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千厩町にある佐々木製籠店は、佐々木伍介さん(二代目)の父(初代)が、15歳で旧弥栄村の竹細工職人に弟子入りし、数年の修業後、地元千厩町で独立。店舗を構えず、当時は交通手段も少ないため、農家などに1か月程度住み込みをしながら、近辺集落で必要な竹籠などを製作していました。現在は伍介さんの息子さんである三代目の佐々木博典さんが、その技を継承し若者の目線でその技術や製品の魅力を発信しています。
(idea2019年8月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
戦前、竹を加工したり、竹ひごを編み込んで細工物を作ったりする竹細工は、農業や家畜業、家庭の日常生活で重宝され、生活の必需品となっていました。戦後、高度成長期と共にステンレスやプラスチック製のザルや大きな入れ物が主流となってからは、その需要が低迷し、受け継がれてきた技が全国的に衰退しつつありました。
「いずれこの仕事はなくなるだろうと思っていた」と当時の状況を振り返るのは、佐々木製籠店二代目の佐々木伍介さんです。幼い頃から父親(初代)が作る竹細工に興味を持ち、小学生の頃に父親の手伝いをしながら技術を学んだ伍介さんは、竹細工の視野を広げるべく神奈川県や青森県で修業を積み、昭和47年に住宅兼工場である「佐々木製籠店」を現在の場所に構えました。「田舎なので、その年代の頃はまだまだ竹細工の需要はありましたが、平成に移り変わってからは、この地域でもプラスチック製や輸入品が増え始めその需要は年々衰え始めました」と語る伍介さんは「私は籠づくりが好きだから」と、閉店することなく地域の少ない需要に応えながら竹細工業を続け、今その技術が息子へと引き継がれています。
三代目の博典さんは、高校を卒業後、地元企業に就職し観光写真カメラマンとして従事していましたが、社会経験や多くの人との関わりの中から「伝統の技を失くすのはもったいない」という思いが強まり、平成29年に父の後継者として技を磨くため退職しました。
「今も昔も変わりなくお客さんから店頭などで注文をいただき、その用途や大きさをヒアリングした上で一つ一つ製品を作り上げていますが、竹細工は今『伝統工芸品』として注目されつつあり、日常生活用品というよりもインテリア・装飾品という形で用途が変化している部分もあります。しかし、製作する技は昔から変わらないんですよ。ずっと引き継がれてきたものなのです」と、博典さんは父の伍介さんを見つめて語り「1つの製品を仕上げるにはかなりの集中力が必要です。父は87歳と高齢になり、昨年体調を崩したこともあって長時間の製作は体に負担がかかることから、今はアドバイスをもらいながら引き継いでいるところです」と続けます。
博典さんは、これまで同様、昔からのお客様も大切にしながらその要望に沿った竹細工製品の製作に取り組んでいますが、「竹細工の技術・製品を多くの人に知ってもらいたい」という想いから、工場見学の受け入れや企画展(イベント)などへの参加で、同業・異業種間交流やお客様との交流など積極的に活動を展開しています。最後に、「今後は籠だけではなく、大型実用品(椅子など)にも挑戦したい」と語っていただきました。
三代目佐々木博典さん(左)と二代目の伍介さん(右)「息子が継いで嬉しい」という一言が印象的
山で竹を伐り、割(製品にもよりますが約1mmの薄さ)、しならせ、細工という工程で、一つ一つが手作業
竹は親戚の山に自生する真竹を使用
DATA
〒029-0803 一関市千厩町千厩字前田85-1
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