毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第13話(idea 2020年4月号掲載)
「地域づくり」は、「生活の基盤となる地域の取り組みを向上させること」と捉えており、「地域おこし」とは分けて考えています(第1話、第3話参照)。「地域づくり」の代表事例として「自治会活動」がありますが、自治会活動は長年の取り組みの積み上げによって成り立っており、見直す機会を失ったまま継続している傾向があるため、改めて自治会活動や地域の課題を話し合ってみましょうという動きが、ここ最近多く見受けられます。課題を列記してみると、どの地域でも共通しているのが、役のなり手不足や行事のマンネリ化、そして最近では、高齢化によって難しくなる生活の諸問題に関することが目立ちます。
自治会活動は、生活の基盤を整えるための地域づくり活動であり、行事は「親睦活動」の一環として行われてきました。住んでいる人がつながるために親睦活動を行い、親睦活動を通して知り合った住民たちが、ゴミ出しのルール、高齢者や子どもをはじめ隣近所のことを気にしてきた、という流れです。しかし、いまの自治会活動は、これまでの積み上げで成り立っているので、「やらねば」という継承意識が先立ち、「いま」の課題感には、ちょっと距離を置いている状態。気づいてはいるけれど、どう手をつけたら良いか分からずに距離を置いてしまう、ということも。でも、もう見て見ぬふりができない状況になりつつあるんです。こうした課題を取り上げると「それは福祉でしょ」と言われることもありますが、福祉課題は自治会が手を付けなくて良いのでしょうか?
「福祉」というと、高齢者や障がい者の支援をイメージしがちですが、福祉が目指す姿は、実は違うんです。
社会福祉法第4条の地域福祉の推進には、こう書かれています。
「地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるように、地域福祉の推進に努めなければならない。」
社会福祉法が推進したいのは、地域住民が日常生活を営み、社会、経済、文化などあらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるようにする取り組みです。介護や介助、見守りをしましょうとは語っておらず、そうした支えあいも含めた「日常生活の充実を求める取り組み」が「地域福祉活動」なのです。
ふくしとは、「ふ」だんの「く」らしの「し」あわせであり、すなわち地域づくり活動を指すのです。
福祉という言葉が出てくると、その推進母体として社会福祉協議会をイメージしがちですが、上述のように、実は、福祉=地域づくり全般を意味するものなので、社会福祉協議会も地域づくり活動全般を担う役割を持っているのです。とは言え、いわゆる「福祉」の支援には専門的知識を持ち合わせた人たちも必要であることから、社会福祉協議会が組織として地域づくりの中の福祉活動に特化した部分を専門的に担っているというだけで、「ふくし」の推進は、自治会はもちろん、地域全体が目指すべきものなのです。
上記表のように、地域づくりと地域福祉は取り組む内容や目的は同じなので、これは地域づくりだから…、これは福祉だから…という縦割りの考え方ではなく、広く「地域での暮らし」という土台の上で課題と向き合い、解決方法を探っていくことが必要です。もちろん取り組み内容によっては専門的な領域になることがあるので、その時は、関係する専門組織の取り組みとして線を引くことができますが、それは縦割りとは言わないでしょう。