(idea 2025年3月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
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令和5年6月号から本誌の表紙写真を担当。写真は、東光山観福寺(一関市舞川)の観音堂にて、
本誌令和6年6月号の表紙写真を撮影する様子。
一関学院高等学校から東京農業大学へ進学。卒業後は秋田県内の企業へ就職し、フィリピンへの語学留学を経て、令和2年に地元へUターン。フリーランスのフォトグラファーとして地元で活動しながら、写真教室や情報発信ツールの講師依頼にも対応している。一関市室根町出身・在住。
対談者 フォトグラファー 遠藤凌平さん
聞き手 いちのせき市民活動センター センター長 小野寺浩樹
市内で写真撮影を生業とする企業や個人が多い中、写真教室で講師を務めるなど露出があり、地域から特に親しまれているフォトグラファーの遠藤さん。活動の背景には、地域をつくる根本である「地域らしさ」を残していきたいという想いがあり……。今回は、各地をまわって活動してきた目線から、地元・一関市の未来について考えます(2回シリーズの後編。前編はコチラ)。
小野寺 地元のアイデンティティが失われていく危機感から、「地域らしさ」という価値を発信・記録していく活動をしている、というお話がありました。
遠藤 はい。ただ、世間の大きな流れは変えられないと思っています。でも、残しておけば、またいつか復活できるかもしれないし、後からそれらの価値を再発見することができる。完全になくなってしまうと、復活できなくなってしまいますから。
小野寺 郷土芸能など、映像として記録していく流れになっていますよね。
遠藤 そうですね。永井地区郷土芸能伝承保存会から話を聞いたとき、「昔は娯楽としても親しまれていた」と教えてもらいましたが、現代は娯楽が選び放題ですし、「新しくてみんなが『良い』と言っているもの」に集約されていったのだと思います。伝統芸能は現代のものに比べたら地味に見えるかもしれませんが、見かけだけじゃなく、中身の方に良さがあると感じています。
小野寺 日本の伝統は、一つひとつに祈りや願いがありますからね。
遠藤 そういった「良さ」や「らしさ」を海外に行ってから初めて気づいて。時代を切り拓いてきた人たちがいるからこそ豊かな国になったわけですが、失ったものもあって……。現在、様々な原因から日本の経済が落ち込んできているという現実もあり、その危機を自分事として捉えていかないと、地方は特に早い段階で衰退していくと思います。大体の人は、なくなる直前になって「あぁ、○○ってなくなるんだ」と初めて気づきますよね。なくなる前に何とかしなきゃいけない。
小野寺 地域の力だけで、あれもこれも守って残すというのは難しくなってきましたよね。マンパワーがなくなってきたというか。
遠藤 それは地元に戻ってきたときに感じましたね。引き継いできたものを全部守ろうとして、みんな疲れ切っていたので、この状況はすごくまずいなと。当事者が疲れ切ってしまうとイベントなどの勢いもなくなり、「だったらもうやめよう」となってしまう。残された人たちがただ苦労して辛くなるだけにならないように、その人たちが報われるように支援ができればいいなと思っています。
小野寺 「室根神社祭のマツリバ行事(本誌令和6年11月号で紹介)」にしかり、「維持する」というのは想像以上に大変なことで、現在まで残してくれていることに感銘を受けます。
遠藤 これまで守ってきた「お祭り」「伝統芸能」「風習」などが、地元のアイデンティティであり、地元人のベースをつくっているのだと思うので、それを失くして、日本人の平均的な形だけが残るのは違うと考えています。一度倒れて(廃れて)しまったら、また起こすのに人や時間、お金がかかってしまうので、危機感を持ってほしい。
小野寺 いますぐに「地域らしさ」が出来上がるわけではなく、その地域が紡いできた歴史などが、その地域らしさをつくっているということですね。昔の人が続けてきた伝統には、生きている幸せを感じるための要素が強くありました。
遠藤 昔とは暮らし方が違って、「より豊かに生きていくにはどうすればいいか」を考えてしまう。「生きている幸せ」よりも上を求めてしまうから、苦しくなったり、何かがおかしくなったりするのだと思うんです。今は、ほとんど餓死もないし、「○歳までは死なない」と思っている人が多いですよね。1日1日を必死に生きていないから、「明日でいいや」と先延ばされていく。そうやって生きていくと、色んなものが知らないうちになくなっていきます。
小野寺 今の日本は生きていることが当たり前に感じる時代なので、祈りや願いの意味が薄くなり、伝統も形骸化し、廃れていったのかもしれません。
遠藤 地元から出なかったら気づかなかったことなので、一回地元を離れ、客観的に地元を見てみるのは大事だと思います。違う文化に触れると、当たり前が当たり前ではないと気づきますから。
小野寺 当センタースタッフもUターン就職が多く、遠藤さんと同じ経験をしています。
遠藤 無理やりに地元に残って就職するよう押し込めるんじゃなくて、外に出て行って色んな価値観や知識を吸収して戻って来てもらえば、より良いものがつくれると思うんです。地元を出て行った人が戻りたくなるまち、そして、残った人たちが損をしないまちにしなきゃいけない。
小野寺 「地元に戻りたい」という気持ちは、心の成長過程で生まれるのでしょうね。一関の暮らしの中の文化や根付いているものがあるからこそ、地元に懐かしさを感じ、守りたいという気持ちになっていくのかも。東京に行くと、地方の自慢大会とかやりますよね。
遠藤 あるあるですね(笑)。「おらほでこいづ作ってんだぞ!」って。
小野寺 そう、あれが日常的にできると良いですよね。身近にあるものが当たり前すぎて、特別に感じないのかもしれません。「一関といえば?」と聞かれたとき、市民のみなさんが「これ!」と自信満々に答えられるようになるといいですよね。
遠藤 一関市は「観光」や「移住・定住の支援」にも力を入れているかと思いますが、地元の人が「おらほに何もない」って言ってしまう状態なのは、外から来た人にマイナスな印象を与えてしまう。地域間の「垣根」を感じることも多々ありますが、今こそ市全体で連携していくべきだと考えています。
小野寺 「何もない」ではなくて、当たり前であることに価値を見出していきたいですよね。一関市を持続させていくために、改めて地元の価値を認識し、一人一人が後世に残すための努力をしていかなければいけません。
開館時間
9時~18時
休館日
祝祭日
年末年始
(12月29日から翌年1月3日まで)
いちのせき市民活動センター
〒021-0881
岩手県一関市大町4-29
なのはなプラザ4F
TEL:0191-26-6400
FAX:0191-26-6415
Email:center-i@tempo.ocn.ne.jp
せんまやサテライト
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