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(idea 平成26年6月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
一ノ関駅から北西900m、旧一関図書館の裏に位置する世嬉の一酒造株式会社は、大正7年に建築された「酒の民俗文化博物館」や「石蔵クラストン」を始め、ビール工場やレストラン、酒の直売所等が敷地内に並ぶ酒造会社で、1957(昭和32)年に株式会社化。
平成7年には、地元企業5社で協同組合「いわて蔵ビール」を立ち上げ、風味や微量栄養素を損なわないよう、ろ過、殺菌を一切行わない、新鮮で健康的なこだわりのビールを醸造しています。
今回お話を伺った代表の佐藤さんが今の道を志したのは、大学生の頃。大阪府や広島県出身の友人のお国自慢を聞き、「岩手は自慢できることがあるのに、それを認識していない(話さない)人が多いのではないか」と気付き、「岩手・一関をビール造りで自慢できるようにしたい」と決意。30歳の時に一関へ帰郷し、平成24年の4月に4代目となる代表に就任。ビールの開発・醸造を行いながら、地域の方々が、より世嬉の一に気軽に立ち寄れる環境作りを目指しています。
同社が醸造するビールの中でも、特に地元食材を使ったビールは多くの品評会・大会で金・銀・銅賞を受賞しています。
濃厚で味に奥行きがある「オイスタースタウト」は、陸前高田市産の牡蠣を使用しており、アメリカやシンガポール、アジアへ輸出。柑橘系の味がする「ジャパニーズハーブエール山椒」は、新鮮館おおまちで取り扱っている山椒を使用しており、共に国際大会で金賞を受賞しています。「『世嬉の一で造ったビールが世界で評価されているのは、地元食材が美味しいから』ということを地域の人達に知ってもらい、外の地域で『一関はいい所だよ』と語れるような商品づくりができればいいですね」と佐藤さん。
また、佐藤さんは、夏に行われている「全国地ビールフェスティバルin一関」の実行委員を務めています。今や「日本一楽しい野外のビールイベント」と言われ、海外からもファンが集まりますが、その集客の理由は料理にあります。
一般的なビールイベントは、主役となるビールと相性の良いハムやチーズ等のおつまみ系の料理を出しますが、一関では料理の出展要項に「地元食材を使うこと」と定め、必ず一関市内の企業から材料を仕入れるという規則を作りました。「値段は高くなりますが、地元の食材が美味しいから人が集まるんです」と佐藤さん。昨年は、天ぷら蕎麦まで販売されたということには驚きです。
「食を強化する」という方針は、地ビールフェスタを「大人だけではなく、子どもも含め家族全員で遊べるイベントにしたい」という想いが込められています。「子どもが騒ぎ喜ぶ表情を見て、大人も笑顔になる。まちおこしのイベントは、そういったことも大切ではないでしょうか」と話します。
佐藤さんは、「僕らはまちと共に生きていく企業です。一関を盛り上げていかないと、世嬉の一も盛り上がりませんので、これからも商品づくりやイベントを通じて地域を豊かにし、市外の人は『一関はいい所だ、また来たい』と感じ、地域の方は『一関っていい所だ』と自信を持って外に発信できるようになってほしい」と笑顔で語ってくれました。