毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第12話(idea 2020年3月号掲載)
「持続可能な地域(地域振興、娯楽、産業等)を考え、地域の担い手を育てる拠点」として設置された公民館(現市民センター)。時代の変化に伴い、その在り方は変化してきました。しかし、社会教育の拠点、地域住民の拠り所としてはいつの時代も変わらず存在し続けているものなので、しっかりと機能することが望まれます。
いまの市民センターの課題の一つに「カルチャーセンター化」が挙げられますが、実は市民センター事業を見てみると、さりげなく脱カルチャーセンターの取り組みも見ることができます。
第11話でも触れたように、社会教育の役割は、現代的・社会的な課題に関する学習を通じて、地域住民の意識を高め、地域づくりの実践に結びつけることですが、考えなければいけないのが現代的課題・社会的課題です。学校教育と違って、社会教育はプログラムのマニュアル化が難しいとされます。学校教育は、子どもの成長に合わせて取り組むことをパッケージ化しやすいですが、社会教育の場合、現代的課題・社会的課題は時代の変化と共に日々変化するもの。プログラムもその変化に対応させていかなければなりません。
例えば、特殊詐欺に関する講座や高齢者のスマートフォン教室を開催している市民センターもありますが、これは、現代的課題に対応した事業であると考えられます。特殊詐欺は近年増加傾向にあり、ちょっと前の時代にはなかったものです。同様にスマートフォン教室も、高齢者もスマートフォンも持つようになったものの、使い方が難しくて使えていないという現代的な課題に対応したものです。では男の料理教室はどうでしょうか。単なる教養としての講座のようにも見えますが、実は、核家族化や老々介護により、男性でも料理をしなければいけないという状況が増える中で、これまで包丁も握ったことがないという男性がいざ必要となった時のために、基本の「キ」から教えるというのが真の狙いであり、まさに現代的課題に対応したプログラムと言えるでしょう。
ところで、現代的課題に対応した事業を創り出すためには、地域の課題やニーズの発掘が事業の視点となります。地域の課題やニーズは、「地域」からしか見えてきません。決してパソコンの画面とにらめっこしていても出てこないのです。だから、地域づくりの現場と市民センターはイコールです。地域づくりの現場で見えてきたニーズを分析し、協働体として取り組むよりも市民センター事業として実施した方が成果を上げそうなものは、市民センター事業で取り組んだ方が良い。協働体事業とのバランスのとり方が事業立案のポイントです。
市民センターにとって重要なのは、事業立案の前に地域の課題を抽出するというプロセスです。市民センターにいる職員は、その意識を持ち、地域住民の声に耳を傾け、見えないニーズを探る努力、相談に来る住民との対話を大事にし、サービスの提供にあたることが必要です。
最近は、高齢化に伴い市民センターに来ることが難しい住民も増えてきています。市民センターに人を集めるだけでなく、市民センターが地域に出向くなど、状況の変化に合わせた動きが求められるでしょう。
例えば「少子高齢化」問題。総人口や高齢化率などの単純な数値だけを見ると、焦りだけが生じてしまいがちですが、問題をきちんと分析し、それぞれに応じた対策や対応をしていくことが大切です。少子化と高齢化は関連する部分ももちろんありますが、背景が異なります。もちろん課題や対応策も異なります。少子高齢化問題のみならず、地域の中の「問題」「課題」は、ひとくくりにせず、分解して考えてみるようにしましょう。