を扱っていくためには団体名がほしいということで。その頃は、被災地で活動するためにどうするかという手段の一つが団体をつくることでした。元は学ぶだけのメンバーでしたから。なので、講座で学んだことは各家庭で実践すりゃよくて、別にそれを地域で何しようっていうのはその時はまだなかったんです。
【小野寺】そうだよね、元々は個人のモチベーションを高めて、自分の子どもと向き合おうとか、子育てを楽しもうといったところが目的だったんだもんね。今でこそ一関市内での活動が主だけど、元は被災地支援をするために立ち上げた団体だったんだね。
【工藤】メンバーの中には、当時公民館職員だった方が何人かいて、その関係で公民館での読み聞かせの機会をつくってもらったり、保育園や図書館でもやってみたり、その時あたりから市内での活動が主になっていったんですよね。
【小野寺】チームとして動き始めた時はどうでした?
【工藤】動き出してからは新聞にも載せていただき、おかげ様で間もなく色々と声をかけてもらえるようになりました。でも、活動は月2回までにしようねと制限をかけたんですよ。それ以上やると「何よ人の子ばかり見て!うちの子は見ないの?」って奥さんに怒られちゃいますから(笑)オンサンディズにはミッションがあるし、“ワーク ライフ バランス”よりも“ワイフ ライク バランス”の実現もあり、そういう風にならないよう活動回数に制限をかけました。“身の丈に合った活動をし無理はしない”と。
【小野寺】じゃあ、メンバーがチームに縛られる感じもなかったんだね。
【工藤】全くないですね。
【小野寺】オンサンディズができ、新聞等で「現役のパパサークルができました」なんて報じられたけど、「お父さん達の子育て」を全面的に打ち出したのは、一関ではそれが初だったんじゃないかと思うよ。お父さん達の絵本の読み聞かせという部分では今までにないジャンルをつくったと思うし、男女共同参画で「父親の子育て参加・参画」と言われている中、実際にちゃんとやっている姿を見せつけてくれたんじゃないかなって。
【工藤】「父親の子育て参加・参画」と言いますが、僕の感覚的には、40代、それ以下の男性の子育てはかなり積極的になっていると思います。不思議なのは、活動を応援してくれる人しかいないということですね。月2回の活動も、売り込みをしたのは最初の少しだけで、勝手に集まってくれるし声もかけてもらえるし。最初2年間は市から助成金をいただきましたが、そのほかにも、とある団体さんから10万円分の図書カードをいただいたり、色々なところから活動資金を支援してもらって。本当にありがたいですよ。
【小野寺】すごいね~!なかなかないことだね。高額じゃなくても、ちゃんと活動できるくらいの支援があったのはすごいよ。
【工藤】そうですね。僕はオンサンディズを立ち上げてよかったと思うし、自分達はすごく楽になりました。
【小野寺】今後についてどのように考えてますか?
【工藤】僕達はできることしかやらないので、団体としては続けば続いたらでいいし、なくなったらなくなったでいいと思っています。それが時代とかその時の自分達の忙しさ、家族とか環境に合っていれば、別にいいと思うんですよね。目的は変えないけど、手段は変えてもかまわないし。
【小野寺】「無理しない」とか「身の丈に合わせる」という部分はすごく大事だよね。前に工藤さんは「自分達は後継者を育成してまでも会を維持していきたくない」と言っていたけど、その中で1つ「お父さんの子育ては期間限定である」というのがあったよね。
【工藤】そうですね。今活動に関わっている現役パパ達の子どもも、いずれ絵本の読み聞かせをする年ではなくなるし、ある程度の年齢になれば巣立っていくでしょうし。その期間が終わったら僕達の任務も終わりと考えています。団体を維持するために、若いメンバーに「組織を継承してほしい」ということはしたくなくて、同じようにやりたい人がいれば、別の団体を立ち上げてやればいいと思っています。
【小野寺】組織をつくれば「組織を維持していかなきゃ」という思いが出てくると思うけど、オンサンディズではそれに重きを置かないというのが、初めて聞いた時に「なるほど」と思ったよ。
【工藤】自分の子が今小学5年生なんですけど、僕が本を読んであげなきゃいけない時期が終わってきているから、僕の中でだんだんと当事者意識がなくなっていくんですよね。別に僕が読まなくても子どもは勝手に本読んでるし。小さな子がいる家のパパさんとは、そういう意識の温度差がありますよね。
【小野寺】期間限定の活動っていうのはありだなと思ったし、その視点を持っている工藤さんってすごいなって思いますよ。
【工藤】オンサンディズのために自分達がいるんじゃなくて、自分達のためにオンサンディズがあるだけなんですよ。
【小野寺】その視点もすごく大事ですよね。
【工藤】そもそも、僕達の活動は子ども支援ではなく父親支援なので。父と子のコミュニケーションの仕方を考えますが、それは絵本の読み聞かせでなくてもいいんですよ。キャッチボールでも何だっていいんです。家庭の中で「お父さんにこの本読んでほしい」とか「本を読んでもらって喜んでたわよ」とか、そういう会話が生まれればいいなと思ってやってます。
読み聞かせでは、子どもと一緒に親も楽しみます
【小野寺】そうだよね。そういう視点や考え方がオンサンディズにすごく学ばせられるところだと思っています。今までの「人を集めて組織化させて」というやり方より、自由な集まりをつくって姿形を変えながら活動していくとか、期間を決めてステップを踏んでいくとか、そんな風に変わっていくのかな。
「オンサンディズ」という組織は子育てを充実させるためにつくった組織だし、子どもの成長と共に、読み聞かせが必要な時期が過ぎればその役割を終える「期間限定」という考え方、そういう発想は今までにないと思うし、すごくよい問題提起を社会に投げかけたなって思います。
┃基本情報
【Оn Sunday(s)】
岩手県一関市の父親を中心に結成した絵本ライブチーム。楽器や歌を交えて「絵本を使った子どもとのコミュニケーション」をモットーに活動しています。
TEL 090-4478-9433(代表 工藤)