(idea 2025年5月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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アムステルダム(オランダの首都)にある「LOSDOK GALLERY」にて、日本のアーティスト17人の作品とともに
展示された(令和4年)。東山和紙のパネルを藍染めし、イラストの上から東山和紙を貼っている。
東山町出身のイラストレーター。高校を卒業後、北欧の園芸学校へ進学し、20年ほど前に地元へUターン。あたたかみがあり、寄り添うようなイラストを手掛け、市内外の企業やイベントなどで幅広く使用されている。イラスト関連の活動だけでなく、東山和紙(とうざんわし)を使用したワークショップや地域の企画等にも携わる。
対談者 イラストレーター 戸田さちえさん
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹
出身地・東山町のみならず県外等でも活動しながら、あらゆる場面で活用され長年愛されるイラストを手掛ける戸田さちえさん。前編では、イラストレーターとしてのこれまでを振り返りつつ、その原点と現在の活動について触れてきました。今回は、戸田さんがワークショップを始めた経緯についてと、その活動の意図や伝えたい想いについてお話いただきました(2回シリーズの後編。前編はコチラ)。
小野寺 前回は、多岐にわたって活動されているイラストレーター・戸田さちえさんの起点についてお話していただきました。活動の一つである、和紙のワークショップについて詳しく伺ってもいいですか?
戸田 東山和紙を使って箱に自由にコラージュするワークショップでは、「自分は箱にどういう風に和紙を貼っていこうかな?」と考えながら、好きな形に割いて貼っていく作業をしてもらいます。和紙を割いていくと繊維が見えてくるので、私から参加者のみなさんに、「なんで繊維ができると思う?」とか、「繊維は植物だよね。植物は何で大きくなる?」と投げかけ、これは「命」だということを伝えています。
小野寺 そのワークショップは大人向けにも開催されているんですよね?
戸田 はい。大人の方の中には、「自分で好きに」と言われても、手を動かすことができない人がいたりします。今まで「手本」が用意されてきたから、「自分の好きって何?」となってしまうようです。私のワークショップは、責めるわけでも完成を求めるわけでもないので、素材を触って感じながら、自分を見つめ直してもらうきっかけにしてもらいます。「自分に向き合うことをやってこなかったんだ」と、分かるだけでも大切なんです。
小野寺 学校でいうとテストの成績だったり、会社でいうと営業の成績だったり、目的やゴールを決められて、成果や完成形ばかり求められてきた時代がありました。自分の好きなことではなく、敷かれたレールに従って動かなければいけなかった人が多かったように思います。
戸田 そうですよね。完成に向かって生きているわけじゃないのに、「なんでそんなに早く完成を求めているんだろう」と、以前から不思議に思っていました。子どもたちの心ふんわり柔らかい時期に、「自分とは?」に気づく機会があることが一番理想なのですが、実際は、みなさん習い事とかでいつも忙しいですよね?「色んな人に気づいてもらうために、どう動いていけば良いのかな」と悩んだ末、自分自身が楽しんでいる姿を見てもらおうと、和紙のワークショップなどをやり始めたのですが……。
小野寺 そんな経緯があったんですね。参加者の反応はどうでしたか?
戸田 その場では、「自分の大事なものに気づいてくれたな」と、みなさんの表情などを見ていて感じ取れるんです。でも、それを活かして日常を生きていけるのかといったら、そうではなくて。「本当の自分のまま」では、生きていけない世の中になってしまったんです。
小野寺 すごく共感できます。おっしゃる通り、世の中を見ていると、生きづらさを感じている人がたくさんいて……。結果を残すことが求められるような生活では、豊かな心も育ちにくいですよね。
戸田 結果を残せば、自信を付けることはできるかもしれません。よく、「生きていくのに自信を付けるのが大事だ」と言われていますが、私は、「『人に評価される』ことで『自信』になる」と思うんです。私がみなさんに持っていて欲しいと思うのは、「自尊心」。「自分は自分が大好き」だとか「自分はこれがあれば生きていける」とか、自分の中の「一番大事」な「光」を持っていれば、どこへ行っても、評価されても評価されなくても、大丈夫だと思うんです。でも、それを見つけるきっかけがどこにもない。それって、良いのでしょうか?
小野寺 なるほど、人の評価に依存しない自分の価値観や感性を育むためには、「あなたは間違ってない」と教えられるような機会がとても重要になってきますね。
戸田 そうなんです。自尊心はきっと、楽しいことをやっているときに生まれるのだと思います。それを育むためには、世の中の仕組みを学べる場と、探求できる力が必要で。ワークショップをやっていると、「この子は世の中のもっと深い話を知りたいんだろうな」と感じる子に出会うことがあります。でも、学校ではちょっと言いにくい空気を感じているみたいなので、そういう時期に、大人も子どもも、みんなで考えられると良いだろうな、と。
小野寺 そうですね。当センターで本誌を発行しているのは、色んな考えを市民に広めたいという気持ちもあるんです。一人ひとりの市民力を高めて、心の大事なところをケアできるような人材が今後もっと増えてくれればと願っています。その他の、和紙以外のワークショップはどのような形なんですか?
戸田 はい。子どもたちに楽器をそれぞれ持ってもらって、円になり、自分の中でイメージする音を鳴らしてもらうというワークショップをやったこともありました。何かを体験すると、何かしらを感じるものがあると思いますが、そこで感じたことは、自分の「ポケット」になっていきます。私は、生きていく中で、心にいっぱいポケットがあるといいなと思うんです。ワークショップをやるのも、「結果を求める」のではなくて、「ポケットづくり」なのかなと思っています。
小野寺 「引き出しを増やしましょう」という言葉は私もよく使いますが、なるほど、ポケットという表現は素敵ですね。
戸田 ポケットには、私はいつも「光」を入れて歩いています。前回お話した、「私は『絵を描いている』という感覚が無い」というのは、筆をはしらせているとき、「自分が拾ってきた『光』が絵に入っていく」という感覚でいるからです。光は目には見えないものですが、私の作品を見てくれた人から「涙が出た」「感じた」と言ってもらえると、「『光』が伝わったんだな」と思います。
小野寺 戸田さんの伝えたい想いや大切な光が、あたたかみのある作品に繋がっていくんですね。地域づくりを支援する立場として、とても考えさせられるお話でした。
開館時間
9時~18時
休館日
祝祭日
年末年始
(12月29日から翌年1月3日まで)
いちのせき市民活動センター
〒021-0881
岩手県一関市大町4-29
なのはなプラザ4F
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FAX:0191-26-6415
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せんまやサテライト
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