(idea 2021年2月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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【特別企画】一関市広報『I-Style』2021年1月1日号の特集として行われた対談の中から、誌面には掲載されなかった話や、文字数の関係で大きく割愛された内容を再編集にてお届けします。当センター長も含め5名での対談のうち、本号では芦謙二さん(写真左)、梁川真一さん(写真右)のお話を、次号では水谷みさえさん、大林学さんのお話を取り上げます。
対談者 芦農園 代表 芦謙二さん 「街なか産直 新鮮館おおまち」店長 梁川真一さん
芦農園 代表 芦謙二さん
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹
新型コロナウイルスの感染拡大により、様々な「転換」が求められる中、コロナ禍以前から、少子高齢化やそれに伴う働き方改革、AI化、非対面型消費などに取り組み続けてきた企業等にとっては、実は、コロナ禍が逆風ではなく、追い風になっているという現状が。常に時代の先を見据えた事業展開を図る4人から、今こそ私たちが持ち合わせるべき「視点」を探っていきます。
小野寺 芦君は農業生産者の立場でありながら「楽天」などのインターネット通販に参入していますが、きっかけは何ですか。
芦 農協ではなく、少しでも高く販売できる場を考え、比較した中で、手っ取り早いのが楽天だと思ったんです。そこで、楽天(※1)に出品されているトウモロコシを買い漁って、自分のトウモロコシと比較した時に「これなら楽勝でトップに行ける」っていう自信が持てたので、出品することにしました(笑)
※1 楽天株式会社。インターネット関連サービスを中心に展開する日本の企業。芦農園では「楽天市場」に「農家のおめ ぐり菜」という通販店を構えている。
小野寺 簡単に見えて結構な挑戦ですよね。
芦 高く売ることが目的だったので、市場単価より高く売るためには付加価値を付けなければいけない。逆に言えば付加価値のある商品を揃えていけば勝負できます。
小野寺 付加価値で言えば、産直も頑張ってますよね。
梁川 出品農家さんの名前が見えるというのが産直の大きな武器ですが、今までの産直って農家さんが勝手にものを持ってきて並べて、と、出品農家任せという感が強かったと思うんです。芦君のように自分で付加価値を付けられる農家さんは良いのですが、そうではない農家さんも多いので、農家さんが苦手とする部分を、僕たち経営側がやっていこう、引き出していこうと頑張っているところです。
小野寺 インターネット通販は画面を通しますが、顔が見えるという点では産直と同じで、結局は対面ですよね。どれだけオンライン化(※2)が進んでも、人との関わりという点は変わらないんでしょうね。
※2 対面や紙媒体で行っていたことなどを、インターネットなどの情報通信技術を利用して行う、もしくは行える状態にすること。
芦 人との関わりと言えば、今年から他の農家さんに委託して作ってもらった農産品をインターネットで販売することを始めました。自分ではうまく作れなかったけど、売れる「隙間のある品目を、自分もリスクを被るからという条件で作ってもらって出品する。僕がディレクターのような働きをするわけですが、僕への仲介料を払ったとしても農協に出荷するより利益率が高いという状況を生み出していきたい。インターネット通販の場合、1年目は赤字でも、2年目からは口コミで勝手に動いていくことが多いので、2年目に回収すれば良いやという気持ちでやってます。
梁川 僕も芦君と仕事することがありますが、彼との仕事は楽しいですよ。彼が楽しそうにやるから引っ張られるというか。
小野寺 一つの仕事を一つの仕事で完結しないで、一つの仕事に対していろんな人が関わっていくことが楽しい、と。そういう感覚が今後は必要でしょうね。
芦 コロナ禍の影響で、みんなが楽しく仕事する上での気づきとか改善点を作業の現場でも共有することを始めたんです。うちのパートさんは年齢や国籍も様々なんですが、年配チームはどちらかと言うと危機感が薄かったので、最低限のルールを決めたりするうちに、結果的に職場内が良い方向に回り始めて。
小野寺 コロナ禍でのポジティブな業務改革はすごいですね。
芦 密にならないように作業時間を分散させたんですが、年配チームは早朝に収穫を終えて作業に入るので、リクエストに応えて渋い曲をBGMにして、若い子が多い時間帯は流行の曲を聴くとか(笑)そんな楽しみを作りながらも、通販サイトに寄せられたレビュー(※3)や、お客様との直接的なやり取りなども随時共有しながら、みんなで業務改善を図ってます。
※3 様々な意味があるが、ここでは)取り寄せた商品や通販サイトを利用しての評価等を投稿すること、投稿された内容
小野寺 コロナ禍をチャンスと捉えているわけですね。
芦 追い風でしかなかった事業もありますね(笑)これが長期化すれば人の価値観はもっと変わってくるでしょうし、何のために仕事をするのか、数字が全てではなく、感覚として楽しいと思える部分を大事にしたいなと思うんじゃないかって。
梁川 お金をかければできることってたくさんあるけど、お金をかけなくてもできるんだっていうのを見せてやりたいという想いは強くなってますね。例えば都会では当たり前になっている飲食店の宅配サービスのような事業の準備を進めていますが、「田舎でもできるんだぞ」というのを見せてやりたい(笑)しかもそれを、新たに起業するとか専門の業者を使うのではなく、地元のタクシー会社や、商店街にいるシステム開発が得意な会社と組むとか、そういう人たちで集まってやりたいんです。
小野寺 あるものは上手に活用していくということですね。担い手でいけば、1次産業は専業でやろうとすると難しくても、季節労働のような考え方をすれば担い手がいたりするのでは?
芦 うちはまさに全員パートです。冬場は警備会社に行く人や、りんご農家に行く人も。一年を通しては働きたくないからって冬場はお休みする人もいますし。当初は3人くらい年間雇用をと思ってましたが、今のような体制も悪くないなと思っています。
小野寺 昔の農家さんもそんな働き方をしていましたよね。冬は他の働き場を紹介するよ、という仕組みがあると良いですね。
芦 そのためにも人が集まる、人がどんどんつながるような場所が必要だと思っていて。公園の横にカフェがあって、ママたちが食事する横で子どもたちが勝手に遊んだりできるような場。大東にできる予定の道の駅にそんな場が隣接できれば、道の駅内の産直の収益にもつながるので、僕も所属する渋民振興会の部会で検討中です。つながりが新しい価値を作るし、人と人との距離が離れていかないように。
梁川 産直も、インターネットとは逆の「実際に商品が集まっている」という強みを活かして、もう一歩踏み込んだところに手を出したいですね。
小野寺 一関は「中途半端になんでもある」ことで、逆にないものねだりしてしまいますが、「いかにこのまちで暮らしていけるか」という視点が重要になってくる気がしますね。
(2回シリーズの前編 ★後編はこちら)
芦農園
電話 0191-75-4049
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新鮮館おおまち
電話 0191-31-2201