(idea 2016年12月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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対談者 Hirasawa F. market オーナー 熊谷志江(ゆきえ)さん
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹
【小野寺】最近は古民家をリノベーションしてカフェにするなどの動きがポツポツと出てきており、地域の空き家対策についての関心度の高まりが見えてきています。そんな中、地域の方から「Hirasawa F. market(以下「Hirasawa」)ではどんな風にやっているの?」と聞かれることがあるので、今回この紙面を通してご紹介したいと思い、この場を用意させていただきました。お店のオープンから一年が経ちましたが、まずはその率直な感想を教えてください。
Hirasawa F. market オーナー 熊谷志江さん
【熊谷】本当にあっという間でした。当初の予定では近所の年配の方々が作った野菜をお店で売りたかったんですが、高齢で売れるほどの野菜をつくれなくなったのと、地元の兼業農家の方たちはまだ野菜の育て方を試行錯誤している段階で品物を出せないという状況だったんです。そんななか、おおすみファームさんやトマガールさんなど、若手農家の方々が地域にいるんだということを知りました。その方々が作る野菜は、私たちがつくる野菜とは格段に味が違い、それだけ手間暇をかけて研究をしているんです。私やお店の職員は元々お料理が好きなんですが、プロの料理人ではありません。それでもお料理に使う素材がよいので、そんなに凝ったことをしなくても美味しいものができるんです。ただ、お店に商品を置いてくれる農家さんのことを考えると、私たちのお店に置くより産直で一度にたくさんの量を売った方が効率的ですし、うちのように少しずつ商品を置くとなると採算が合わないんですよ。でも、お店の雰囲気を気に入ってくださったり、お店のお客さんにお料理を通じて野菜を食べてもらうことで品物のよさを提案できることが嬉しいんです。実際に農家さんがお店に野菜を納品してくださっている時に、その野菜を使っているお料理を食べていたお客さんと直接コミュニケーションがとれた時があって、農家さんは「それがすごく嬉しい」って話してくださいました。
野菜をはじめ地元の品物が並ぶ店内
【小野寺】この平沢という地域には、商店もなくなり、ちょっとした買い物をする場がない、お茶をする場がないという意見(課題)を聴くようになっていたところに、このお店がオープンしました。
【熊谷】オープンの日だったのですが、地元の地域のご高齢の女性が食事をしに来てくれたんですけど、年配の方だから和食だろうなと思ったところ「外食するんだから普段食べない洋食にする」と言われた時は少し驚きました(笑)それは余談ですが、地域との関わりは、つかず離れずの関係ですね。お客さんの割合としては外の地域から来る方が多いんですが、お店でイベントを行う時は地域の方にも協力してもらったり、地域の話し合いの場に利用してもらったりしています。
【小野寺】7月に開催した「いろいろ市」では、地元平沢ブースが出ていたり、平沢の方が駐車場係をしてくれたりしていましたね。
【熊谷】そうですね。本当は地元の方の野菜を置いて、地域に貢献したいという想いがあったんですが、今は逆に貢献されてばかりです。ここに引っ越してきて、温かくしてくれた恩返しの意味もあるんですが、そんなのおこがましくて・・・。あと何年経ったら地域に恩返しできるのか・・・。
【小野寺】そんなことないと思いますよ。ここでこうして新しい起こりが起きたことで、地域の人たちは喜んでいるじゃないですか。よかったなと思ったのは、やはり平沢郷づくり協議会の立ち上がりのタイミングと同時に志江さんの計画があり、そこで地域の方と合意形成がとれたというところだと思うんですよね。
【熊谷】平沢でお店を始めたいということを区長さんに話して、そのあとに相談に行ったのが小野寺さんでした(笑)その時に、協議会につないでもらって、別の区長さんから空き家を使っていいよと言ってもらえるタイミングがあったからなんですよね。最初、私が協議会の話し合いに参加していいのかなって不安でしたが「いいんだよ、いいんだよ!」って言ってもらえて安心しました。
【小野寺】志江さんの気持ちを平沢の皆が受け入れてくれた瞬間でしたね。連携って、何かを一緒にすることだけではなくて、知恵を出し合うことも立派な連携で、平沢の場合は、志江さんの想いを聴いて、区長さんたちが相談しあって、物件の紹介だったり、協議会でも応援していこうと決めて、今ここにあるんですよ。
【熊谷】そうですね。でも、「頑張って!」と私を応援してくれていた方の中でも、心では「大丈夫かな」と心配していた方もいたようでした。
開店前の話し合いでは、区長さんから「計画が甘い」とか厳しい意見を受け凹んだこともありましたが、後でそれが親切心からの意見だと気づいた時は本当に感謝の気持ちでいっぱいになりましたね。
【小野寺】経験を持っている区長さんたちだからこそ厳しくも、いい意味での心配をしてくれていたんですね(笑)あと、協議会の集まりの時に、迷惑だったかもしれませんが、進捗状況やオープンしてからの様子などを伝えてもらうようにしたこともありました。
【熊谷】そうですね。そういうこともあり、地域の方には知っていただけました。弥栄市民センターさんはここでイベントを開いてくれたり、何かのイベントに行けば「Hirasawaです」と言えば歓迎してくれるし。
【小野寺】オーナーは志江さんだけど、平沢郷づくり協議会のメンバーも立ち上げの経緯を知っているから、平沢の店という意識が地元の人たちにもあるようですしね。
【熊谷】平沢の人たちがよい人たちなのかな。
【小野寺】リノベーションする時に、地域の子ども達も一緒にしっくいを塗ったりしたじゃないですか。その関わった小さな経験が、地域の人たちも「一緒に頑張ろうね」という気持ちになっているんだと思います。
【小野寺】将来的に目指していきたい姿は何ですか?
【熊谷】その質問はよくされるんですが、軸は自分自身で、日々私が感じたことや思うこと、お客さんや生産者さんや地域の人や自分が喜ぶことを形にしていきたいと思っています。
いきなりたくさんはできませんが、地域の皆さんのお力を貸していただきながら、少しずつ実現していきたいです。皆さんに喜んでもらえると、私もやりがいを感じますし一緒に嬉しくもなりますので、これからも皆さんにとってそんな気持ちになってもらえるような素敵なお店を目指して頑張っていきたいと思います。
┃基本情報
【Hirasawa F. market】
住所:〒029-0211 一関市三関字神田23-3
電話:090-7522-2103(熊谷さん携帯)
e-mail:yksan39@me.com
facebook:https://fb.me/Hirasawa.food.market